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モノローグ
こうなることを知っていた
だから俺は《手紙》を書いた
非魔術師への怒りを鎮めてほしくて
《冥界》へ来て欲しくなくて
わざと時間をかけた
だけど、あいつがここへ来る未来は変えられない
……ならば
少しでも、非魔術師への印象が良くなればいいなと、
あいつの気を紛らわせる楽しみになれたらなと……
……残りの現世での生活を穏やかに過ごしてくれたらいいなと……
そう、思ったんだ
―フレデリック
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◇◆
ここは冥界……俺は天に召された後、目が覚めたらここにいた。
死んだと思った。いや……実際、死んだんだ。
だけど、俺はまたこうして目覚めることを知っていた。
『prédiction future』…『未来予知』が、俺の魔法だった。予知……そう、
エリックも、絶対にここへ来ることを知っていた。
止めたかった。だから、時間のかかる手紙を遺した。
少しでもあいつに現界にとどまってほしかったから。……だけど、予知した未来は変えられない。
「兄さん……」と震えたような呼ぶ声がして振り向くと、そこにエリックがいた。
悲しかった……が、ほっとしている自分もいた。
あいつは俺を見るなりその両目から大粒の涙を流しながら、俺に飛びついてわぁわぁと泣いていた。
来てしまった悲しみは大きかったけれど、
俺はまたエリックに会えて、うれしかった。
……
…