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4章 モノローグ
今朝、《マリア》様を見た気がしたの。
あの子は一体、何者なんだろう
―ハル
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◇◆ Haru ◆◇
この世の中はどうしてこんなにも混沌なのだろう。
私は非魔術師だけど、死者さんはね、透けて見えるからわかる。
こんにちは、って挨拶してみたこともあるけど、死者さんから私たちのことも見えていないみたい。
だけど、彼らは彼らのことが見えているのか疑問に感じる。
死者さんは死者さんどうし、見えているの?
そこに感じる《孤独》……一緒にいるようで、一緒にいない。
それぞれ一人一人が、一人でその世界を生きているような違和感
それから一つ、不思議に思っていることがあってね。
私は見たことがないの……魔術師さんの死者の姿
多分、全部が全部ではないかもしれないんだけど。なにか秘密があるのかな。
魔術師さんたちは、死後どこへ行くんだろう。それこそ、《天界》があるのかな。
混沌から死者を天界へ導いてくれる、《マリア》様……
私は今朝、本当のマリア様を見たような気がしたの。
通勤通学の時間帯だったから私もたまたま通りかかっただけだけど、そこにいた人はみんなそう思ったに違いない。
慈愛に満ちた光で溢れていた
遠くから見ても、はっとするような柔らかい光
あの子は、胸の前で手を組んで、祈るような姿で、そこにいた人々を圧倒していた。
私からは遠くて、あの街中であの子が何をしていたのかよくわからなかったけれど、
人々はみんなその子を「《マリア様》のようだ」と口をそろえて言っていた。
あの子は一体何者なんだろう?
本当に、マリア様なのかな。そしたらいつか、お話してみたいな。
……
……そうして私は今日もこの大聖堂で祈りを捧げる。
私は、『死者が、視える』。これは、人とはちょっと違うこと。
でも死んだ人は魂しかないんだって。だから、見えない人には見えないらしい。
この前友達のマリィちゃんに「ほら、そこにおじいちゃんが座ってるよ」って言ったら、「何言ってるの?」って言われちゃった。
マリィちゃんには見えないんだ…ううん、見えないのが当たり前
私も死んだらこうやってこの世をさまようのかな……
誰とも交わることもなく、お互いの姿が見えることもない、果てのない孤独
ただ、あのおじいちゃんは確かにベンチに「座って」いるから、物体だけは共有しているのかもしれない。
生者と死者も、互いに見えることも、交わることもないから、互いに体をすりぬけていく。
だけど、昔ほどはっきり見えなくなってきたのは確か。
昔はもっと実体のように見えたから、ぶつからないように避けて歩いた。
お母さんも心配して何度も病院へ連れて行ってくれたんだけど、特に何の異常も見当たらなかった。
私は変な子なのかもしれないって、何度も思った。
小学校に入学してからもやっぱりなじめなくて、私は1年学校をお休みしている。
行き始めたのは……《マリア》様の噂を聞いてから。もしかしたら、世界が変わるかもって、なんとなく思ったの。
" Ave Maria "
どうか、この混沌の世界を正しい姿に導いてください
願うのは、いつも同じこと。
だけど、
髪も肌も真っ白で、天使のような、魔術師さん。
……先日天に召された魔術師さんは、無事に《天界》へ行けたのかな。
やっぱり、魔術師さんは《天に召される》と、この世界のどこにも見当たらないの