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ep.1-4 ◇ A la chapelle 《礼拝堂にて》

à la chapelle

- 礼拝堂にて -


◇◆Noah◆◇


礼拝堂についてもずっとざわざわしていた。

「今朝のニュースのことかな」

「きっとゼノ様のことだよ!」

「ゼノ様ってほんとにいるのかよー」

「お前なーそんなこと言ったらいけないんだぞ」

「召されるって、何したんだろうな」

「あー、みなさん、静粛に。」


先生の言葉で静かになる礼拝堂。



「みなさん、今朝のニュースは見ましたか。えー……単刀直入に話しますと、本校生徒のご兄弟が、昨夜、天に召されました。」


礼拝堂がどよめく。


「みなさんご存知の通り、魔法使用に際しては色々な約束があります。

【一度に膨大な魔力を使ってはいけない】

【人道に反した使い方をしてはいけない】

【非魔術師に対し魔法を使ってはいけない】

など、様々ありますね。私たちの魔法使用用途は、魔法を司る神であるゼノ様がいつも監視しています。我々の魔力は、ゼノ様が与えてくださったものだからです。」



聞きなれた言葉。ことある事に、先生たちはこの話をする。



「もしそれを破ったらゼノ様の怒りに触れ、魔法剥奪と共に天に召されます。今回はえー……騒動に巻き込まれた魔術師の一人が、非魔術師に対して魔法を使用したことが原因だったそうです。

どんな理由であれゼノ様のルールは絶対です。魔法の使用目的の善悪にもよらないのでみなさん、くれぐれも注意するように。以上。では、祈りを捧げましょう。」



礼拝堂内がまたしてもざわざわする。それもそうだ。

《天に召される》ことは俺たち魔術師が一番畏れていることだ。



この世は混沌に満ちているが、それは厳密には全部が全部、そうじゃない。

俺たち魔術師にとって《天に召される》ことは即ち《死》だ。この世界から完全に消えてしまう。


だけど《天に召される》ことが、どこか別の世界に行ってしまうのか、消失してすべてが終わりなのか、本当のところは解らない。もしかしたら、ゼノ様の元へ連れ去られるのかも……と話す人もいるが、そもそもゼノ様がどこにいるかも、誰も知らない。


でも非魔術師たちみたいに、死後の魂がその辺をさまよっていることは絶対にない。……らしい。それも曖昧だ。

だけどこの間ハルが不思議なことを言ってたな……『死者の見え方には不思議な規則みたいなものがある』と。


……それが全部じゃないかも、とは言っていたけど。




だから俺たちは死後の世界に《天界》があることを信じている。そこには天使がいて、楽園のような世界だと教わる。ゼノ様は、もしかしたらそこにいるのかな。



だけど……本校生徒の兄弟って、もしかしたらエリックのお兄さんが……?

いや……今日はたまたま休みなのかもしれない。別の人の兄弟かもしれない。



こうして結局何もわからないまま、俺たちは今日もまた《マリア様》に祈りを捧げる。



天に召された人の魂も、俺たちの魂も、きちんと天界に導いてください。



俺はちらりとロンを見た。

小柄で透き通りそうな程真っ白なあいつは、いつも通り静かに祈りを捧げていた。

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