『パーン!』
とある銃声で心から驚く。
私はどぎまぎしながら目を開けて、音の発信源を探した。
その先には緑の軍服を着こなした
「おう、
大瀬君は
『パーン!』
その
大瀬君に飛び散る血まみれの涙。
決してトマトを栽培していて、その場でトマトを投げたりする遊びではない。
もっとリアルな死の盗掘。
「なっ、何なの?」
その状況に出くわした私は腰が抜けて動けなかった。
ふと、手元が光り、一つのピストルが姿を現す。
そして、身につけた覚えがない四角い画面の腕時計から、サンタのような格好のおじさんの立ち姿のホロ映像が飛び出してきた。
『ようこそ、英子ちゃん。例の
「また、あなたですか。だとすれば、ここは私の夢の中ですか……で、今回は何の趣向ですか?」
『またとは無礼じゃな。ここはワシが開発した大ヒットサバイバルゲーム『バイ○ハザード』からのゲームからじゃよ。洋館に閉じ込められた陸軍男女がゾンビになった敵を倒しながら進んでいく物語。気に入ってくれたかな?』
「そういう問題でもまた、前回みたいに受け入れないといけないんでしょ……」
『その通りじゃ。ジャンジャン倒すんじゃ。ワシの研究成果のためにも頼んだぞ』
そうまくし立てながら、役目を終えた時計端末が元に戻る。
ひたすら一方的に話を押し通す。
あのおじさんにも困ったものだ。
「英子ちゃん、話は終わったかい?」
大瀬君はゾンビに発砲しながら、私の方に後ずさる。
増える
私たちは人間だった者から追い詰められていた。
「くそ、囲まれたか……」
「大瀬君、この私の銃を使って下さい!」
「だけどそれを使ったら英子が丸腰になるんじゃないのか?」
「私なら構わないから。どうせこんな
「ありがとう、恩にきるよ」
大瀬君が私からピストルを奪い、目の前の敵に玉を放とうとする。
「んっ、これは!」
「どうしたのですか?」
「これは弾丸無制限のコルト・パイソンじゃないか。どこで手に入れたんだい?」
「えっ、そうなのですか?
いきなり私の手元に出現したのですが?」
「へへっ、そりゃありがたいぜ」
大瀬君が銃弾を鳴らす度にゾンビの頭が一撃で吹き飛んでいく。
「こりゃ、まさに無敵だな。英子、ゆっくり茶菓子でも食べて、くつろいでいていいぜ」
すると、私の目の前にちゃぶ台がどことなく登場したよ。
しかもテーブルには大量の茶菓子ではなく、焼き肉の固まり。
あのねえ、目の前であんな
『だったらこれならどうじゃ~!』
そこへ、あの例のおじさんの声と一緒になって、大量の肉の固まりが音もなく現れる。
「こ、これは、高そうなステーキ……」
『そうじゃ、最高級の松阪牛じゃよ♪』
どうしよう、こんな霜降り牛とか今まで食べたことない。
それに食欲をそそる絶妙な肉加減と、このニンニクの香り。
気のせいか、お腹の虫も鳴っている。
これは食べないと後悔するね。
いただきま~す♪
『ドカーン!!』
あの、もしもし。
お食事中に、体長二メートルほどの全裸にふんどしを締めた変態巨人が壁を崩壊させて出現したのですが……。
『ウオオオオ!』
「ヤバい。そっちにタ○ランドが行ったぞ。上手く迎撃してくれ」
そんなこと言われても、私はナイフとフォークしか持ってないよ!
やがて、あたふたとした私の横に座った巨人がステーキを前にして、正座をして
「……オジョウサン、コレハ
えっ、カタコトだけど、日本語喋ったよ?
「ワタシは美食研究課に所属していますが、このような肉は久しぶりデス」
「あの、あなたは一体?」
「アア、申し遅れました。ワタクシ、研究課以外に、このバイ○ハザードのゲームのトリを務めます、実行委員長のタ○ランドという者デス」
そのタ○ランドさんが、背中のバッグから名刺を取り出す。
どうやら私に危害を加えるつもりはないらしい。
「実は最近、忙しくてカップ麺しか食べてなくて、ここの仲間のゾンビたちに聞いてみたら、お肉食べ放題をやっていると聞いたものデシテ」
「じゃあ、タ○ランドさんも一緒に食べましょうか」
「ゴチになりマス♪」
こうして、私はダンディーな男性と食事を
これってデートだよね♪
「──おい、二人ともこっちは無視かよ?」
「そう言う大瀬君の席も開けてますよ。いかがですか?」
「いや、それ以前に俺、ゾンビたちに囲まれたんだが……」
「大丈夫です。大瀬君は食べられても強い子ですから♪」
「俺はそこ行け、アン○ンマンじゃねえぞ!」
大瀬君がその場で拳銃を震わせながら、ゾンビたちに殺られるのだった。
ああ、大瀬君。
私たちを守ったゆえのあなたの犠牲は無駄にしない。
ありがとう、大瀬○ンマン。
第12話、おしまい。