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第3話 梅雨空のため息

「はあ。雨、中々あがりませんね。毎日うんざりします……」

「そうだよね。そろそろ梅雨つゆ明けしてもおかしくないのに」


 今年もこの梅雨の季節がやって来たのはいいけど、例年より明けるのは遅くなるみたい。


 はあ……。

 学生のバイトのお金じゃ、乾燥機とか高くて買えないし、車がないからコインランドリーに大量の洗濯物も運べない。


 これじゃあ、洗濯物が乾かないよね……。


「こんなに降ったらさ、外であそべないじゃん。スイッジとかでボケモンとかも出来ないじゃん」

「……あの、美伊南びいなちゃん。

恩天堂おんてんどうスイッジは携帯用ゲームだから、家でも遊べるよね?」

「何だ、英子えいこ。分かってないじゃん。エアコンの効いた図書館とか最高じゃん♪」


 あっ、なるほど。

 家での電気代を節約のための作戦か。


「──でも、その図書館は現在改装中……」


 そこへ、スマホをポチポチと打ちながら、ギラリと眼鏡を光らせた蛭矢えびや君がやって来た。


 そう、今この街の図書館は広々とした場所へと移動して、新しい場所で工事をしているの。


 完成は間近で来月には公開するとか。


「だが、僕たちに愛の障害はない。豪雨で家が流されそうになっても、僕はマ○ちゃんの味方さ!」


 いや、そんな時はゲームの女性にときめくより、素直に避難してほしいよ。


 しかし、蛭矢君がスマホゲームの美少女キャラを見せるまで、マ○ちゃんってあのカップ焼きそばの名前かと思ったよ。


 食べ過ぎると太っちゃうけど、あれは美味しいよね。


「ふっ、まさに溺れる者はギャルゲーを掴む!」

「だから何の格言なのですか? 溺れるでしょ?」

「はん、英子ちゃん知らねえのか? 中学の古文の授業で習っただろ?」


 いや、それは明らかに慣用句で国語の内容だよね。

『溺れる者はわらを掴む』が正解だよね?


「ふふん、蛭矢、話が分かるやん♪」


 一方で美伊南ちゃんは、目をキラキラとさせた尊敬のまなざしで、蛭矢君を見ていたけどね。


 まあ、いいや。

 ツッコミもキリがないから、二人に話を合わせよう。


「それでは早速、大量のてるてる坊主を逆さに吊るさないといけないですね」

「ふっ。甘いな。英子ちゃん。時代は世界に通用するグローバルな対応だよ」


「よっしゃ。今年も殴り込みにいくんやろ♪」


 ……えっ、どこに喧嘩を売りにいくのかな。


 もしかしてテレビ局?

 気象予報士さんのピンチだよ?


「それは違うぜ。英子ちゃん。僕は自分のパソコンから気象衛星をハッキングするのさ」

「いえーい。宇宙テロばんざーい♪」


 神様、どうか、この悪ふざけな二人を止めてください……。


「……万歳ばんざいなのはお前らの頭の中だけだ。野球部の部室、しっかりとカビの掃除しとけよ」

「へいへい。分かりやしたよ、旦那だんな


 本当、しっかりしてるのは大瀬おおせ君だけだよ。


 偶然、通りかかってくれて助かったよ。


「カビのボケモンとかが、わんさかと生まれたらヤバイからな。やつらは素早いからカビキラーが何本あっても足りないぜ」


 前言撤回。

 私の周りにはオタクしかいないのか?


 ああ、類は友を呼ぶのかな……。


 第3話、おしまい。







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