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第1話 『鍵』を握る若き海軍将校

ー 1941年 11月20日 広島県・呉 ー


南雲が率いる第一航空艦隊が択捉島・単冠湾を11月26日に出港する少し前の11月20日深夜、広島の呉では一人の海軍将校が極秘裏に『ある人物』を訪ねようとしていた。


『ある人物』に会いに来ていたのは、連合艦隊司令長官を務める山本五十六(やまもと いそろく)大将である。

山本は、今回のハワイ真珠湾攻撃計画について幾つか確認したい為に来ていた。

その『ある人物』が山本達が当初計画していたハワイ真珠湾奇襲攻撃計画の見直しをした人物であり、今作戦で南雲と同様に艦隊を率いる指揮官の一人として参戦する人物だった。


山本は南雲とは違い、彼の指摘と図上演習を見て驚嘆したのである。

(彼の作戦ならば、俺達の当初考えていた穴だらけの計画を補える作戦だし、充分なお釣りも来るな・・・。)


目的地に到着した山本が入っていったのは呉にある呉鎮守府。

事前に人払いがされていたのか、誰とも接触することなく山本は指定された部屋に入った。

山本は、部屋に入った直後に、窓際に立っている人物に声を掛けた。

「出航まで後数時間だが、幾つか確認したい為に来た。無理を言って済まないな。」


山本の声で振り向いて、山本に敬礼しながら『ある人物』は答えた。

「いえ、親父さんならば、訪ねて来ると思っていました。」

山本の渾名でもある『親父さん』と言った人物は、まだ年若く山本や南雲みたいな初老ではなくまるで『祖父と孫』を感じさせる程の年齢差があった。


しかし、山本は嫌な顔せずに目の前にいる人物に言った。

「俺が直前に聞きたいからとは言え、ここまで会談の手回しが良いな。流石、『若大将』と呼ばれるだけの人物だな。」


『若大将』と言われた人物は、苦笑いしながらも答えた。

「止して下さい。『若大将』なんて20代前半で中将に、しかも一つの艦隊を任された事に対する嫉妬や妬みをする連中から付けられた渾名ですから・・・。」


すると、山本は姿勢を正して言った。

「それじゃあ、こう言えば良いか?大日本帝国海軍 第二航空艦隊(機動部隊)司令長官・遠藤泰雄(えんどう やすお)中将殿。」


『若大将』と呼ばれ、海軍のみならず陸軍・政財界・皇族からも一目置かれている若き海軍将校である遠藤は、半ば諦めた形で答えた。

「はぁ・・・、親父さんの言う通り『若大将』で良いですよ。」

そう言いながら遠藤は、部屋の中央にあるソファーに座るように山本を促した。


山本がソファーに座ったので、遠藤も反対側のソファーに座りながら山本に聞いた。

「親父さんが気になる疑問や質問には可能な限りお答えしますよ。」


そして、呉鎮守府の一室での会談を終えた山本は数時間後には、呉の柱島から密かに出航して行く一部の第二航空艦隊を連合艦隊司令部のスタッフ達と共に見送った。

「最初の計画第一段階を成功させる事と意味は、良くも悪くも全世界の海軍関係者達を卒倒させるな・・・。」

山本の小声での呟きを側で辛うじて聞いたのは、連合艦隊参謀長宇垣纏(うがき まとめ)少将だけだった・・・。



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今回の戦いの『鍵』を握る遠藤中将。


そんな遠藤から、山本が聞かされた彼の『考え』とは・・・。

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