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第30章: 光の試練

光の輪をくぐった瞬間、全員の視界が一気に白に染まった。耳を塞ぐような静寂と、身体を包み込む柔らかな光。それは一瞬の安心感を与えると同時に、次に何が起こるのかという不安を増幅させた。

やがて、光が薄れていくと、彼らは広大な空間に立っていることに気づいた。その場所は地面が鏡のように光を反射し、上も下も同じ景色が広がっている。遠くには、宙に浮かぶように配置された6つの円形の台座が見えた。

「ここは……」

ちはるが呟く。その声が反響して、空間全体に響き渡る。

「試練の場だろうな」

千景が冷静に答えるが、その目には鋭い警戒心が宿っていた。

「台座の数……私たち全員分ね」

綺羅羅が静かに言う。その言葉に全員が台座へと視線を向けた。

「全員があそこに立つのか?」

杉太が疑問を口にするが、その声に答えるものはいなかった。ただ空間全体が、無言で彼らを促しているようだった。

「行こう。待つ意味はない」

千景が言い放つと、全員が覚悟を決めたように頷き、それぞれの台座へと足を進めた。


台座に足を乗せた瞬間、周囲の光景が変わった。鏡のようだった地面が消え、台座以外の空間が深い闇に包まれる。その闇の中から、低く響く声が聞こえてきた。

「お前たちの絆が本物かどうか、これから試す」

その声はまるで空間そのものが語りかけているようで、彼らを包み込む。ちはるは思わず手を握りしめた。

「また絆……今さら何を試すの?」

彼女が震える声で問いかけるが、声の主は答えない。ただ次の瞬間、闇の中から巨大な光の球体が現れた。それはゆっくりと形を変え、人の姿を模していく。

「これは……」

聖光が目を細めた。その光の人影は彼らと同じ姿をしており、しかしその目には冷たい光が宿っていた。

「影か……また自分と向き合わせるつもりか」

千景が低く呟く。その声にはこれまでの試練を思い起こしたような疲労感が滲んでいた。


光の影が口を開いた。

「お前たちがそれぞれ選んだ道、その正しさを示してみせろ」

影たちはそれぞれの台座に向かい、ちはるたちの目の前に立った。ちはるの前に現れた影は、彼女自身の姿だった。しかし、その表情は冷たく、彼女自身を嘲笑うかのような歪んだ笑みを浮かべていた。

「本当に、あの仲間たちを信じているの?」

影の言葉が、ちはるの心を深くえぐる。

「信じてる! みんながいたから、ここまで来られたんだもの!」

ちはるが力強く答えるが、その声はどこか震えていた。

「本当に? 自分が弱いままだから、仲間に頼るしかないだけじゃないの?」

影の冷たい言葉に、ちはるは息を詰めた。彼女の心の奥に潜む不安が、影によって引きずり出されていく。


他の台座でも、それぞれの影が語りかけていた。

「お前はいつも軽口ばかりで、真剣に何かに向き合ったことがない」

杉太の影が冷たく言い放つ。その言葉に、彼は軽く笑った。

「真剣に向き合ってるよ。ただ、それを見せるのが下手なだけだ」

彼の声には揺るぎない強さがあった。

「お前は一人で何でも解決しようとしすぎだ。そのせいで誰かを傷つけることもある」

千景の影が低く言う。それに彼は短く息を吐き、冷静に答えた。

「誰かを守るために背負うものがある。それが俺の選択だ」


影たちは次々に挑発を続けるが、彼らはそれぞれの言葉で影を否定していった。そして、全員が自分の影を受け入れ、それを乗り越えた瞬間、空間全体が眩しい光に包まれた。

「お前たちの絆が本物であることを示した。この試練を乗り越えた先に、答えが待っている」

低い声が響き、光の中から一つの扉が現れた。その扉には無数の光が宿り、眩しい輝きを放っている。

「これが……最後の扉だ」

千景が静かに言った。その言葉に、全員が頷き、互いに視線を交わした。

「行こう、みんなで」

ちはるの言葉に全員が力強く頷き、最後の扉に向かって歩みを進めた。

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