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死と彼を思う瀬戸際で
柊准
文芸・その他ノンジャンル
2024年12月28日
公開日
6.8万字
連載中
虐められていた少女——一之宮江美。彼女が踏切で自殺しようとした際に、とある少年に止められる。
この物語は、絶望から希望へと変わる、アウトロー群像劇。

プロローグ

 プロローグ 絶望の誕生



 聖書の創成期にはこう記されていた。

 神は自分にかたどって人を創造された、

 私――香は、聖書を読みながら、どうして神が人を創造するに至ったのかを想像した。聖書には地を這う動物全てを、支配させる存在を作りたかったとあるが、果たしてそのような存在が必要だったのか。だが、いくら考えても、馬鹿な私にはわからない。

 ページをめくる。蛇が女をたぶらかし、禁忌の知恵の実を食べるところ。その後、知恵が産まれた女と男は、自身が裸であることを恥じた。

 そして、神が知恵の実を食べたことを見破り、女と男は楽園から追放。蛇には忌み嫌われる存在へと変化させた。

 女はイブ、男はアダムとして地上での生活が始まった。これが始祖の人類の始まり。

 まだ何百ページもある聖書を閉じて、また考える。

 人はいつから、感情を感じるようになったのだろう。

 良い感情も、悪い感情も。アダムとイブが楽園で暮らしていた時には、もしかしたらそのような感覚はなかったかもしれない。だとすれば、感情が産まれたのはきっと知恵の実を食べた時か。

 なら、知恵が身に付いたことで、人が“絶望”を感じるようになった。それが原因で人が死を時に願い、自死を行動する人が初世紀から右肩上がりに増えていった。それは悲観する事実なのだろう。

 もしも人に知恵がなかったら、きっと天国の生活を過ごしていたと思う。

 知恵の代償としては、重すぎる話だった。



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