師匠が去って平和になった。
と、いうことはなく。
むしろ悪化したような気さえした。
「ボクも噂には聞いていたよ! 『近衛騎士団の女殺し』! アークくんのことだろうとは思っていたけど、まさかここまでとは!」
「なんか分からんがひでぇ言いぐさだな?」
その『女殺し』ってのはどこまで広がっているんだよ? そもそも俺は女を殺したことはない。
「アークくん! この国では一夫一妻が基本! 手当たり次第に女性を口説くのは感心しないな! そりゃあ高位貴族の中には何人も妾を囲い込む人がいるけど、どうかと思うなボクは!」
「勘違いしたまま暴走するのもどうかと思うぞ?」
そもそも俺がいつ女を口説いたよ? と、俺としては真っ当なツッコミをしているのだが。
「しかしシャルロット様」
メイスが小さく手を上げた。
「ここはいずれ独立国となるのですから、以前の国の常識を適応する必要はないのでは?」
なんか真顔でとんでもないことを言い出したな? え? いつ独立国を作るって話になったの? 今までの話の流れだと俺が国王になるのか?
なんというか、メイスって見た目は真面目キャラなのに意外とボケボケだよな。
「ん」
ミラ、その頷きは「そうだねメイスはボケキャラだね」という意味なのか、あるいは「お兄ちゃんは女たらしだよね」という意味なのか……。
なんでこう、俺の周りの女性は一筋縄でいかない人ばかりなのか。俺が嘆いているとシャルロットが衝撃を受けていた。まるで雷が落ちたかのように。
「そ、そうか! アークくんが国王になるのなら、ボクたちを全て手籠めにするハーレムルートという可能性も!?」
「……なんでだよ」
思わず。シャルロットの脳天に空手チョップしてしまう俺だった。いや女性に手を上げる趣味はないのだが、そろそろ許されないか?
もちろん、軽く、軽くだ。じゃれ合いのツッコミ程度の威力。だというのにシャルロットは大げさに「ぬぉおおぉおおぉおお!?」と地面を転がっていた。おもしれー女。
「アーク様。もう少し手加減していただけると……いえさっきのはシャルロット様が悪いですけど」
「え? めっちゃ手加減したぞ?」
「いえ、アーク様はドラゴンの血を受けて色々と強化されているのですから……」
「あ」
なんというか、すまんシャルロット。
いやでも、それを言ったらシャルロットもドラゴンの血で強化されているんだから、やはりシャルロットが大げさに騒いでいるだけでは?
シャルロットは相変わらずゴロゴロしているが、まぁ元気そうだから大丈夫だな。
「……そろそろ寝るか」
師匠とバトルしたおかげでヘトヘトなのだこっちは。
「――なるほど! つまりはイベント発生だね!」
地面を転がっていたシャルロットが復活した。やはり大げさに騒いでいただけらしい。
イベントねぇ?
碌でもないことの予感しかしないが、一応聞いてやるか。
「いったいどんなイベントだよ?」
「それはもう! 一つ屋根の下で男女が眠るとなれば色々とイベントが起きるものじゃないか! 女子の着替えを覗いちゃったり! 夜中寝ぼけた女子が布団に潜り込んできたり!」
「頭の中ピンク色というか……昭和じゃね?」
「ぐっはっっっっっっ!?」
転生者にしか理解できない突っ込みを受け、シャルロットは地面に両膝を突いたのだった。おもしれー女。