ちっくしょう。なんで俺が代表なんだ……。
しかし、前世で民主主義が染みこんでいる俺、中々抵抗はできなかったりする。ここでワガママを言って空気を悪くするのもなぁ……。
「……いいだろう。俺の好きにやらせてもらう!」
「はいはい」
シャルロットが「どうせこの善人じゃあ無体なことはできないから安心だね」みたいな顔をする。まぁそうだけどよぉ……。
「とにかく、今日はもう暗くなってきたし、寝床を準備しようじゃないか」
「ふっふっふっ! そういうことなら任せてくれたまえ!」
ドヤ顔をしたシャルロットが
丸められた布?
いや、テントか。追放を知っていたからちゃんと準備していたらしい。数も俺たちが個別に使えるくらいある。
しかし、このテント、ターフテントだよな? 二本の木に縛り付けて使うやつ。――つまり、ポール(支柱)は付いていない。
「ポールは?」
「へ?」
「いやだから、ポールは? 支柱って言った方が分かり易いか?」
「……えー?」
まっさかーという顔をしながら丸められたテントを開いていくシャルロット。……ポールなし。そして下に敷くシート(グランドシート)もなし。あれがないと地面からの浸水や湿気で酷いことになるんだよな。
騎士が使うテントでも、下に敷くシートくらいは付いているものなんだが……。
「……安物買いの銭失い!」
ぬぁああ! っと、地面に両手を突くシャルロットだった。
「安いと思った! 他に比べてずいぶんと安いと思った! でもまさか支柱がないだなんて!」
たしか、前世でのキャンプ知識があるみたいなことを言っていたから気づきそうなものなんだが……逆に、ターフテントはターフとして売られているものな。前世ならよほどのことがない限りテントにポールが付いてきただろうし、間違えても仕方ないか。
ここは慰めておくべきだな、うん。
「いやいや、助かるぜシャルロット。風雨を防げるだけで疲れが全然違うからな。それに、自分のものだけじゃなく他の人のテントまで準備してくれるとは優しいじゃないか」
「そ、そうかな?」
「そうそう。それに支柱なんてその辺から木の棒を拾ってくればいいんだからな!」
「……そうだよね! いやぁ、さすがボクって感じかな!」
なんかもう復活していた。チョロい。
さて、となると支柱になりそうな木探しか。シルシュが盛大に吹き飛ばしたのでこの辺りに木はないし、もちろん落ちている枝はない。となると、森が残っているところまで歩いて行って丁度いい枝を探すことになるのか……。
「……それですが」
小さく手を上げたのは煌めく眼鏡っ娘・メイス。はいどうぞ。
「土の魔法で支柱を作ってしまうか、あるいは四方を壁で囲んでしまうという手もあるかもしれません」
「ほぉ、なるほど」
さっき温泉の周りを土の壁で囲んで覗き見できないようしていたものな。アレみたいな感じか?
「はい。土魔法では天井部分を作るのは難しいですが、天井はテントで覆ってしまえばいいですし」
四角く作った壁に、テントを被せる感じか。そっちの方が熟睡できるかもな。広さも高さも確保できそうだし。
「ん」
ミラが挙手をして、軽く頷いたシャルロットとメイス、エリザベス嬢が近づいていく。またミラに魔力を分け与えるのかな?
俺は魔法に詳しくないから見守るかーっと思っていると、
「――いやぁ、いい汗掻いた!」
『もう一度風呂に入らねばな!』
戦いを終えたらしい師匠とシルシュが近づいて来た。なお二人が戦ったあとの地面は平らなところがないくらいになっている。
と、師匠がミラの回りに集まる女性陣に気づいた。
「お? なんだなんだ新しい遊びか?」
『遊びなら我も混ぜてもらおうか』
いや二人はさっきまで存分に遊んでいたじゃないか――いやあの破壊跡を見て『遊び』扱いは無理があるか……いやでも二人にとっては遊びみたいなものなのか……?
俺がそんなことを考えているうちに、ラックが詳細を説明してしまった。かくかくしかじか。余計なことを。
「ほぅ、ならば私も手伝おう。一泊させてもらうのだからな」
『うむ、ならば我も手伝おう』
よっしゃあとばかりにミラへと近づいていく師匠とシルシュ。いやいや待てって。もうミラは土魔法っぽい呪文を唱えているんだから――
「うえっ」
師匠とシルシュがミラに触れた途端、ミラの顔が青くなった。
直後。
ごごご……と地面が揺れ、波打ち、
「なんか知らねぇけどヤバいな!?」
俺は即座に
「アークくんはミラ君に甘すぎる!」
「仕方ないのは分かりますけど!」
自分自身に