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第17話 転移


 ふてくされた(?)ミラの肩に手を乗せる俺。こういうときはとにかく下手したてに出て、褒めちぎれば何とかなる! 経験的に!


「ミラは俺にとっての奥の手だからな!」


「奥の手?」


「おうよ! ミラは凄い魔術師なんだろ!?」


「うん。『銀髪持ち』だから」


「やっぱりな! その銀髪! 膨大な魔力! 初めて見たときから只者じゃ無いと思っていたんだ! いざというときは期待しているぜ!」


「…………。……ん、分かった」


 ちょっと頬を染めながら、満足そうに頷いてくれるミラだった。何とか機嫌を直してくれたみたいだ。良かった良かった。


 と、俺がホッとしていると、


「……アーク君、ああして色んな女性にいい顔をしているんだろうねぇ」


「そういえば、『悪人顔の近衛騎士は女殺しだから気をつけろ』という噂がありましたが、あれはもしかしてアーク様のこと……?」


 ちょっとシャルロットにメイス、小声でとんでもないことを呟くのはやめてもらえるか? というか俺を悪人顔と思っていたのかメイスよ……。


 いやまぁ自分でも認めるしかない悪人顔なんだけどな? 初対面の女子からは怖がられるんだけどな? 改めて言われるとそこそこ傷つく俺だった。


 まぁいいや。

 まずは庭にある井戸へと移動してメイスに『鑑定』してもらう。


「……たしかに汚染されていますね。ここでは原因までは分かりませんが……どうやら水源である湖が汚染されているみたいですね」


 メイスが北の方に視線をやる。ここからは何も見えないが、たぶん湖があるのだろう。


 てっきり地下水をくみ上げていると思っていたんだが、湖から地下水道を引いているのだろうか? いやさすがにそれでは大規模すぎるから、ただ単に地下空間に湖の水が流れ込んでいるだけか?


「じゃあ村長あたりに湖の場所を聞いて、行ってみるか」


 原因が分かれば原因を取り除けばいいし。もし分からなくても、井戸で浄化ライニをするよりは湖で浄化ライニをした方が効果は持続する……はず。


 よしそれじゃあ村長を呼んでくるかと踵を返したところ、また服の裾を掴まれた。


「お? ミラ、どうしたよ?」


「場所、分かった」


「おお? そうなのか? ……あぁ、探知魔法ってヤツか? 生き物とかならともかく、湖まで分かるなんて凄いじゃないか!」


「ん。私、凄い魔法使い。頼ってくれていい」


 満足げに頷いたミラが右手で俺の左手を握った。そして空いた左手で、シャルロットの右手を握る。


 なんだかよく分からないが、シャルロット、メイス、エリザベス嬢、ラック、そして俺という順番で、円を描くように手を繋いでいく。お? なんだなんだお遊びか?


 繋ぎ合った手によって自然と丸い輪となったところで――ミラが、呪文を詠唱し始めた。


「――我が行く道に迷いなし。我が征く道に憂いなし。地平の果てに夢を見て、今ここに奇跡の御業を再現せん」


 途端に顔を真っ青にするシャルロット。


「それは、集団転移魔法・・・・・・――っ!?」


「――虎よ、虎よディ・スティーナ千里を駆け、千里を帰れメインジ・ジェア



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