襲いかかってきた男を縛り上げていると、他の村人たちが集まってきたので事情を説明。すると、杖を突いた老人がいきなり両膝を突き、地面に頭を叩きつけた。
「ま、まことに申し訳ありません! まさか騎士様とお貴族様ご一行に襲いかかるとは!」
このご老人、なんとこの村の村長であるらしい。
異世界であっても人間が最大級の謝罪をするときは土下座に似たような姿勢となるらしいな。
そんな村長に従うように、集まってきた村人たちも次々に土下座してきた。まぁお貴族様の不興を買えば寒村一つくらい滅ぼされても不思議じゃないから気持ちは分かるんだが……。
(おい、どうするよ?)
小声で相談する俺。
(襲われたアーク君が気にしていないなら、このまま許せばいいんじゃないかい?)
と、シャルロット。意外とまともだ。
(そうですね。今なら村で一番いい宿泊場所を貸してくれそうですし)
と、メイス。意外と腹が黒いな?
(……眠い)
と、ミラ。眠いならしょうがないな。さっさと話を纏めてしまおう。
ちなみにエリザベス嬢とラックは「ラック様、怖いですわ……」「大丈夫、私が守ります」「ラック様……」という寸劇をしているので、代表して俺が対応することになる。
「ごほんっ! 我々は今、魔の森への遊覧をするために馬車で向かっている最中だ!」
わざわざ『追放された令嬢を捨てに行く最中だ』なぁんて説明する必要はないので、テキトーに理由付けする。
俺の言葉に村長が顔を上げた。
「おぉ、そうでしたか。さすがはお貴族様ですね」
わざわざ魔の森でピクニックとは酔狂な。と、顔に書いてある村長だった。
「騎士様。今夜はぜひ我が村で宿泊してくだされ。寂れた村ではありますが、一番良い建物を提供いたします」
こびるような声を出した村長は、縛られた状態で地面に転がされる男に冷たい目を向けた。
「此奴は適当に処罰しておきますので」
なんだかこの後の男に対する扱いの悪さが目に見えるようだ。
「……まぁ、まぁ。俺は気にしていないので、あまり辛く当たってやるな」
「おぉ! なんと寛容な! 感謝いたします騎士様! ――ほれ! おぬしももう一度謝らんか!」
転がされた男の頭をグリグリと地面に押しつける村長だった。まぁ、まぁ、その辺で。
「……襲われたというのに、甘いねぇ」
「ですが、アーク様らしいのかもしれません」
「ん」
俺の背後でそんなことを呟くシャルロット・メイス・ミラだった。