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閑話27 最強傭兵 裕二③

 裕二とパルルはDブロック基地の中を進みながら、ボスのサロメのいる部屋へと向かっていた。道中戦闘員達が襲う事態も多く出たが、二人は難なく撃破して先に進んでいたのだ。


「これで戦闘員は全部か……ボスは確かサロメだったな」

「うん。彼女はブロック基地の中でも手強い一人だからね……ここから先は油断ならないから気を付けて!」

「言われなくてもそのつもりだ。それよりも……目的地が見えたぞ」


 裕二が指さす方をよく見ると、そこには大きな扉が目の前に立ちはだかっているのが見えた。恐らくこの先にサロメがいるのは確定だが、彼女がいきなり攻撃を喰らわせる可能性もある。そうなると大ダメージは確定と言えるだろう。


「この先にサロメがいるみたいね」

「ああ。すぐに入るぞ!」


 裕二はゆっくりと扉を開けようとしたその時、扉は自動的に開かれて中に入れる様になった。そこにはサロメが椅子に座りながら待ち構えていて、彼女の姿に裕二とパルルは真剣な表情で見つめていた。


「待ち構えていたのか」

「ええ。私はあなた達が来る事を知っていたからね……なら、私はあなた達を……殺すから!」


 サロメは着ている衣服を脱ぎだし、肩紐無しのボンテージ姿へと変化する。しかも下の衣装は黒いミニスカートなので、これ以上際どい事は無いだろう。


「なるほど。それがお前の本当の姿か。なら、俺はお前を倒してくれる!」


 裕二は素早く駆け出したと同時に、強烈なパンチを仕掛け始める。彼女が武器を持っていないとなると、格闘戦で挑もうと判断しただろう。


「掛かったわね! デビルアイ!」

「!? 危ない、裕二!」


 するとサロメがニヤリと笑ったと同時に、目から強烈な光線を放つ。それを見たパルルは急いで駆け出したと同時に、裕二の前に移動して光線を喰らってしまった。


「キャッ!」

「パルル!」


 光線を喰らったパルルが悲鳴を上げた直後、彼女の身体から煙が発せられた。この状況を見たサロメは悔しそうな表情をした後、すぐに裕二へと視線を移す。


「アンタのパートナー。アブノーマルチェンジで難を逃れたみたいだね」

「アブノーマルチェンジだと? 噂には聞いているが、まさか彼女もか……」


 サロメの説明を受けた裕二は、煙の中にいるパルルに視線を移してみる。すると煙が晴れたと同時に、パルルは大人の姿へと変化していたのだ。

 しかも服は変わっていて、眼帯ビキニとショートデニム、更に髪の長さもロングヘアになっているのだ。しかも胸も大きく、Fカップぐらいはあるだろう。


「な!? 誰だお前!? パルルなのか!?」


 パルルの新たな姿に裕二は驚きを隠せず、思わず冷や汗を流してしまった。まさかパルルが大人の姿に変化するとは想定外で、驚くのも無理はない。

 因みにパルルは状態異常のダメージを喰らうと、大人の姿に変化するアブノーマルチェンジを持っている。リカバリーされると元の姿に戻るが。


「誰ってパルルだけど? これでようやく大人の仲間入りだ! 技を出してくれてどうもありがとう」

「喜んでいる場合か! あと服を着ろ! 年頃の娘がそんな格好するな!」


 パルルは大人の姿で喜んでいるが、裕二は慌てながら彼女に服を着させようとする。年頃の娘がこんな破廉恥な格好を見るのは耐えきれず、ツッコむのも当然と言えるだろう。


「嫌! 私がこれが良いの! どうしても邪魔するなら……投げるぞゴラァァァァァ!!」

「ぎゃああああああ!!」

「ごべら!」


 パルルはいきなり怒りの表情に変化し、裕二を掴んで勢いよく投げ飛ばしてしまう。同時に彼はサロメに激突してしまい、二人揃って壁に激突してしまった。

 パルルが大人の身体になってしまった事で、パワーも付属して最強くらすへとランクアップしてしまった。こうなると八犬士やザルバッグなどの強者でなければ、あっという間にノックアウト確定だ。


「まったく……邪魔しないでよね! 折角気に入っているんだから」


 パルルはプンスカ怒りながら、手をパンパンと叩いていく。自分はこの姿が気に入っているのに、それを裕二が認めない事で不満となるのも無理はない。


「あいつ……後で覚えてろ……」 


 裕二はサロメに激突していたダメージが残っていて、投げ飛ばした本人であるパルルを心の底から恨んでいた。しかし戦闘中である事を自覚し、すぐに立ち上がってサロメからバックステップで離れる。


(この私をここまで追い詰めるとは……そうなると私も本気で挑む必要があるな……なら、状態異常は無しにして、格闘戦で挑むとしよう)


 サロメも素早く立ち上がったと同時に、格闘態勢に入りながら裕二とパルルを睨みつけていた。今の行為がハプニングであっても、自身を追い詰めた事はかなり衝撃的と言えるだろう。


「さて、仕切り直しだ。行くぞ!」 


 サロメは素早く駆け出したと同時に、正対した裕二に向かって跳び上がってきた。更に自らの両足で相手頭部を挟み込み、そのままバク宙のような形で回転したのだ。


「何だ!?」

「貴様はプロレスというのを甘く見ているな。その技を見せてやる!」 


 サロメが宣言した直後、巻き込んでいる裕二の脳天を床に叩きつける。これこそフランケンシュタイナーであり、喰らってしまえばひとたまりもないだろう。


「ぐほ……!」

「裕二!」


 脳天を床に叩きつけられた裕二は大ダメージを受けてしまい、ダウンを喫してしまう。その様子にパルルが叫んだ直後、サロメが彼女にも襲い掛かってきたのだ。


「くっ! やるしか無いわね!」


 パルルは真剣な表情をしながらサロメに立ち向かったその時、サロメは飛び上がったと同時にドロップキックを繰り出したのだ。


「喰らいなさい!」

「ぐほっ!」


 お腹にドロップキックを喰らったパルルは、その衝撃で吹っ飛ばされてしまう。しかし足を床に着けながら踏ん張り、見事耐えきる事に成功したのだ。


「やってくれるね……けど、私だって負けては居られないんだから!」

「やれる物ならやってみろ! 返り討ちにしてくれる!」


 パルルとサロメは同時に飛び出しながら、激しい肉弾戦を繰り広げ始める。ハイキック、ローキック、パンチやタックルなど激しい攻撃が飛び交い、互角の展開が続いていたのだ。何れにしてもこの戦いは我慢比べとなるので、先にスタミナが切れたら勝負は決まるだろう。


(くっ! 八犬士達もこういう敵と戦っていたけど、まさかここまで強いなんて……けど、ここでやられたら……あの頃に戻ってしまう! それだけは絶対に嫌なんだから!)


 パルルは心の中で決意を固めたと同時に、真剣な表情で前を向く。

 ここで諦めたら今までの努力が水の泡であり、絶望の日々を送る事になるだろう。そうならない為にもここで倒れず、任務を達成しようと決意しているのだ。


「諦めの悪い女だな! なら、その勇気を認めさせる為にも……これで終わらせてやるとしよう!」


 サロメはニヤリと笑ったと同時に、間合いを取りながらトドメの一撃を放とうとする。確実にパルルを殺そうとしていて、拳に強い闇のオーラを纏い始めた。


(くっ……怖くて……身体が……動かない……! もう……駄目かも……)


 パルルが冷や汗を流しながら、身体から震える恐怖を感じ取ってしまう。更にダメージも蓄積しているので、動けない状態となっているのだ。

 ここまでかと覚悟しながら思ったその時だった。



「そうはさせるか!」

「ぐはっ!」

「!?」



 なんと倒れている筈の裕二が動き出し、強烈な左ストレートでサロメを殴り飛ばしたのだ。

 サロメはそのまま勢いよく飛ばされてしまい、地面を引きずりながら倒れてしまう。その様子を見たパルルは驚きの表情をするが、すぐに裕二に視線を移す。


「裕二! あなたフランケンシュタイナーを喰らって倒れたんじゃ……」

「俺はこんなところでやられないからな。それに……パルルにとどめを刺そうとした罪はとても重い。それを奴に教えてくれる!」


 裕二は拳を打ち鳴らしながら、起き上がろうとするサロメに視線を移す。彼のその目は怒りの炎を出していて、仲間を傷つけた罪を償おうとしているのだった。

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