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閑話26 最強傭兵 裕二②

「おーい。何思い浮かべているの?」

「ん?」


 裕二が突然の声に反応すると、そこにはパルルが自身の顔を覗き込んでいるのが見えた。

 彼等はザルバッグの指令で悪鬼のDブロック討伐に向かっていて、その途中の木の下で座りながら休んでいた。その時に裕二は過去の事を思い浮かべていて、今に至るという事だ。


「いや……過去の事を思い浮かべてな……懐かしさを感じたり、嫌な思い出もあったけど」

「家族の事を考えたんだね。けど、その続きは任務の後にゆっくり話そうか」

「だな」


 パルルのアドバイスに裕二は同意したと同時に、すぐに立ち上がってズボンに付いている汚れを両手で落とす。そのまま彼等は休憩を終わりにしたと同時に、目的地へと向かい出した。


「Dブロック基地のボスだけど、石化攻撃を得意としているみたい。その攻撃をどう見切るかがカギだからね」

「石化攻撃か……確かメデューサなどのモンスターもそうだったな……」


 パルルの説明を聞いた裕二は、かつて戦っていたメデューサを思い出す。

 メデューサはモンスター娘の一種で、石化効果を持つ魔眼を発動する事が可能。それを喰らった者は石化してしまうが、零夜率いる八犬士達は状態異常を無効化する事ができるのだ。


「その様な奴に関しては、石化対策を施す必要があるな。パルル、ミラーマジックは何時でもいけるか?」

「任せて! 何時でも大丈夫だから」


 裕二の質問に対し、パルルは左目をウインクしながら答える。その直後にモンスターであるゴブリンが姿を現し、彼等に襲い掛かってきたのだ。


「ゴブリンか……問題ない!」


 裕二は懐から二丁拳銃を取り出し、次々とゴブリン達に向けて発砲する。彼等は抵抗する間もなく次々と撃たれてしまい、そのまま金貨と素材になって地面に落ちたのだ。


「私も戦わないとね。裕二ばかり負担させる理由にはいかないし!」


 パルルは両手に闇の波動弾を生成し始め、次々とゴブリンに向けて投げ飛ばす。ゴブリン達は次々と波動弾を喰らって倒れてしまい、金貨となって地面に落ちてしまったのだ。


「よし! だいたいこのぐらいかな?」


 パルルが笑顔で敵がいない事を確認したその時、大きな敵であるボスゴブリンが姿を現す。そのまま彼女を見つけたと同時に、勢いよくスピードを上げて襲い掛かってきたのだ。


「私を狙っているんだね。折角だから脱いじゃおうか」


 パルルは笑顔を見せながら、Tシャツを手に取って勢いよく脱ぎ始める。年頃の小学生がこんな事をするのは異常としか思えず、下手したら変態と感じるのも多いだろう。


「おい! 何脱いでいるんだ! お前はバカか!」


 裕二は慌てながらパルルを止めに入るが、彼女は既にTシャツを脱いでいた。彼女はデニムハーフパンツと眼帯ビキニの姿となっていて、そのまま勢いよくボスゴブリンに立ち向かっていく。


「そう言う悪い子は……お仕置きが必要だね?」


 パルルはあくどい笑みを浮かべ、笑ってない目でボスゴブリンを睨みつけていた。すると彼女の身体から闇の炎が発火され、勢いよくボスゴブリンへと襲い掛かる。


「ダークフレイムタックル!」


 闇の炎を纏った強烈なタックルが炸裂し、ボスゴブリンを弾き飛ばす。

 ボスゴブリンはそのまま勢いよく飛ばされてしまい、地面に背中を打ち付けて倒れてしまう。そのまま彼は金貨と素材になってしまい、パルルは問題なく回収する。


「じゃあ、行こうか!」

「おい! Tシャツ脱ぎ忘れているぞ! 待て!」


 パルルはそのままの服装で先に向かい、裕二は慌てながら後を追いかけ始める。この様子からすれば親子其の物に見えるが、裕二が苦労しているのがよく分かるだろう。


 ※


 裕二とパルルは悪鬼のDブロック基地前に到着し、目的の場所に視線を合わせていた。そこはいわゆる普通の基地にしか見えないが、中は仕掛けがあるので要注意だ。

 因みにパルルはTシャツを無理矢理着せられてしまい、少し不満な表情をしていた。


「不満な気持ちも分かるが、ともかく先に行くぞ。任務優先だからな」

「はーい……」


 裕二からの忠告に対し、パルルは口を3の字にしながら応える。そのまま彼等は基地の中に突入し、任務も本格的になり始めたのだ。


 ※


 基地の中に入った裕二とパルルは、警戒しながら進んでいた。この基地は敵も多くいるので、見つかったら戦わなくてはならないだろう。


「ここは……トラップが仕掛けられているかもしれないな。パルル、トラップを無効化してくれないか?」

「任せて! ノートラップ!」


 裕二はパルルに頼み、彼女は左目をウインクしながら指を鳴らす。すると周囲のトラップが無効化され、安全に進む事ができるようになった。

 ノートラップは周囲の罠を無効化してしまう技であり、どんなにレベルが高い罠でも無効化してしまう。そのランクはとても高いので、努力しなければ難しいだろう。


「ありがとう、パルル。さて、次は敵の出現を警戒しながら進むぞ」

「そうだね。念入りに進まないと」


 裕二とパルルは警戒しながら進んでいたその時、悪鬼の兵士が一斉に姿を現して襲い掛かってきた。彼等は剣や銃を構えているので、戦闘態勢は万全だ。


「悪鬼の兵士か……パルル、先に戦ってみるか?」

「OK。最初から攻めないとね! それーっ!」


 裕二はパルルに先に戦う権利を与え、彼女は笑顔で応えながら闇の波動弾を投げ飛ばす。

 悪鬼の兵士は波動弾を喰らって次々と倒れてしまい、金貨になって地面に落ちていく。


「なんて奴だ! 八犬士以外にも手強い奴がいるとは!」

「ええい! 銃を構えて発砲だ!」

「そうするしか方法はないよな! あのガキにはお仕置きしてやらないと!」


 兵士達は銃を構えながら、パルルに狙いを定めようとする。しかしそれよりも裕二が素早く動き出し、二丁拳銃を構えながら敵に狙いを定める。


「俺がいる事を忘れては困る。ブレイクショット!」


 裕二は二丁拳銃を構えながら、次々と悪鬼の兵士を撃ち倒していく。彼等は抵抗する間もなく次々と撃たれてしまい、金貨になって地面に落ちたのだ。


「よし、ここは大丈夫そうだ。次の階に進むぞ」

「そうだね。あまり時間はかけたくないし、さっさと終わらせて基地に帰らないと!」


 裕二は金貨を全て回収した後、パルルと共に次の階に進み始めた。この基地は5階建てとなっているので、ボスのいる部屋に辿り着くには時間が掛かるだろう。


 ※


 裕二とパルルがに階に進むと、そこでは更に多くの悪鬼の兵士が待ち構えていた。彼等は次々と武器を構えながら襲い掛かってきたが、裕二とパルルは連携攻撃で次々と倒していく。


「まさか奇襲してくるとは想定外だな。奴等も馬鹿ではない事は、心から認めておくとしよう」

「そうだね。悪鬼の戦闘員は奇襲攻撃が得意だけど、私達を相手にした時点で終わりかもね!」


 パルルは右指から闇の波動光線を発射し、次々と兵士達に直撃する。彼等は為す術もなくやられていき、金貨となって次々と地面に落ちてしまった。


「これで全部か。先に進むとしよう。こんなところで足止めを喰らう理由にはいかないからな」


 裕二は敵がいない事を確認した後、パルルと共に3階へと向かい出す。ボスのいる部屋は5階なのであと2階あるが、焦らずに進む事を既に決意しているのだった。


 ※


 Dブロックボスの部屋には、一人の女性が椅子に座りながら待ち構えていた。

 彼女の名前はサロメ。石化攻撃を得意としているが、さまざまな状態異常を繰り出してくる。また踊り子としても活躍しているので、ブロック基地の中でもかなり危険な存在と言えるだろう。


(相手が誰であろうとも、私には関係ない。邪魔する者は容赦なく殺すのだから……覚悟しなさい……)


 サロメはあくどい笑みを浮かべながら、舌なめずりをしていた。これからここに来る裕二とパルルを待っていながら……。

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