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閑話20 ペンデュラスのエース④

 ルイザ達はバリグルスのいる場所に辿り着くと、そこには標的が既に戦闘態勢に入っていた。既に彼女達が来るのはお見通しであり、侵入者を即刻排除しようとしているのだ。


「まさか私達が来るのを分かっているとはね……こうなると総力戦で立ち向かうしか無いわ」

「ええ。私達も精一杯立ち向かいます。ここまで来たらやるしかありません!」


 ルイザは真剣な表情をしながらバリグルスを睨みつけ、ミンジュン達も同様に戦闘態勢に入る。34人はそのままバリグルスに立ち向かい、試験もいよいよ大詰めになり始めた。


「グオオオオオ!!」


 バリグルスは咆哮を上げながら、付属しているミサイルポッドを起動させる。するとミサイルが次々と発射していき、ルイザ達に襲い掛かってきたのだ。


「全員躱して!」

「くっ!」

「はっ!」


 ルイザの合図で全員が回避し、ミサイルは地面に落ちて爆発を起こす。全員爆発に巻き込まれずに済んだが、当たったら体力は半分減らされていただろう。


「うう……こんな奴と戦うなんてついてないぜ……こんな事なら、試験なんて受けなければ良かったかもな……」


 参加者の一人が弱気な発言をしてしまい、それにスリヤンが彼に視線を移す。今の発言に黙っていられず、そのままズカズカと接近してきた。


「なんて事を言うんだ! 俺達はS級目指して頑張っているだろ! なのに弱気を吐いてどうするんだ!」

「そ、そうだった……ごめん、俺が悪かった!」


 スリヤンからの叱責を受けた参加者は、ハッと思い出して彼に謝罪する。その直後にバリグルスは背中の砲台から、次々と大砲の弾を発射してきた。


「危ない! 皆躱して!」


 ミンジュンが参加者達に向かって叫んだ直後、大砲の弾は地面に落ちて強烈な爆発を起こす。その爆風に参加者達は巻き込まれ、次々と吹き飛ばされてしまった。


「「「うわ(きゃ)あああああああ!!」」」


 爆風によって参加者の一部が飛ばされてしまい、あっという間に7人が脱落してしまった。この光景を見ていた他の参加者達は呆然とするが、すぐに戦いへと切り替えてバリグルスに視線を移し始めた。


「畜生! こうなったら仇討ちだ! 砲台など全て破壊してやる!」


 一人の参加者は脱落した者達の思いを胸に、素早い動きでバリグルスに接近していく。彼はロングソードを構えながら、砲台を次々と破壊。更にはミサイルポッドまで支点を切断し、砲台は次々と地面に落ちてしまったのだ。


「凄い! あの砲台を破壊するなんて!」

「剣士の腕前はこの程度ではありませんからね。さあ、まだまだ行きますよ!」


 この光景にルイザは驚いてしまい、参加者は笑みを浮かべながら、グッドサインで応える。

 彼の名はアッシュ。燃えるど根性剣士であり、どんな困難でも貫き通す熱血漢である。しかし周りが見えなくて、猪突猛進で突っ走ってしまう事も。


「私だって負けられないわ! これ以上好き勝手にはさせないから!」


 ミンジュンも気合を入れ始めたと同時に、斬馬刀の刀身を光輝かせていく。すると刀身は水のオーラを纏わせ、更に攻撃力をアップし始めたのだ。


「喰らえ! 水神羅刹斬すいじんらせつざん!」


 斬馬刀による強烈な斬撃が決まり、レーサーガンをバリグルスの腕から分離させる事に成功。同時にバリグルスが怒りで活性化してしまい、四足歩行からキャタピラでの移動であるタンクモードに変化してしまった。


「突進攻撃が来るわよ! 全員回避用意!」


 ルイザが叫んだ直後、バリグルスは猛スピードで彼女達に向かいながら突進してきた。立ちはだかる参加者達を次々と弾き飛ばすだけでなく、更にはミサイルや砲弾、レーザー光線まで発射してきたのだ。


「うわっ!」

「ぐげっ!」

「あだっ!」


 スリヤン、アッシュ、他の参加者達は、次々とバリグルスの攻撃を受けてやられてしまう。そのまま彼等は強制転移させられてしまい、多くが脱落してしまった。

 残るはミンジュン、ハーフエルフのアミラ、ウルフの獣人であるマッコイの3人だ。


「残るは俺達だけだな……だが、俺に考えがある」

「考え? 何か方法があるの?」


 マッコイは人数を確認した直後、自身に考えがある事を宣言する。それを聞いたアミラ達が反応し、彼の周りに集まってくる。


「一か八かの賭けだけどな。実は……」


 マッコイは自身の考えをヒソヒソと皆に話し始め、それを聞いた彼女達は納得の表情で戦闘態勢に入る。するとバリグルスが彼等に視線を移し、そのまま猛スピードで襲い掛かってきた。


「ここからはマッコイの作戦開始! 行くわよ!」


 ルイザの合図と同時に作戦が始まりを告げられ、彼女達は一斉に動き出す。するとバリグルスがレーザーガンなどを一斉に放ち始め、猛攻を仕掛けてきたのだ。


「そうはさせるか! 全員散開!」


 しかし全員が素早い動きを駆使して、全ての攻撃を回避する。そのままマッコイがスピードを上げて跳躍したと同時に、鉤爪を光らせながら攻撃を仕掛けてきた。


「攻めるなら今しかねえな! ウルフスラッシュ!」


 バリグルスはマッコイの攻撃をレーザーガンで迎え撃つが、ウルフの獣人であるマッコイはその攻撃を避け、鉤爪でレーザーガンを破壊する。同時にアミラが弓を構え、矢を連続で放とうとしていた。


「アミラ!」

「了解! アンタはこれでも喰らいなさい! ガトリングアロー!」


 連射された矢はバリグルスの装甲を貫き、内部の機械を破壊。するとレーザーガンが爆発を起こしてしまい、使い物にならなくなってしまったのだ。


「やるじゃない! 私も後れを取らず、前へ突き進むのみ! 水神羅刹斬すいじんらせつざん!」


 ミンジュンも負けじと斬馬刀を振り下ろし、バリグルスの装甲を切り裂く。すると装甲の中からコアが飛び出してきたのだ。

 これこそバリグルスの弱点であるが、このまま終わる理由がない。


「グオオオオオ!!」

「砲弾が来たか!」


 バリグルスは激しく咆哮し、全身の砲台を一斉に放ってくる。ミサイルや砲弾などの雨あられが襲い掛かるが、マッコイ達は次々と回避していた。


「これ以上はさせない! 一発喰らえ!」


 アミラがその隙に、バリグルスのコアを狙って矢を放つ。同時に矢はバリグルスのコアに命中し、彼はは激しく揺れ始めた。


「激しく揺れた今……攻撃はチャンスと言えるわ!」

「それなら私がとどめを刺すわ! ペンデュラスのエースの意地を……見せてあげる!」 


 ルイザがその隙に、バリグルスのコアを狙って攻撃を仕掛ける。しかしバリグルスは最後の力を振り絞り、全身の砲台を一斉に放ってきた。

 それでもルイザ達は次々と回避した直後、彼女はスピードを上げてコアのある場所に前進。そこから最大奥義を放とうとしていた。


「これで終わりよ! サウザントブレイク!」


 強烈な地面属性の斬撃が、バリグルスのコアに炸裂。その衝撃でコアが破壊され、全身の装甲が崩れ去って消滅してしまったのだ。


「凄い……これがペンデュラスのエース……」

「この攻撃を見るなんて初めてです……」

「それに比べて俺達はまだまだだな……けど、ここからが本番だな」


 ミンジュン達はルイザの姿を見て、彼女の勇姿をただ見つめるしか無かった。自分達の実力は彼女とは大違いであり、自らの力不足を痛感しているだろう。


「ふう……これにてミッション完了ね」


 ルイザは敵を倒した事を確認しつつ、パンパンと手を叩く。そのままミンジュン達に視線を移し、ニッコリと微笑んでいた。


「ミンジュン、アミラ、マッコイ。生き残ったのはあなた達であり、そのまま合格という事になるわ。今後は私の元で修行する事になるけど、S級目指して頑張りましょう!」

「「「はい(おう)!」」」


 ルイザの笑顔に対し、ミンジュン達も笑顔で応えた。 

 こうして試験も無事に終了し、ミンジュン、アミラ、マッコイの三人が合格という結果になった。彼等はルイザの元に修行を重ね、S級を目指して奮闘する事になるだろう。


(無事に合格者も出たし、私の物語はこれからが本番。気合入れて頑張らないと!)


 ルイザは心の中で決意したと同時に、ミンジュン達と共に、フェルネ達が待っている森の入り口前へと帰り始めた。これからの物語に向けて、新たな一歩を踏み出しながら。

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