面接から3日後、ガダル島ではミンジュン率いる66名の参加者達が集められていた。恐らくこれが実技試験のクエストであり、誰もが真剣な表情でクエストを待っているのだ。
(いよいよか……不安な事もあるけど、精一杯頑張らないと! 私は必ず合格して、ギルドや皆の為にも貢献するんだ!)
ミンジュンは心の中で自身でやる気を引き上げた直後、ルイザとフェルネが姿を現す。参加者達は全員ピリピリしながら前を向き、真剣な表情で2人に視線を合わせた。
「全員揃っておるな。これより実技試験を行う!」
フェルネからの真剣な宣言と同時に、誰もが息を呑みながら緊張し始める。この試験を乗り越える事ができなければ、S級など夢のまた夢であるのだ。
「ルールについては今回行うS級クエストに挑戦するが、今回の敵はケンタウロスの様なバリグルスを倒す事じゃ。奴は機械の身体をしていて、剛力の機械の腕が四本生えていた。四本の足は戦車のキャタピラとなっていて、タンクモードにも変形できるぞ」
フェルネはバリグルスに関して正確に説明し、その内容に殆どが顔を青ざめてしまう。この様な強敵は聞いた事がないので、ゾッとするのも無理はない。
バリグルスは全身が機械となっていて、馬の部分の背中には大きな砲台が設置され、ミサイルポッドも兼ね揃えている。しかも腕にはレーザーガンも付いているので、難敵と言えるだろう。
更に胴体の鬼の形相の仮面があるが、その部分は胴体を守る前面装甲となっている。同時に放熱機関の役目を持っている為、そこが弱点となっているのだ。
「となると、弱点である前面装甲を破壊すれば、確実に倒せると思いますよ。俺、バリグルスの弱点について知っていますし」
参加者の一人が余裕そうな表情をしながら、バリグルスを確実に倒せる事を告げる。しかしフェルネは首を横に振りながら、否定をしていた。
「甘く見るな。今回のバリグルスは前面装甲を強化しているだけでなく、砲台も二台、ミサイルポッドも二倍に増えている。更に小型サテライトレーザーまで装備されていて、完全に強化されているのじゃ」
「か、かなり強化されているじゃないっすか……」
フェルネからの説明に対し、参加者は冷や汗を流していた。しかも顔は真っ青で、恐怖でガタガタ震え始めてしまう。
弱点を調べて対策をしても、予想外の展開も起こる可能性がある。それをどう対処するかが、合格への分かれ道となるだろう。
「そして最後まで生き残った者の中で、戦いの内容、サポートできているか、連携が取れているかなどをチェックする。其れ等を満たしている3人が合格となるが、補欠が出た場合は脱落者からもチャンスがある事を忘れない様に」
フェルネの説明が終わりを告げたと同時に、ルイザはすぐにクエストに向かう準備を始める。彼女が駆け出したと同時に試験スタートとなるので、ミンジュン率いる参加者達も一斉に準備を行い始めた。
「よし! 始めますか!」
そのままルイザはクエストへと向かい出し、参加者達も後に続く。同時に実技試験も始まりを告げられ、フェルネは参加者達の後ろ姿を見つめていた。
「さて、どうなるのかじゃな」
フェルネはそう呟いたと同時に、試験の行方を見守り始めた。合格者が出る事を本格的に信じながら。
※
「さて、S級ではモンスター達の強さも上がっているからね。油断すれば死ぬ事もあるので、注意してね」
ルイザはその場にいる参加者に対して、真剣な表情で忠告をする。その内容に参加者達が息を呑んだと同時に、茂みの中からモンスター達が姿を現した。
モンスターはゴブリン、インプ、一部機械化のサイボーグゴブリン、鬼の顔をしたモンスターであるガーゴイルが姿を現した。しかもS級ランクとなれば高レベルであり、下手したら死ぬ確率もあり得るだろう。
「モンスターが来たか! 戦うしか無い!」
「そうね。因みにこの試験では、あなた達の全体のステータスをS級レベルに強化しているわ! けど、体力が一定以下となれば、即脱落だからね!」
ルイザは参加者達にアドバイスを送り、彼等は頷きながらモンスター達に襲い掛かる。しかし武器については変わってないので、どの様にモンスターを倒すかが重要となるだろう。
「よし、行きます!」
ミンジュンは叫びながら、ゴブリンに剣を振り下ろす。ゴブリンは小さくて素早いが、ミンジュンはS級レベルの強化を受けているため、容易くゴブリンを倒すことができた。
「なかなかやるじゃないか! 俺達も負けてられるか!」
「あいつばかり良い格好させるかよ!」
他の参加者もモンスターに襲い掛かるが、サイボーグゴブリンの攻撃は激しく、多くの参加者が体力が一定以下に下がって脱落してしまう。ガーゴイルの攻撃も強力で、多くの参加者が苦戦を強いられているのだ。
(自身の戦いに集中あるのみ! 頑張らないと!)
ミンジュンは集中しながら眼の前のインプを倒し、次にサイボーグゴブリンに攻撃を仕掛ける。サイボーグゴブリンの攻撃の激しさで体力が減少するが、なんとか無事に倒すことができた。
戦いが続く中、多くの参加者が次々と脱落してしまう。しかし戦いはまだまだ終わっていないので、油断はできないと言って良いだろう。
「まだモンスターはいるわ! 油断せずに攻めまくって!」
「はい!」
ルイザの指示が飛んできたと同時に、ガーゴイルがミンジュンに攻撃を仕掛ける。ミンジュンはガーゴイルの攻撃を避けながら、斬馬刀を構えて反撃の攻撃を与えまくった。
ミンジュンが持つ斬馬刀は、東方製の武器となっている。その分威力も強めなので、女性にもおすすめなのだ。
「そこ!」
ミンジュンの斬馬刀がガーゴイルを切り裂き、見事倒す事に成功する。
ガーゴイルは強力なモンスターだが、ミンジュンはS級レベルの強化を受けている。その御蔭でなんとか倒すことができたのだ。
※
「ふう……残ったのは半数みたいね……それ程厳しいという事を多くが実感しているし」
モンスター達との戦いが終わり、ルイザは周りを見回す。この戦いで生き残っているのは33人で、残りの半数は脱落して強制転移されていた。
ミンジュンは自分が生き残っていることに安堵するが、試験はまだ終わっていない。バリグルスを倒すまでがクエストとなるのだ。
「よし、次のステージに進むわよ!」
ルイザの叫びと同時に、彼女は次のステージに進む。ミンジュンと生き残った参加者もルイザに続き、バリグルスの元へと向かったのだった。
※
一方、不合格した者達はフェルネがいる場所に強制転移させられ、柵の中に入れられていた。彼等は強化していたから甘く見ていたのが原因で、そのままやられてしまったのだ。
「お主達はまだまだ修行が足りん。モンスターを甘く見ていたのが原因じゃからこそ、この様な醜態を晒す羽目になっておった。この失敗を次に繋げておく様に」
「「「はい……」」」
失格になった参加者達は何も言えず、黙り込んでしまう。フェルネはすぐに森の方に視線を切り替え、生き残った半数の事を考え始める。
(恐らく次のステージで、多くが脱落してしまうじゃろう。しかし、その3人の合格者もそこで決まろうとしておる。果たしてどうなるかじゃな……)
フェルネは心の中で思いながら、試験がどうなるのか心から楽しみにしていたのだった。果たして合格者は誰になるのかは、先に進まなければ分からないだろう。