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閑話17 ペンデュラスのエース①

 ペンデュラスにあるギルド。その奥にある部屋では、ルイザがフェルネと話をしていた。それは今後のギルドの方針についてで、真剣な表情をせずにはいられないのだ。


「ペンデュラスについては八犬士達が奪還してくれたが、彼等にばかり頼っていては意味がない。自らも悪鬼に対抗する為、強くなる必要がある」

「アルムルダではキリカ、ルミナールが動いていますからね。それに同じ盗賊として負けられません!」


 フェルネの意見にルイザも同意しつつ、同じ盗賊のキリカにライバル心を燃やし始める。

 ルイザはキリカと直接会っていないが、噂に関しては聞いているとの事。キリカが活躍していると聞いてから、自身も盗賊として負けられない気持ちが強くなっているのだ。


「そうだ。かつてペンデュラスにはお前だけでなく、ハイン、ザギル、クルーザもいた。奴等は悪事を犯して強制労働の身となっているがな」

「あれだけ悪い事をしましたからね……自業自得ですよ」


 フェルネとルイザは強制労働の身となっているハイン達を思い出しながら、呆れた表情でため息をつく。

 ハイン、ザギル、クルーザの三人はかつてルイザやエヴァと同じチームだったが、彼女達をアリウスに姿を変えたゲルガーに引き渡そうとしていた。その結果、零夜達の攻撃でコテンパンにやられてしまい、判決で強制労働の身となってしまったのだ。

 現在は今も変わらず強制労働の身だが、ザギルは日頃の態度の更生によって現場監督に昇格。クルーザも持ち前のパワーを生かして様々な仕事に取り組んでいるので、2人は強制労働から解放されるのも時間の問題だ。

 しかしハインに関しては体力の限界で倒れてしまい、今では刑務所病院で入院しているとの事。こうなってしまえば元の生活に戻るのは、流石に厳しくなる可能性が高いだろう。


「まあ、彼等の事は放っておいて……ルイザよ。お主はペンデュラスのエースになる為にも、新たなチームを作ってくれ。今のS級はお前しかいない以上、自身の手で新たなS級戦士を育てておく必要があるからな」


 フェルネからの指示に対して、ルイザはコクリと頷きながら応える。

 ペンデュラスのギルドにおけるS級戦士は、ルイザだけとなってしまった。このままだとギルドは崩壊の運命を辿ってしまうので、そうならない為にも今の指示を彼女に伝えておいたのだ。


「となると、まずはメンバー集めですね。では、S級になれる逸材を確認した後、即刻チームを組みたいと思います!」


 ルイザはフェルネに対して一礼をした後、扉を開いて退室した。その様子を見たフェルネは彼女が出て行った事を確認した後、すぐに窓の外に視線を移した。


(やれやれ……わしとしてはこれ以上彼女に負担を掛けさせる理由にはいかんからのう……早くS級になれる逸材を探さなければ、ギルドの存続は厳しくなる。何れにしても存続できる様にしなければ)


 フェルネは窓の外を見上げながら、心から決意を固めていた。ギルドが存続できる事を心から願いながら。


 ※


 ルイザは部屋から出た後、ギルドスペースに移動する。そこには様々な種族のギルドメンバーがいて、S級になれる逸材がいるか確かめていた。しかしどれも平凡ばかりで逸材は殆どいない。まさにどんぐりの背比べとしか言えないのだ。


「うーん……困ったわね……」


 ルイザは殆どのギルドメンバーを見て、盛大なため息をつく。どれも平凡ばかりなので、ため息をつくのも無理ないだろう。

 するとその様子を見ていた一人の女性が駆け付けてくる。彼女は白い韓服を着ていて、黒のポニーテールをしていた。


「何かあったのですか?」

「ああ、ミンジュン。実はS級戦士になれる逸材を探していたけど、どれもイマイチでどんぐりの背比べ。これじゃあ意味がないとしか言えないわ」


 ルイザの悩みを聞いたミンジュンは納得の表情をした直後、別の方向に視線を移す。ギルドメンバーはどれも実力はあると思うが、せいぜいBやCランクの者ばかり。これではS級になれる者など簡単にいる理由がないだろう。


「言われてみればそうですね。けど、その人達を育てて見れば、S級になれる可能性が高くなりますよ」

「そうね……うーん……」


 ミンジュンからのアドバイスに対し、ルイザは首を傾げながら悩んでしまう。するとその会話を聞いたギルドメンバー達が、一斉にルイザに近寄ってきた。


「おい、ルイザ! それはあんまりだ! いくら何でもどんぐりの背比べってあり得ないだろ!」

「そうだぞ! 俺なんかそれを気にして髪型をパンチパーマにしたんだぞ!」

「いや、それは別の意味で怖いわ!」


 ギルドメンバー達からの真剣な抗議を聞いたルイザは、真剣な表情で考え始める。彼等もS級になりたい気持ちになるのは分かるが、そう簡単になれる物ではないと自ら経験している。しかし今の彼等をS級にすれば、ギルドが弱体化してしまう恐れもあるのだ。


(彼等の気持ちがよく分かるとしたら……これしかないわ!)


 するとルイザの頭の中に新たな閃きが生まれ、抗議をするギルドメンバーに視線を移す。


「それなら方法があるわ! 実は私、S級戦士を育てる役目をマスターからもらったの。そこで私とチームを組んめば、S級になれるのも夢しゃないわ!」

「ええっ!? その話は本当なの!?」


 ルイザからの説明を受けたギルドメンバーは驚きを隠せず、一斉に彼女に視線を移す。この様な話は前代未聞で、棚からぼた餅と言えるだろう。


「けど、そう簡単にチームは組ませないわ。面接を受けてもらうからね」

「「「面接!?」」」


 ルイザからの忠告を聞いたギルドメンバーは再び驚いてしまい、ざわついてしまう。そう簡単にチームに入れないとなれば、厳格な審査となるだろう。

 ルイザはギルドメンバーの反応を冷静に観察しながら、続けた。


「面接は私が行うわ。私と一緒に戦うには、ある程度の実力と信頼が必要だから。面接の日時は明日、朝9時から。希望者はギルドの受付に名前を書いておいてね」


 ルイザの説明に、ギルドメンバーは一斉に頷き、面接の日時を確認した。明日、朝9時から。希望者はギルドの受付に名前を書く。ルイザの言葉を繰り返し、心に刻み込んだ。


「それでは、明日、面接で会いましょう。私と一緒に戦う者は、必ずS級に到達するわ」


 ルイザはギルドメンバーに一礼し、ギルドスペースを後にする。ギルドメンバーはルイザの背中を見送り、互いに顔を見合わせた。


「面接……か。私も受けてみようかな」

「俺も! S級に到達するチャンスだ!」


 ギルドメンバーはルイザの言葉に励まされ、明日の面接に備え始める。ルイザのチームに加入するため、必死に準備を始めたのだ。


 ※


 一方、ルイザはフェルネの部屋に戻り、面接の日時を報告。フェルネはルイザの報告に満足し、ギルドの未来に希望を抱いた。


「ルイザ、よくやった。ギルドの未来は明るいぞ」


 フェルネの言葉にルイザは微笑み、ギルドの未来に自信を深める。

 明日、面接で新たなチームメンバーを選ぶ。ルイザはギルドの未来を担う者を必ず見つけようとしていて、重大責任となる。必ず成功する事を心から誓いながら、決意を固めたのだった。


 ※


 その翌日、面接の日が訪れた。応募者はミンジュンを含めて、多くの者が応募していた。ギルドメンバーは全員であり、ギルドに入ってきた者も続出している。

 その様子を見たルイザは、早速面接の準備に取り掛かる。果たして合格者は出るのだろうか……。

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