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閑話16 アルムルダの最強チーム④

 キリカ達のピンチに駆けつけてきたミールは、弓矢を構えながらセイレーンに狙いを定める。邪魔をされた彼女はかなり激怒していて、再び歌おうとしていた。


「そうはさせない! スキル封印!」


 しかしルミナールが封印魔術を唱え、セイレーンの歌を封じてしまう。これでセイレーンは歌う事が出来なくなってしまった。


「セイレーンは風属性。しかし雷、地属性には弱いとの事です! その攻撃を仕掛ければ勝てます!」

「なるほど。では、私から参らせてもらいます!」


 ミールのアドバイスを聞いたクレアは、自ら魔術を唱えながら攻撃を仕掛ける。すると強烈な雷が上空から降り注ぎ、セイレーンに襲い掛かってきた。


「サンダーボルト!」

「ぐわあああああ!!」


 雷はセイレーンに直撃し、効果抜群のダメージを与える。今の攻撃で三分の一の体力を減らす事に成功したが、まだまだ油断はならないだろう。


「今の攻撃でダメージを与える事ができたけど、まだまだという事ね」

「ええ。私達も潔く立ち向かわないと! 敵に目をつけられたからには倒すのみです!」


 クレアは素早く動き出したと同時に、剣による強烈な斬撃を次々とセイレーンに繰り出す。しかしセイレーンは突風を発動させようとしていて、クレアは盾を構えて防ごうとする。

 そのまま突風がクレアに襲い掛かり、ミールは危機を感じながら弓矢を放とうとしていた。


「そうはさせない! スパイラルショット!」


 ミールが風の矢を発射し、セイレーンの突風を吹き飛ばしてしまう。クレアはその隙に更に攻撃を仕掛け、セイレーンの体力を半分まで削り取る事に成功した。


「ぐわあああああ! なぜ、こんなに強い!? この私を甘く見るなァァァァァァ!」


 セイレーンは激怒しながら、クレアに突進してくる。自身をここまで苦戦させた者を放って置く理由にはいかず、倍にして返そうとしているのだ。

 クレアは剣を構えてセイレーンの攻撃を防ごうとするが、セイレーンの力は強く、クレアは押し込まれてしまう。いくら盾を持っていても、ピンチである事には変わりない。


「クレア! 早く助けないと!」


 ミールはクレアを助けようと、風の矢を連射するが、セイレーンはクレアを盾に使い、ミールの攻撃を防いでしまう。


「クレア、早く! 逃げて!」


 ルミナールはクレアに叫ぶが、クレアはセイレーンの力に押し込まれて、動くことができない。このままではやられてしまうのも時間の問題で、危機一髪となるだろう。

 するとキリカはある事を思い出し、すぐにクレアへ声を掛ける。


「クレア! ここはスキルを使った方が良いわ! セイレーンの束縛から解放されるには、それしか無いみたい!」

「その手がありましたね! エアリアルスラッシュ!」


 キリカはクレアにスキルを解放するよう叫び、彼女は頷きながらスキルを解放する。同時にクレアの剣が光り輝き、彼女はセイレーンの力に抗い、剣を振り下ろした。


「ぐわあああああ! まだ抗う気なのか!?」


 セイレーンはクレアの攻撃に耐えきれず、吹き飛ばされてしまう。クレアはセイレーンの体力をほとんど削り取り、残りあと僅かとなってしまったのだ。


「セイレーン、あなたの野望は終わりです! 断罪一閃だんざいいっせん!」


 クレアはセイレーンに最後の攻撃である強烈な斬撃を繰り出し、セイレーンを倒す事に成功。セイレーンは光の粒となって消えていき、金貨と素材であるセイレーンの布が地面に落ちたのだ。


「やった! 勝ちました!」


 クレアはミールに駆け寄り、セイレーンを倒した喜びを分かち合う。キリカとルミナールも笑顔で駆け寄り、クレア達の勝利を祝福していた。


「クレア、凄いじゃない! セイレーンを倒すなんてS級の才能があるわ!」


 キリカはクレアを褒め、クレアは笑顔で応える。ルミナールも同様に笑顔で頷き、クレアの可能性を実感しているのだ。


「ありがとうございます。皆様方の力があって、勝つことができました!」


 クレアは皆に感謝する中、ミールは金貨とセイレーンの布を拾っていく。そのままクレアにセイレーンの布を手渡した。


「これを使って、盾を強化してみて。貴方が倒した以上、受け取る必要があるわ」

「良いのですか? 感謝します」


 クレアはミールからセイレーンの布を受け取り、バングルの中に仕舞い込む。クエストから帰ったらこの素材を使って盾を強化する事になるが、完成するのは何時になるのか気になるところだ。


「さっ、そろそろ帰ろうか! クエストも終わったし!」

「でも、帰るまではクエストですからね」

「分かっているわよ……」


 キリカの合図で全員で帰ろうとする中、クレアからの指摘に彼女は頬を膨らましてしまう。その様子にルミナールとミールはクスクスと微笑んでいたのだった。


 ※


 その後、ギルドに帰還したキリカ達は、これまでの事を説明。その内容を聞いたウォルトは納得の表情をしていた。


「なるほど。セイレーンを倒す事に成功したとは……これはどうやら昇級試験を受けて貰わないといかんのう」

「昇級試験……もしかして……!」


 ウォルトは真剣な表情をしながら考え込み、その様子を見たキリカとルミナールはすぐに察する。彼女達全員はA級ランクなので、S級ランクまではあと少しとなっている。今回はセイレーンを倒した事で、昇級の可能性が浮上しているのだ。


「そう。お前達四人でチームを組み、S級昇級試験を受けてもらう。アルムルダにおける最強チームを誕生させる為にもな」


 ウォルトからの宣言にキリカ達は驚きを隠せずにいたが、これはチャンスとしか言えない。成功すれば念願のS級だけでなく、最強チームの称号を手に入れる事が出来る。ここまで話を聞いた以上は、無視する事は不可能と言えるだろう。


「それなら受けさせてもらいます! このチャンスは掴み取らないと!」

「ユクタとロヴァが居ない分、楽に進めましたからね」

「私も参加します!」

「このチャンスは必ず見逃せません!」


 四人はかなりやる気となっていて、情熱の炎を宿している。こうなると実行しない理由にはいかず、実施するしか方法はないのだ。


「よし! では、2週間後に昇級試験を行う。それまで準備を怠る事なく用意する様に!」

「「「了解!」」」


 ウォルトからの指示に対し、キリカ達は冷静に応えていく。同時にこの場で解散という事になり、彼女達は報酬を貰いに向かい出した。


 ※


 ギルドを後にしたキリカ達は、帰り道に居酒屋へと向かっていた。クレアとミールを仲間に加える記念として、居酒屋で打ち上げをする事になっているのだ。


「まさか私達がS級になれる日が来るなんてね……」

「私も想定外だったけど、ここからが私達の新たなステージになるかもね。零夜達に追いつく為にも頑張らないと!」


 ルミナールは零夜に追いつく様強く意気込み、キリカ達も同意しながら頷く。

 彼女達は零夜達と違い、既定のクエストをクリアしなければ昇級ができない。だからこそ地道に頑張って突き進むしかないのだ。

 他のギルドでも同じとなっているが、こればかりは仕方がないと言えるだろう。


「そうですね。私達も精一杯頑張らないと!」

「今は打ち上げを楽しんで、明日から昇級試験に向けて頑張りましょう!」


 クレアとミールもS級ランクを目指す為、張り切りながら意気込みを入れる。しかし今は打ち上げをする予定なので、そちらに集中するべきだと判断しているのだ。


「そうね。それじゃ、早く居酒屋に向かいましょう! あそこは何でもござれだからね!」

「そうね。席が埋まる前に急がないと!」


 4人は笑顔で駆け出しながら、居酒屋へと向かい出した。空は真っ赤な夕日で赤く染まり、彼女達を照らしていたのだった。

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