目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
閑話15 アルムルダの最強チーム③

 キリカ達は樹海の中を突き進むが、敵が何時来るか分からないので慎重に行動する事に。モンスターが何処かで潜んでいる場合があるので、用心した方が効率的と言えるだろう。


「ここの辺りは異常無しか。クレア、ゴールドブルは何処にいるか分かる?」

「はい。ゴールドブルですが、この辺りにはいないみたいです。もう少し先に進めば見つかります」


 クレアの説明にキリカとルミナールが納得したその時、何処からか音が聞こえ始める。ズシンズシンと音が響き渡っていて、その音はますますこちらに近付いてくるのだ。


「この音……もしかして……!」

「はい。間違いなく奴が来ます! 身構えてください!」


 クレアの合図でキリカとルミナールが身構えた直後、金色の牛のモンスターが姿を現す。奴こそ間違いなくゴールドブルであり、彼女達は真剣な表情で戦闘態勢に入り始めた。

 これまではユクタとロヴァの自己中の二人がいたが、今は違う。しっかり者のクレアが駆けつけた事で、前みたいにはいかないと実感しているのだ。


「私達はあの時とは違う! 弱点を突いて倒しに行くわよ!」

「「了解!」」


 キリカの合図にルミナールとクレアは頷きながら応え、3人はスピードを上げてゴールドブルに立ち向かう。彼女達の素早い動きはまさにアサシンの様で、獲物を逃さない鷹の様な目をしているのだ。


「ゴールドブルは背中、角、爪、尻尾が弱点です! そこを突けば倒せます!」

「了解! やるからには本格的にいかないとね!」


 クレアの指示を聞いたキリカは、ナイフに岩の能力を纏わせ始める。するとナイフに岩石の硬さが追加され、刀身も茶色に変化したのだ。


「ロックブレイク!」


 キリカによる強烈な岩の斬撃がゴールドブルに襲い掛かるが、その斬撃は角に直撃。しかし強烈な硬さを誇るので、その振動が全身にまで伝わったのだ。


「か、硬い……どうなってんの……?」


 あまりの硬さにキリカは全身痺れてしまい、そのまま地面に落下してしまう。角が岩よりも硬いのは分かるが、まさか此処まで硬いとは思わなかっただろう。

 するとクレアはある事を思い出し、キリカとルミナールに伝える。


「言い忘れましたが、ゴールドブルの角は炎が弱点です! そこに水を掛ければ倒せます!」

「それを早く言ってよ! それだったら炎のナイフに変えないとね!」


 キリカがすぐに岩のナイフを変化させ、炎のナイフに姿を変えさせる。そのままゴールドブルに再び立ち向かい、炎の斬撃を繰り出そうとしていた。


「フレイムブレイド!」


 強烈な炎の斬撃が炸裂し、ゴールドブルの角に熱を浴びせていく。すると角に熱が伝わり始め、だんだん熱くなり始めた。


「なかなかやるわね。それなら、攻撃力アップ!」


 ルミナールは味方全員と自分に攻撃力アップの補助魔法を掛け始め、最大限に強くなり始める。これならゴールドブルも倒せるが、補助魔法の効果は10分間。それまでに倒さなければ駄目だろう。


「このチャンスを無駄にはしません! アクアブレイド!」


 クレアは水属性の斬撃を繰り出し、ゴールドブルの角を完全に破壊する。これで突進の威力は弱まり、後は弱点を突いて攻撃するのみだ。


「今がチャンスです! 攻撃の用意を!」

「任せて! このチャンスを無駄にしない為にも!」


 クレアの合図でキリカとルミナールは駆け出したと同時に、ゴールドブルに集中攻撃を浴びせる。爪や尻尾も結合崩壊する事に成功し、残り体力はあと僅かとなった。


「ラストはこれで終わり! ブレイクナックル!」


 最後はルミナールが跳躍したと同時に、ゴールドブルの背中に強烈な打撃を入れる。するとゴールドブルは横に倒れてしまい、光の粒となって消滅したのだ。


「やった! ゴールドブルを倒す事ができた!」

「まさか私達の力で倒せるなんて……夢じゃないみたい!」

「はい! 私達の大勝利です!」


 3人はゴールドブルを倒した事で、抱き合いながら喜んでいた。自分達の力でここまで倒せた事は、夢にも思わなかっただろう。

 するとクレアは地面に落ちている大量の金貨と、ゴールドブルの素材に視線を移す。すぐに袋に入れて回収したと同時に、自身のバングルの中に収納をした。


「いけない。金貨と素材を回収するのを忘れていた」

「そ、そうね……私達も忘れるところだったし、気を付けておかないと……」


 クレアは安堵のため息をつきながら、回収を忘れていた事を確認する。それにキリカとルミナールも苦笑いしていたその時、風が急に強くなり始めた。


「今の風……まだ戦いが終わっていません!」

「この風って……まさか!?」


 クレア達が危機感を感じながら、風の吹いている方向を向く。するとセイレーンがその場に現れ、彼女達を睨みつけてきたのだ。


「あれがセイレーン……無茶苦茶強そうね……」

「まさか厄介な展開になるなんてね……」


 キリカ達がセイレーンの姿に冷や汗を流した直後、彼女は美しい歌声でクレア達を魅了し始めた。

 セイレーンの歌声は聞く者を魅了し、動けなくする効果がある。クレア達はセイレーンの歌声に抵抗することができず、動けなくなってしまった。


「くっ、まさか歌ってくるなんて……完全にやられたわね……」


 クレア達はセイレーンの歌声に抵抗するために、耳を塞ごうとする。しかし歌声は耳を塞いでも聞こえるので、どうする事もできない。


「うぐ……このままだとやられてしまう……」

「あの歌をどうにかする事ができれば良いのですが……」

「このままだとやられてしまうわね……何とか対策があれば……」


 キリカ達はセイレーンの歌声でピンチとなってしまい、絶体絶命となったその時だった。



「アローショット!」

「ぐほっ!」

「「「!?」」」



 なんとセイレーンの背後から弓矢が放たれ、彼女の背中を直撃してしまう。その衝撃でセイレーンが歌うのを止めてしまい、キリカ達は動ける様になった。


「動ける様になった! これってチャンスじゃない?」

「ええ。でも、いったい誰がこの様な事を……」


 動ける様になったキリカがチャンスと感じる中、クレアは今の攻撃を仕掛けたのは誰なのかと疑問に感じる。あの弓矢のお陰で動ける様になったが、一体誰が仕掛けたのか気になるのも無理はない。


「間一髪でしたね。怪我はないですか?」

「今の声……」


 ルミナールが声のした方を見た途端、銀髪のエルフが姿を現した。彼女はルミナール達を探しにギルドから飛び出し、ピンチの場面を目撃して攻撃を仕掛けていたのだ。


「エルフの女性……まさかミール!?」

「はい! 2日前のクエストで貴方方に助けてもらいました! その時の恩を返す為にも、ここから先は私も助太刀します!」


 ミールは弓矢を構えながら、セイレーンに狙いを定める。大切な人達を危機に晒された以上、黙っている理由にはいかないのだ。


「まさかミールに助けられるとはね……私達も頑張らないと!」

「ええ! 私も黙っていられないからね。ここから先が本番よ!」


 キリカとルミナールは戦闘態勢に入り、セイレーンに対して強く睨みつける。やられた分はやり返す主義で、倍にして返そうとしているのだ。

 更にクレアも剣と盾を強く構えながら、真剣な表情で戦闘態勢に入ろうとする。助けてくれたのは良かったが、同じ目的の者が目の前に出てくると、誰にも負けられない気持ちが強くなるだろう。


「仲間が来てくれた事に助かりますが、ライバルもできた気がします。私もここで負けられません!」

「そう来ないとね! ここからが反撃開始よ!」


 クレアの宣言にキリカはウインクしながら応え、彼女達は真剣な表情でセイレーンに立ち向かい始めたのだった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?