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第18話 ワイバーンとの戦い

 零夜達は試験の討伐対象であるゴーレムを探す為、彼がいる目的地の場所へ向かっていた。その場所はロックマウンテンの中腹だが、狭い道もあるのでそう簡単にはいかないだろう。


「気を付けて行かなければ、落下する事もあり得ます。その時は私にお任せを」

「ええ。頼りにしているから」


 シルバーファルコンは倫子達の崖からの落下を防ぐと宣言し、彼女は笑顔で応えていた。すると前方にゴブリンが姿を現し、零夜達に襲い掛かってきた。


「ゴブリンもこのエリアにいるとはな。早く試験を終わらせる為にも、ここはこいつを使うか!」


 零夜は苦無を構えたと同時に、ゴブリンに向かって次々と投げ飛ばす。すると苦無はゴブリンの心臓部分に次々と当たり、彼等は消滅してゴブリンの皮と金貨が地面に落ちたのだ。


「苦無投げの腕前、実に見事ね」

「まだまだこれからですよ。モンスター達も次々と出てきますので、ここからが本番ですからね」


 倫子に褒められた零夜はウインクを見せた後、そのまま目的に向かって前に進み始める。すると今度は豚のモンスターが姿を現す。この姿から見ればオークだが、手には棍棒を構えているのだ。


「あれがオークか。5匹いるみたいね」

「オークは武器を使った攻撃が得意みたい。ここは一気に攻めないと!」

「武器を使う攻撃か。それなら忍者刀を使わないとな!」


 アイリンのアドバイスを受けた零夜は、忍者刀を構えながら勢いよく飛び出す。オークも棍棒を構えながら立ち向かうが、零夜の素早い動きによって攻撃は次々と回避されていた。


「そこだ! 回転斬空!」


 零夜は回転しながらの斬撃でオークにダメージを与え、そのままダウンを奪う。すかさず倫子はマジカルハートの態勢に入り、ダウンしているオークに狙いを定めた。


「零夜君が作ってくれたチャンス、無駄にしない! マジカルハート!」


 そのまま倫子の両手からハートの光線が発射され、オークに見事直撃。彼はそのままスピリットとなってしまい、倫子のバングルの中に入ったのだ。


「まずは1匹だけど、オークは全部で5匹か……こうなったら全部捕まえておかないとね!」


 倫子はすかさずマジカルハートを連発し、残りのオークにも当て始める。するとオーク達は一斉にスピリットとなってしまい、彼女のバングルの中に入ってしまったのだ。


「すいません、倫子さん。わざわざ手伝って貰って」

「気にしないの。それにモンスターを多く捕まえれば、戦力も増えて楽になるからね」


 零夜は苦笑いしながら倫子にお礼の言葉を言うが、彼女は笑顔を見せながら返していた。すると上空から何者かが襲い掛かろうとしていて、零夜は危機感を感じ始める。


「躱してください! 敵が来ます!」

「「「!?」」」


 零夜の合図と同時に、倫子達は慌てながら地面に伏せてしまう。すると襲い掛かった者の攻撃は外れてしまい、零夜はその正体が何者なのかすぐに判断する。


「ワイバーン……まさかこの世界にもいるとはな……あの時回避しなかったら、死んでいたかも知れない……」


 なんと襲い掛かってきた者の正体はワイバーンであり、その数は7匹。しかも人1人分乗れる中型のサイズなので、厄介な相手に目を付けられたと言えるだろう。


「まさかワイバーンと遭遇するなんて……これは流石に予想外かもね……」


 日和は冷や汗を流しながら、ワイバーンに視線を移す。いきなり襲い掛かってきた事については予想外と言えるだろう。


「けど、やるしかあらへん。ワイバーンを仲間にすれば、今後の移動で楽に進める可能性もある。更にレベルアップにも効果的で一石二鳥やない?」

「うーん……言われてみればそうかも知れませんね。戦わなければ先に進めない。俺もその覚悟で立ち向かいます!」


 倫子の提案を聞いた零夜達は、真剣な表情で考え始める。そのままお互い頷き合ったと同時に、彼等はワイバーンとの戦いへと向かい出す。このまま黙って逃げる理由にはいかず、戦うのなら捕獲して戦力にした方が効率的なのだ。


「無茶をするな、奴等は……だが、前の八犬士達もそうだったかもな」


 ヤツフサがため息をつくが、この光景を見て前の八犬士達の事をしみじみと思い浮かべる。彼等もまた無茶をする一面があるので、呆れる程にため息をついたのだろう。

 するとワイバーンが零夜達に襲い掛かるが、彼等は跳躍して回避する。同時に零夜は手裏剣を取り出すが、特殊なオーラを放っているのだ。


「奴等には睡眠効果が効くかもな! 睡眠手裏剣!」


 零夜は睡眠効果のある手裏剣を次々と投げ飛ばし、数匹のワイバーンの身体に命中する。するとワイバーンは次々と眠くなってしまい、身体の動きが鈍くなった。


「倫子さん! 奴等が眠くなりそうな今こそ、チャンス到来です!」

「よし! マジカルハート!」


 零夜の合図と同時に、倫子がマジカルハートをワイバーンに向けて発射する。次々と命中したと同時に、彼等はスピリットとなって彼女のバングルに入ったのだ。


「今ので四匹は減らしたけど、あと3匹いるみたいね……」


 倫子は地面に着地しながら、ワイバーンの数を確認する。残るワイバーンは3匹。まだまだ油断は禁物である。

 するとその1匹のワイバーンが日和に襲い掛かるが、彼女はサイドステップで回避したと同時に、銃を構えながら獲物に狙いを定める。


「襲い掛かるとこうなるわよ! スリープショット!」


 睡眠効果のある弾丸をワイバーンに当てた途端、彼はそのまま眠って墜落してしまう。それを見た他のワイバーンも彼女に襲い掛かるが、次々とスリープショットを喰らってしまい、眠りながら地面に倒れてしまった。


「そのまま一気に! マジカルハート!」


 倫子はマジカルハートを発射するが、まずは墜落しているワイバーンに命中。更に地面に眠っている2匹にもマジカルハートを浴びせ、見事彼等を仲間にする事に成功したのだ。

 ワイバーン達はスピリットに変化し、倫子のバングルの中に入る。これで敵はいなくなり、安心して進める様になった。


「あのワイバーンを仲間にするとは驚きましたね……もしかすると、ゴーレムを仲間にできるのも不可能じゃないと思います!」


 メリアはこの光景に驚きつつ、零夜達の行動に期待の目をしている。あのワイバーンでさえも仲間にする事に成功したのだから、ゴーレムさえも仲間に出来ると信じている。ワイバーンをまとめて仲間に出来るなど前代未聞なので、とんでもない逸材を手に入れたと感じているだろう。


「皆がいたからこそ、仲間にできたからね。けど、ゴーレムはそう簡単にいかないから、慎重にいかないと」

「倫子の言う通りだ。恐らくゴーレムも何かしらの対策を仕掛けてくる。用心して進むぞ」


 倫子は苦笑いした後、ここからはそう簡単にいかない事を推測する。ゴーレムはレベルが自分達より上である可能性がある為、そのモンスターにもマジカルハートが効くかどうかだ。

 ヤツフサもそれに同意しながらも頷き、彼の合図で進み始めた。ゴーレムを仲間にするだけでなく、この試験を問題なくクリアする為にも。


 ※


 その頃、山の中腹ではゴーレムが座りながら空を見上げていた。その様子だと誰かを待っているのだろう。


「来るとしたらそろそろだ……僕は……良いパートナーに巡り会えるのだろうか……」


 ゴーレムは自身のパートナーが来る事を待っていて、いつもここで待っていた。しかし倒そうとした者や悪い奴等に関しては、容赦なく大空に向かって投げ飛ばしていたのだ。果たして彼の願いは届くのだろうか……。

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