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第14話 盗賊団との戦いへ

 厄介者を倒してから1時間後、零夜街は昼食休憩を終えて再びフルーダス平原に来ていた。次のクエストが薬草採取となっているので、この場所で採取する事になっているのだ。


「姐さん! こっちにありますぜ!」


 倫子はゴブリンのアドバイスで薬草を採取していて、次々と籠に入れていた。因みにゴブリン達は倫子の事を姐さんと慕っていて、彼女に尽力する事を心から決意しているのだ。


「ありがとう。それにしても薬草採取が得意なんて意外やね」

「大した事ありやせん。俺達ゴブリン族は薬草採取を得意としているので。他の奴等もアドバイスしながら手伝っていますぜ」


 ゴブリンが指さす方を見ると、他の仲間のゴブリンは零夜達の手伝いをしていた。彼等のサポートもあったお陰で、薬草採取は問題なく進む事ができている。このまま行けば短時間で終わらせる事ができるだろう。


「薬草採取は問題なく回収完了っと。倫子がゴブリンを捕まえてくれたお陰で、楽に進めるわ」


 アイリンは薬草採取も問題なく完了した事に嬉しさを感じ取り、ゴブリンを捕まえた倫子に対して笑顔を見せる。彼女がゴブリンを捕まえなければ、薬草採取も困難になる可能性もあっただろう。


「大した事ないんやけどね。それよりもウチ等のレベル、上がったんやない? スライムにボスゴブリンを倒したんだし」

「言われてみればそうかも知れませんね。えーっと、レベルの状態は……」


 倫子がこれまでの経験で自らのレベルが上がった事を実感していて、日和と零夜もハッと気付き始める。すぐに3人はレベルの内容を確かめる為、それぞれのウインドウを召喚してステータスを確認し始めた。


東零夜あずまれいや

レベル8

職業:忍者

武器:忍者刀2本、手裏剣、苦無、火薬玉

スキル:隠密行動、変化術、属性忍法


有原日和ありはらひより

レベル8

職業:ハンター

武器:二丁拳銃、大剣

スキル:属性攻撃、ヒーリングソング、回復魔術、裁縫


藍原倫子あいはらりんこ

レベル8

職業:オールラウンダー

武器:ウィザードグローブ

スキル一覧:属性攻撃、ガードバリア、武器・モンスター召喚、料理


「レベル8。大分成長したみたいだけど、まだまだみたいね」


 アイリンは3人のレベルを確認していて、苦笑いしながら納得の表情をしていた。今のレベルではまだまだタマズサの軍勢に立ち向かえるのは困難であり、最低でもレベルは10越えをする必要がある。その為にも地道に頑張っていく必要があるが、何か騒動でも起きない限りはこうするしか方法はないだろう。


「少なくとも俺達は更に強くなければならない。今のままではやられてしまう可能性もあり得るだろう……」

「そうだな。いずれにしても強くならなければ……」


 零夜は俯きながらも更に強くなる事を決意していて、それにヤツフサも真剣な表情で同意している。倫子と日和も強く頷きそうになったその時、何処からか騒ぎの音が聞こえ始める。恐らく何か事件でもあったのだろう。


「何の音かしら?」

「南方向から聞こえたみたいね。薬草については回収済となっているし、すぐに騒ぎの起きた場所に向かいましょう!」


 倫子が疑問に感じる中、アイリンはすぐに騒ぎの起きた場所へ向かい出す。それを見た零夜達も慌てながら、彼女の後を追いかけ始めたのだった。


 ※


 零夜達は崖の上に辿り着くと、騒ぎの起きた場所に視線を移す。その真下では商人が10人ぐらいの男達に襲われていて、彼はガタガタ震えながらピンチになっているのだ。恐らく盗賊達と遭遇していて、護衛は既に逃げ出している。ピンチになるのも当然と言えるだろう。


「騒ぎの元凶はあれだったのね。こうなると見過ごせないわ!」

「よし! ここは俺達の手で倒しに行くぞ!」


 零夜の合図と同時に、彼等は崖から飛び降りて盗賊達の前に着地する。そのまま武器を構えて戦闘態勢に入り、盗賊達を真剣な表情で睨み付けたのだ。


「何者だお前等!」

「俺達はアンタ等を始末しに来た。恨むのなら……、自分の愚かさを恨みな!」


 零夜はすぐに忍者刀を手元に召喚し、盗賊達に素早く襲い掛かる。素早い斬撃とアクロバティックな動きを駆使しつつ、盗賊達を問題なく倒しているのだ。


「私も負けられないわ! はっ!」


 アイリンも負けじと武術を巧みに駆使しながら、盗賊達を倒していく。彼女にとって彼等は問題ないレベルで、その差を見せつける戦いを繰り広げている。

 二人の活躍で盗賊の半数がやられてしまい、残りの半数は冷や汗を流してしまうのも無理なかった。


「ゴブリン達、攻撃開始!」

「お任せください!」


 倫子の合図でゴブリン達が一斉にナイフを投げ飛ばし、残りの盗賊達の足に次々と刺す事に成功する。すると彼等は次々と倒れ込んでしまい、そのまま動けなくなってしまったのだ。しかも痺れによって痙攣しているので、なかなか治る事は難しいだろう。


「今のナイフは痺れナイフだ。こいつを喰らえば1日ぐらいは痺れが続くからな」


 ゴブリン達は盗賊達に刺さっているナイフを次々と引き抜き、日和は刺さった場所をヒーリングしながら血止めしておく。これで盗賊達は全て倒れてしまい、彼等はゴブリン達によって縛られてしまった。


「ありがとうございます。私は荷物を運んでいる最中ですが、盗賊団である彼等に襲われていました」

「無事で何よりですが、彼等はいったい何者なのでしょうか?」


 商人からのお礼に零夜は苦笑いした後、気になる事を商人に質問する。すると縛られている盗賊達を見たアイリンは、彼等についてある事を思い出す。


「メリアから聞いたけど、私達がいない間に盗賊団のマハルダが動き出したと言っていたわ」

「ええ。その彼等こそマハルダです。護衛は分が悪いのか逃げてしまい、私は一気にピンチとなって今に至ったのです」


 アイリンからの推測を聞いた商人は、頷いたと同時にこれまでの一部始終を話し終えた。その内容を聞いた零夜は真剣な表情をしながら、マハルダと護衛達のやり方に怒りで震えていた。


「マハルダの悪行はともかく、護衛達にも責任があると思う。俺はあいつ等を絶対に許さないぜ!」

「同感だ。まずは襲い掛かった盗賊達にはお礼参りをする必要がある。本来ならクエスト外だが、話を聞いたとなれば……黙ってはいられないからな」


 零夜の怒りにヤツフサも同意し、1人と1匹はそのままマハルダのアジトに向かい出す。その様子を見たアイリン達は驚きを隠せず、いくら何でも無謀だと感じるのも無理はない。


「零夜君、ヤツフサさん。本当にやるの!? 相手は手強い奴等ばかりだよ!」


 倫子は心配の表情で立ち向かう2人に声を掛け、それに彼等はコクリと頷く。盗賊達の行為がここまで響くのなら、これ以上の被害を止める為にも動かなければならないと判断しているのだ。


「ええ。手強いかもしれませんが、俺達は必ず戻ってきますので」

「倫子達は商人の事を頼むぞ!」


 零夜とヤツフサはそのままマハルダのアジトを探しに向かい、その様子を見たアイリンはため息をつく。彼等の無謀な行動は呆れてしまうのも無理ないが、同時に自分がしっかりするべきだと決意をしたのだろう。


「仕方がないわね。日和はすぐに増援の手配を! 倫子は商人を安全な場所へ連れてって!」

「分かったけど、アイリンは?」

「私はあの二人のサポートに向かうわ。私がしっかりしないと駄目かも知れないからね!」


 アイリンはすぐに零夜とヤツフサのサポートに向かい、倫子と日和もそれぞれの役割を果たす為に動き出す。同時にマハルダの壊滅作戦もスタートしたのだった。

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