魔王軍による本格的な侵攻が開始され、多くの町や村が魔物の襲撃に遭った。魔王軍に対処するため騎士団が動き出したが、侵攻を食い止めることはできず、被害は拡大していく。
騎士団は勇者を頼るため、彼らの家に赴いて事情を説明する。事情を知った勇者は魔王タマズサを倒すために立ち上がった。
「俺たちに任せてください! これは見過ごせません!」
黒髪の少年は勇者のケンジで、本名は
「へっ! 相手が誰であろうとも、俺たちの敵じゃないからな!」
金髪で鎧を纏っている男性は、重戦士のゴドム。彼は大剣を扱う怪力の持ち主で、多くの強敵を倒した実績を持つ。口は悪いが仲間思いの心優しき戦士であり、パーティーには欠かせない存在だった。
「甘く見ると痛い目に遭うことを教えてやるわ!」
赤いミディアムヘアで、黒い魔術帽子、赤いマント、緑のチューブミニドレスを身につけた女性は魔導士のベティ。彼女は魔法学院を首席で卒業し、魔術を全て取得している。素直じゃない部分もあるが、心から仲間を思う気持ちは本物である。
「回復術は私に任せてください! 誰も死なせません!」
緑色の髪に、白を基調とした長袖のシンプルな僧侶服を身に纏っている女性は、僧侶のメディ。彼女は教会で育ち、シスターを経て僧侶となった。回復や防御術はトップクラスで、心優しき性格だ。
「私も格闘術でサポートするわ。皆のカバーができる自信があるからね」
ピンクのロングヘアで、青いデニムジーンズと赤の袖無しチャイナドレスを着用している女性はアイリン。彼女は父親から教わった武術を駆使して戦い、回復術も使える攻守一体の格闘家だ。
「魔王タマズサは今までの魔王とは桁違いに強いとのことです! お気を付けて!」
「任せてください。俺たちの手で終わらせましょう! 行くぞ!」
「「「おう!」」」
彼らはすぐにタマズサ討伐のための準備を始める。相手がどんなに手強い敵であっても、自分たちの手でこの世界を守るという覚悟を決めながら。
しかし、彼らはタマズサの恐怖をまだ知らず、この先の戦いで思い知らされることとなる。
※
タマズサとゴブゾウは支配下となった廃墟の村に立ち寄っていた。そこで部下のインプから、拠点を構える許可を求められる。
「許可しよう。だが、責任者はどうするつもりだ?」
「話し合いで決めています。候補となっている者につきましては……」
インプが話しているところに、別のインプが慌てて駆けつけた。何か騒動があったらしい。
「申し上げます! 勇者一行がこちらに向かっています! 応戦していますが押されています!」
「勇者一行だと!? 先代魔王と同じ悪夢が蘇りそうだ!」
「どうすればいいんだ!」
インプたちは半狂乱になり、中には地面に頭をガンガン打ちつける者もいた。しかしタマズサは冷静に判断し、全員に視線を送りながら話し始めた。
「落ち着け。相手が誰であろうとも、こちらの勝利は揺るがぬ。むしろ我々を敵に回すとどうなるのか……この世界の民草に見せつけてやろうではないか」
「タマズサ様! 奴らです!」
インプが指差す方を見ると、ケンジ率いる勇者一行が姿を現していた。彼らは真剣な面持ちで、魔王を倒そうと集中力を高めている。
「貴様らがこの世界の勇者か……妾を倒そうとしているのか?」
「ああ。これ以上、この世界を好き勝手させない。相手が誰であろうとも……俺は勇者としての役目を果たす!」
ケンジは勇者の剣を構えて、タマズサに襲いかかった。しかし、次々と繰り出す斬撃は全て回避されてしまう。
一方、余裕のタマズサは回避しながら小さなバリアを展開する。バリアで攻撃を弾き返しながら彼の隙を見つけ、指から光線を放った。
「デス・ソーサラー!」
「!?」
強烈な闇の光線が真っ直ぐにケンジの心臓を貫いた。あまりの光景に、仲間たちは理解が追いつかない。
「し、心臓が……貫かれて……がはっ!」
ケンジは口から大量の血を吐き、前のめりに倒れ、そのまま光の粒となって消滅した。残ったのは彼の持っていた勇者の剣だけだった。
「ふん。勇者がこの程度か。呆れてものも言えぬわ」
それを聞いたゴドムは怒りでワナワナと震えていた。仲間を殺されただけでなく、冒涜されたことに黙ってはいられなかったのだ。
「テメェ! よくも仲間を! ブレイクスラッシャー!」
「見切っておるわ!」
ゴドムは大剣を振りかざし、タマズサに攻撃を仕掛けるが、その攻撃は容易く回避されてしまう。それどころか逆に彼女の拳をボディーに喰らって、片膝をついた。
「て、テメェ……」
ゴドムは苦痛に悶えながらもタマズサを睨みつけるが、彼女は余裕の表情で見下ろしている。するとゴドムの周りにインプが次々と集まり、あっという間に彼を取り囲んでしまった。
「俺たちを忘れるんじゃねーーーぞ」
「テメェら! 俺のことを馬鹿にするんじゃねェェェェェ!!」
「ゴドム! 挑発に乗らないで!」
インプの挑発に乗ったゴドムは、大剣を振りかざしインプに襲いかかる。ベティの言葉も聞かず、彼は一心不乱に大剣を振り回していた。
「……仕方がない。私達も加勢するわ!」
「そうね。あと、ケンジの剣は回収しないと。大切な形見!」
ベティは呆れながらもゴドムに加勢し、メディも後に続く。アイリンはケンジの剣を回収しに向かい、すぐに見つけて拾い上げた。
「回収完了! 後はゴドムだけど……あっ!」
アイリンは目の前の光景に冷や汗を流した。ベティとメディも同様だった。
「ここがお前の墓場だよ。兄ちゃん!」
「が……!」
……それは、ゴドムがゴブゾウの槍によって、心臓を貫かれている光景だった。