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あの夏の花✾3✾

 夏の終わりに本屋へ出かけた帰り道、少年とすれ違う。そのまま通り過ぎ去る風のようなものだと思っていた、しかし。




「楽しかったよ。いつかまた、久遠堂でな」




 聞き覚えのある、どこかなつかしい声。思わず目頭が熱くなる。




「……はい。必ずいつかまた」




 振り返るとそこに少年はいなかったが、あの夏椿の香りだけがその場に残っていた。





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