ここは都内にある大きな病院の一室。
その部屋には、昏睡状態のまま眠る少女と、その兄がいた。
コンコン…
「失礼します、あっ佐藤翔太様」
「あっ・・・お世話になってます」
軽く挨拶したのち、神妙な空気が流れた。
「・・・佐藤様、、、それでは今後についてお話がございますので、別室に行きましょうか」
「・・・はい」
返事とともに、妹に目をやる。
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・
心電図の音に変化はなく、眠ったままだ。
「にいちゃん行ってくるよ・・・絶対にどうにかするからな」
小声で囁いた。
ピッ・・ピッ・・ピッ・・
心電図の音が少し変化したように聞こえたのは気のせいかもしれない。
スタスタスタ…
病室から少し離れた個室。
入り口で僕を待つ先生。
そのまま奥に通され座った。
「あの。。。それで妹は・・・」
「・・・はい。正直にお伝えします」
重い口を開くように先生がゆっくりと話し始めた。
元々臓器系が弱かった妹。
これまでは通院しながらなんとかやってこれた。
けど、歳を重ね体が大きくなったことで耐えられなくなり昏睡状態へ・・・
その一番の要因は心臓。
体が大きくなったことで、心臓を打つ力が足りなくなり体に血液や酸素の供給が難しくなっていった。
その結果が今の状態・・・
昏睡になってもう2ヶ月。
医者の判断だとこのままでは目を覚さない可能性が高いとのことだった。
「先生!!!どうにかならないんですか・・・」
「たった1人の妹なんです、、、」
片親だった僕たちは母に育てられてきた。
幸いなのかも知れないのが、僕と妹は10歳差の兄弟。
高校を卒業するまでは母が1人で支えてきてくれた。
その後は僕も様々な仕事をして生活を支えてきた。
だから父親のように大事に支えてきた。
けど・・・
これまでの無理が祟ったのか、母も46歳で病気になり48歳を待たずにして亡くなった。
今は母の保険や給付金に加えて僕の稼ぎで・・・
そんな状態でもなんとかやってこれ、今年で妹が高校卒業となるはずだった。
なのに、今こんな状態・・・
「何か・・・何かないんですか、、、」
頭を下げ、藁にもすがる思いで呼びかけた。
すると、ゆっくりと口を開く
「1つ・・・可能性があることがあります」
「えっ…あるんですか!!」
「はい・・・」
一呼吸開けて答えた。
「心臓移植です」
日本でも徐々に実例が出てきた昨今。
様々な保険制度などにより変動はするものの、年間で1,000万程度はかかる。
早期移植が国内で望めないとなった場合、海外などで治療となる。
円安の影響など様々な条件を達成させながら渡航と移植手術費用などが3億5,000万以上かかった実例もある。
それくらい大変なことをしないと妹は生きていけないとのこと・・・だった。
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1話をお読み下さいまして誠にありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?
まだホラー展開はありませんが、徐々に不可思議な状況に巻き込まれていくのはこれからです!
そしてタイトルにもある「S」とは・・・
長編のホラー小説になりますので、ゆるくお待ちいただけると嬉しいです!