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第105話 魔王軍復興計画本格始動

「さて、問題は蘇生薬のほうですね」


「魔王様の成果に早くも追い付きそうなレイ様の蘇生薬ですね」


「いいですかプリミラ。レイは私のです。つまり、レイの成果は私の成果なので、私は今蘇生薬を7本引き当てたようなものです」


「魔王様~。功績はちゃんと働いた者につけるべきですよ~」


「すみませんピルカヤ。今のは嘘です」


 フィオナ様のとんでも理論がさく裂したところで、成果ガチ勢のピルカヤに注意された。

 さすがのフィオナ様も、それを否定することはできなかったらしく、大人しくなってしまった。


「3人蘇生が可能ですね」


「また生活を豊かにするための要員を蘇生するのですか?」


 マギレマさんみたいな魔族か。

 彼女のおかげで魔力もずいぶん増えたからな。

 プリミラの案も一つの候補だろう。


「戦力増強もいいんじゃねえか? ピルカヤやリピアネムが蘇生しているとバレたら大事おおごとになるのなら、もう少し動かしやすいやつに動いてもらえばいい」


 なるほど……。

 四天王が蘇生していると警戒されるが、もう少し地位が下の魔族なら、警戒もそこまでされないかもしれない。

 それに、対勇者の戦力であるフィオナ様や四天王と違って、常に本拠地に戻れるように気を張る必要もなく自由に動いてもらえる。


「レイ殿なら、モンスターを大量に作成できるからな。それを率いることができるディキティスあたりが候補だろう」


 軍の司令みたいな魔族だろうか?

 リピアネムが提案するってことは、本人の実力も高そうだ。


「一人で大勢を相手にできるエピクレシもいいかもね~。ボクほどじゃないけど、役に立つんじゃないかな?」


 ピルカヤが提案したのは、多数を相手取れる魔族。

 ということは、ピルカヤのように広範囲を攻撃できそうな技を持っているのだろうか。

 自分ほどじゃないと言っているし、ピルカヤと似た魔族なのかもしれないな。


「レイ様の護衛として、イピレティスをつけるのはいかがでしょうか?」


 護衛か。今は贅沢にも四天王に護衛してもらっているけど、リピアネム以外は護衛の他にも仕事があるからな。

 そういう意味では、俺専属の護衛というのはありがたい。


「レイ殿の護衛ならば、私がいるぞ」


「リピアネム様は隣に立ち敵を威圧するような護衛ですが、イピレティスは敵の油断を誘う護衛ですので、状況に応じて担当を変えるのもいいと思いまして」


「なるほどな……たしかに、リピアネムは頼りになるけれど、姿を見ただけで敵が逃げる可能性もあるか」


「うむ。レイ殿の護衛は任せておけ!」


「これからも頼りにしてるよ」


 そう言うと、リピアネムは嬉しそうな雰囲気へと変わった。

 表情の変化は乏しいが、わりと態度でわかりやすいからなあ。


 話を戻すと、提案した魔族であれば、護衛としての力も十分にあり、なるべく敵にばれずに戦えるってことかな?

 なるべくこちらの活動を目立たせたくないので、重宝できそうな人材といえる。


「フィオナ様。どうしますか?」


「う~ん。う~~ん……迷いますね。レイは誰がいいですか?」


「蘇生薬は3つあるので、いっそのこと全員蘇生させるとか?」


「……ありですね。レイならきっと新たな蘇生薬もすぐに引き当ててくれるでしょうし」


 それは……今回たまたま運がよかっただけだと思う。


「あまり期待されすぎてもガッカリしますよ? 蘇生薬はしばらく引けないと思います」


「むう……レイの力をもってしても難しいですか。では、やっぱりいくつかは、有事の際のために残しておくほうがよさそうですね」


「好きに使っていいんじゃないですか? フィオナ様は、これまでがんばって魔王軍を復活させようとしてきたので、蘇生薬もそのために使っていいと思います」


「あ~……甘やかされる~。これまでのはずれの傷が癒えていくかのようです」


 じゃあ浅い傷だったんだろうな。

 なんにせよ、フィオナ様の体調か、あるいは精神が回復するのならいいことだ。


「レイのやさしさを摂取しないと生きていけない体になりそうです」


「そんな手遅れな体になられても困るので、厳しく接します」


「そんなあ……それだとプリミラのお小言によるダメージと釣り合わないじゃないですか。あなたの魔王がピンチですよ?」


「怒られないようにすればいいと思うんですけど……」


 無理だな。だってフィオナ様だし。

 これまで通り接したほうがよさそうだ。知らず知らずのうちに、飴と鞭の飴役に抜擢されてしまった。

 鞭役は何食わぬ顔で俺たちのやり取りを眺めている。

 どうやら、まだ怒られポイントは発生していないらしい。


「というわけで、さっき言っていた三人を蘇生しますか?」


「レイが許してくれるのであれば、そうします」


「俺の許可はいらないと思うんですけど、まあいいんじゃないですか?」


 魔王に許可を出す俺ってなんなんだろう。

 大魔王とか裏ボスになってしまうんだろうか。


「ありがとうございます。では、今回は豪勢に3人も蘇生です! 蘇りなさい。とうっ!」


 かけ声とともに蘇生薬を使用するが、たぶんあんなに気合を入れる必要はない。

 プリミラのときとか、もっと大人しい魔王様だったのに、今は愉快でかわいい存在になってしまった。

 こっちが本性だな。まあ、俺はこっちのほうが好きだから問題ない。


「な……なにが……」


 蘇生は成功したようだが、死んだ記憶が残っているためか、あるいは蘇生したことが原因か、ずいぶんと困惑しているように見える。

 そう考えると、すぐに順応できた四天王とマギレマさんってすごかったんだな。


「目覚めたようですね。ディキティス、エピクレシ、イピレティス。あなたたちは、蘇生薬で復活しました」


「魔王様……申し訳ございません。勇者への敗北などという失態を……」


「許します。ディキティス、あなたには再び軍を率いてもらいます」


「仰せのままに……」


 ディキティスさんは、リピアネムに若干似ているな。

 若干お堅い戦士タイプの魔族といった感じだ。

 トカゲのような風体だし、この男性はきっとリザードマンという種族なんだろうな。

 ドラゴンとトカゲ。性格だけでなく種族も似ている。


「勇者……だめだ。殺され方を思い出せない。すみません魔王様。肝心な情報を得られなかったようです」


「仕方ありません。私のためによく最期まで戦いました。エピクレシ」


「すみません。しかし……あ~……自分が死ぬなんて貴重な体験だったのにもったいない……」


 死んだことをあまり気にしていないというか、死んだ瞬間の記憶がないことを残念がっている。

 この女性は……悪魔? コウモリみたいな羽が生えているが、種族まではよくわからないな。

 顔色がずいぶんと白く、血の気を感じさせないのは蘇生したばかりだからだろうか。


「死んじゃったのか~……ごめんなさ~い魔王様~」


「かまいません。こうして蘇生できてなによりです。イピレティス」


「また魔王様の側近としてがんばりますね~」


 小柄な女性というか少女は時任ときとうを彷彿させる。

 というのも、彼女には特徴的な兎の耳がついているからだ。

 兎の獣人かと思ったが、額には鋭い角が生えている。

 どうやら獣人ではなく、アルミラージと呼ばれる種族なのだろう。


「いえ、あなたにはこれからはレイの補佐として働いてもらおうと思います」


「……ん? レイ?」


「ええ、三人とも覚えておきなさい。彼がレイです。そして、あなたたちのために蘇生薬を作ったのはレイです」


 三対の目がこちらを見つめる。

 なんか怖いな。特にイピレティスさんは、急に俺の補佐になれと言われているし。

 俺も聞いていないけど、蘇生して即配置替えとか、左遷したとか思われないだろうか……。


「はじめまして~。イピレティスで~す。あなたは魔族? 僕はアルミラージだよ~」


 イピレティス 魔力:65 筋力:83 技術:74 頑強:61 敏捷:88


「あ、よろしく。ただの魔族のレイです」


 よかった。意外と友好的だ。

 ピルカヤやカーマルのように、やや幼い印象を受けるので人懐っこいのかもしれない。


「ほうほう……蘇生薬!? ああ、失礼。ヴァンパイアのエピクレシです。ところで蘇生薬について詳しくお話しませんか?」


 エピクレシ 魔力:85 筋力:65 技術:82 頑強:73 敏捷:66


「といっても、あまりお話できるほど俺も知らないので……」


「知らずに作ったと!? ほほう……魔王様。興味深い方を配下に加えましたね」


「自慢のレイです」


 もしかして、研究者みたいな気質なのだろうか?

 蘇生薬にえらく興味を持ってるなこの魔族。

 ともあれ、こちらも好意的な方なので安心した。


「…………リザードマンのディキティスだ」


 ディキティス 魔力:71 筋力:84 技術:83 頑強:75 敏捷:79


「どうも……」


 なんか気まずい。

 例えるのならアホの子じゃないリピアネムといったところか。

 無口な魔族のようなので、ディキティスさんとは親交を深めるのに時間がかかるかもしれない。


 新たに増えた魔王軍の面々。

 また魔王軍の復活に一歩近づいたことだし、彼らともうまくやっていけるといいのだが……。

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