「それじゃあ、四つほど作るか」
「……本当に大丈夫でしょうか? レイ様の魔力を使いすぎて負担にならないようにお願いしますね」
「大丈夫。回復してきたから40くらいはどうにかなるから」
最近とある考えに至った。
どうせ眠っている間に魔力が全快するのなら、眠る前に魔力をすべて消費すればいいじゃないか。
魔力を最大限余さず使えるし、そのまま魔力切れですぐに眠れるし、一石二鳥だ。
ということで、今回も眠る前に畑を一気に作ってしまって、同時に魔力切れで眠ることにしよう。
「それじゃあ、畑作ったら俺はもう寝ますね」
「まだこんな時間なのにか? 若者なのに、偉い健康的なやつだなあ」
「レイは寝つきがいいんですね」
フィオナ様もそう褒めてくれているし、俺の魔力が少ないうちはこの方法が有効そうだな。
プリミラに頼まれた場所に畑を作り、俺はそのまま眠りについた。
◇
「いいですか」
「はい」
「まずは期待しないことです」
「はい」
「そうして敵を騙すことで、隙をついて当たりをかすめ取るんです」
「はい?」
「それと信仰心も有効です。最近、私は目覚めたと同時に魔力を注ぐ信仰にはまっています」
「はあ……」
「なんですか! その気の抜けた返事は! レイだって、私の気持ちがいずれわかるんですからね!」
「す、すみません」
せっかくなので、フィオナ様の隣でモンスターガシャをすることにした。
思っていたよりもフィオナ様が喜んで、よくわからないガシャの心得を聞かせてくれたのだが、機嫌を損ねてしまった。
「フィオナ様には悪いですけど、俺は一点狙いではないのでそこまではまらないと思います」
「う~……あとで泣きついても慰めてあげませんからね!」
慰めてくれようとしたんだ。
フィオナ様と話していると、魔王ってなんだっけって思う回数が増えてきた。
「じゃあ、いきますよ!」
「
「彼女仕事中ですからね。いえ、私も仕事ですけど。別にさぼってませんけど?」
「俺には言い訳しなくてもいいです」
「さすがレイ! 私を甘やかしてくれるのはレイだけです!」
プリミラが聞いていたら怒られそうだ。
とにかく、見本というかまずはフィオナ様が宝箱ガシャをするようだ。
「魔力はもうけっこう込めています。そろそろ出ます。そろそろ当たってもいいじゃないですか!」
だんだんと懇願するようになってきた。
魔王だから神には祈らないだろうし、いったい何に祈っているんだろう。
まあ、俺だってあんな女神に祈るなんてこっちから願い下げだ。
「今です! レイ、開けてください!」
「はいはいっと……」
もう慣れたもので、フィオナ様に頼まれて宝箱を開ける。
いつもはその結果を見ることもないが、今回はせっかくなので久しぶりに中身を確認してみるか。
……これは、金色と銀色に光る鳥の羽? いや、赤っぽい色も混ざっているし、なんか炎のような魔力をまとっている。
「あ~! もう! ある意味惜しいから嫌です!」
「フィオナ様。これなんですか?」
「それは、不死鳥の羽です……」
なんかすごそうなアイテムじゃないか?
というか、蘇生薬と似たような効果がありそうな名前なんだけど。
「所持者がどれだけ傷ついても、一度だけ完全に生命力を回復するアイテムです……」
うん。ある意味でとても惜しいな。
だけど、すでに死んでいる魔王軍を復活させるアイテムというわけではないようだ。
「こ、こんなこともあろうかと、魔力を注入し終えた宝箱がとってあります!」
「おぉ……」
今日のフィオナ様は一味違う。
いつも単発ガシャで終わっているけれど、開けるのを我慢して連続でガシャを行う気だ。
「お願いします!」
「はいはい」
宝箱を開けると、そこには光る羽が……。
「不死鳥の羽! 次です!」
「まだとってあったんですね」
開ける。羽。
「不死鳥の羽! ああぁぁ~……」
フィオナ様鳥に好かれているんだろうか、それとも逆に鳥に恨まれているんだろうか。
力なくうなだれるフィオナ様を見ていたら、なんだか俺までモンスターガシャを回すのが怖くなってきた。
「フィオナ様の
というわけで、中位モンスターの作成だ。
俺の魔力は38。ガシャのチャンスはフィオナ様と同じく三回ということになる。
というわけで、まずは一回目。
フォレストフェアリー 魔力:40 筋力:8 技術:41 頑強:12 敏捷:40
あ、当たった。
小さな緑色の妖精のようだけど、れっきとしたモンスターらしい。
作成メニューにも追加されているが、中位モンスターなので魔力10で増殖できるのもありがたい。
「フォレストフェアリーですね。おめでとうございます。この子は植物の成長を促進させる魔法が使えるので、今回の目的にぴったりですよ」
「なるほど、プリミラが喜びそうですね」
フィオナ様の説明を聞く限りでは、器用さだけでなく農作業にぴったりなモンスターみたいだな。
幸先がいい。というか、あとはフォレストフェアリーを増やせばいいのだが、せっかくだし残りもランダム作成にしてみよう。
「二回目も、フォレストフェアリー」
「きっとプリミラも満足ですね」
それはいいのだけど、一度作成したモンスターなので、これならメニューからの作成でもよかったな。
まあ、せっかくだし最後もランダムでの作成にしよう。
……なんか、ガーゴイルよりでかいのが出てきた。
植物、いや主に木の根のようなもので体が構成されている。
植物系のモンスターか? エントってやつかな。
プラントゴーレム 魔力:35 筋力:58 技術:55 頑強:66 敏捷:15
なるほど、これがゴーレムか。見た目と違って技術力が高いのは助かるな。
こいつもとりあえずはプリミラが満足いく働きをしてくれそうだ。
メニューに追加されたが、消費魔力は20か。
ということは、ガーゴイルと同じく上位のモンスターを引き当てられたみたいだな。
「プラントゴーレムですか……。力持ちで意外と器用なので、きっと畑仕事は得意ですね。それに、自身の養分を土や植物に与える力も持っています。大当たりですね」
「ありがとうございます」
そうか、そんな力まで持っているのなら、きっと役に立ってくれるだろう。
なんだかずいぶんと当たりばかり引けたな。
「う~……その運を私にもわけてください」
「一応開けるのは俺がやっているんですけどねえ」
こればかりは、一点狙いかつ確率が低そうなガシャなのが悪いんだろうな。
「レイの魔力が私くらいになればいいんですけどねえ」
「魔王を超えるなにかにするつもりですか……」
大方、フィオナ様の代わりに働いてくれそうとか考えているんだろうな……。
まあ、俺はダンジョンの作成やら経営はけっこう好きだからそれでもいいけど。
……あれ? それって、今とあまり変わらないような。
◆
「畑……ですか?」
「ええ、魔力の実を作れば、きっとこれからの戦いに役立ちます」
「食べ物じゃないのかよ」
「食べることもできますよ。その場合は効力も減りますけど」
「いずれ戦いが終われば、好きなものを育てることもできるはずです。だから、私が必ず決着をつけます」
きっとそんな日はすぐにきます。私の力はそのためにあるのですから。
敵がいなくなり、平和になった世界のことを考えながら、私は改めて戦う決意を固めました。