あれ?
あの後ろ姿は……
「社長、お待たせいたしました、伊都屋を連れてまいりました」
「あぁ、ご苦労」
秘書に背中を押された。
ソファーの横に立つと
お客様らしき人が立ち上がりこちらを見る。
背丈は俺よりも10cmくらい上で見上げる感じになり、顔を見るなりすぐに分かった。
「1か月ぶりかな? 唯斗」
と声をかけられた。
「あ…」
と指をさしながら
「あおい!!」
と叫んでしまった。
ここには社長と秘書がいる。
あおいと呼ばれた人は俺の顎を持つなり、額に軽くキスをした。
「ん」
ぎゅっと目をつぶりあおいの行動に耳を赤くした。
あおいはいつもセクハラまがいのことをしてくる。
「アハハ、相変わらずかわいいね」
と一言いい、驚いた社長が口を開く。
「あの…
「あぁ、失礼、唯斗を連れてきてくれてありがとう、話に戻ろうか」
ソファーに社長、向かいの席に俺と
「大宮司グループが所有する土地にリゾートエリアを建設する、それを唯斗が担当する」
「は?」
と思わず蒼維の顔を見ながら言ってしまった。
学生の頃から突拍子なことをいう人だと思ってはいたが、新入社員1か月の俺にそれを振るか普通……。
「あの…御存知かと思いますが、伊都屋はまだ1か月の見習い期間でして、リゾート建設は難しいかと……他にも優秀な人材はいますので……」
と伝えると
蒼維の表情が暗くなり
「唯斗を侮辱するのか?」
蒼維がこの表情をするのはあまり見たことがない。
なのでゾクッと背筋が凍り付く。
「あ、いえそうではなくリゾート建設計画を成功させるためには……」
「はぁー分かった、ではこの件は他の会社に頼むよ、時間取らせて悪かったな」
と立ち上がった。
このリゾート建設計画を成功させれば売り上げはかなり上場する、それは社長も分かっている。
エレベーターホールに向かうところに社長が駆け寄り
「大宮司様、担当は伊都屋がいたします」
言い、蒼維の足をとめた。
「そっか、じゃぁ話に戻ろうか」
とにこっと笑うと俺が座るソファーに戻ってきた。
いろいろな計画の話が飛び交い分かる部分と分からない部分で頭がごっちゃになる。
「では唯斗を中心にリゾート計画頼みましたよ」
「かしこまりました」
全員が深々とお辞儀をした。
書面で契約を結び、駐車場まで秘書と俺が付き添い蒼維をあとにした。
超ご機嫌な蒼維が手を振っていた。
秘書に再度社長室に向かうように言われ、エレベーターで25階に向かった。
「伊都屋くん言ってよ、大宮司様と知り合いなら」
「すみません、まさか知り合いが会社に来るなんて思いもしなかったので……」
「リゾート建設計画だけど、伊都屋くんできそう?」
「正直、まだ新米なので先輩たちの目が怖いです」
「だろうね、ここは伊都屋くんがメンバー揃えてもいいよ」
「本当ですか?」
「あぁ、君の立場もあるだろうし、初めから大きな仕事を任せてしまって悪いな」
「いえ、ありがとうございます、というかすみません蒼維の我が儘を聞いてもらってしまって…………」
「いやいや、こんなビッグチャンスなんて巡ってこないからね、それもあの大宮司グループと繋がれるなんて…………はぁ、すごいことだよ」
「そ、そうですか、蒼維ってすごいんだ」
「でもリゾート建設計画の経験がある人がいたほうがいいと思うからメンバー見て少し変えさせてもらうかもしれないが、いいか?」
「はい」
「では、よろしく」