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第49話:お年玉ってあげました?

 ——駅前のゲームセンターにある喫煙所。

 冬の空気が冷たく肌を刺す中、日差しがわずかに地面を照らしている。

 行き交う人々が手を擦り合わせながら足早に過ぎ去っていく中、霧島晴人は灰皿のそばで煙草に火をつけた。


「晴人くん、おはよー!」

 軽快な声とともに甘坂るるが喫煙所に現れた。彼女のコートのポケットからは、手袋が覗いている。


「こんにちは、甘坂さん。」

「寒いねー!ほんと冬って厳しい!」

「……まあ、こういう日もあります。」

 二人は並んで煙草に火をつけ、白い息とともに煙が静かに空へと消えていく。


「そうだ、晴人くんってさ、お年玉とかあげたりするの?」

「……いえ。あげる相手もいませんから。」

 霧島が淡々と答えると、るるは「そっか」と小さく頷いた。


「私はね、甥っ子がいるから毎年ちょっとだけあげてるよ。あんまり多くはないけどね。」

「……そうなんですか。」

「でも、あげる額って悩まない?大きすぎてもなんかプレッシャーになりそうだし、小さすぎてもケチって思われそうだし。」

 るるが困ったように笑うと、霧島は少し考え込むように口を開いた。


「金額ではなく、気持ちが大事だと思います。」

「おお、名言出た!」

「……そうでしょうか。」

 霧島がわずかに首を傾げると、るるは笑いながら煙草をくゆらせた。


「晴人くんってさ、子供の頃はお年玉、何に使ってたの?」

「……貯金していました。」

「えっ、偉い!私はね、すぐゲームとかお菓子に使っちゃってたよ。」


 二人は子供の頃のお正月の思い出について、軽い調子で話し合った。


「ねえ、お正月ってやっぱり食べ物が一番楽しみじゃない?」

 るるが軽く笑いながら話し出すと、霧島は「……確かに」と短く頷いた。


「晴人くん、雑煮とかおせちって好き?」

「……嫌いではありません。雑煮はシンプルなものが好きですね。」

「お、なるほど!おすまし派?それとも味噌派?」

「……おすまし派です。」

「へえ、いいねー。うちは味噌だったよ!あと、お餅をたっぷり入れて食べるのが定番だったなあ。」

 るるが懐かしそうに笑うと、霧島は静かに耳を傾けた。


「おせちはどう?何が好きだった?」

「……黒豆が好きです。あまり甘すぎないものが良いですね。」

「うんうん、黒豆って美味しいよね!私はだし巻き卵が好きだったなー。あれ、甘くておいしいじゃん!」

「……甘坂さんらしいです。」

 霧島が静かに言うと、るるは少し笑いながら「でしょ?」と得意げに答えた。

「雑煮って、うちは大根とかニンジンとか、あと鶏肉も入ってたなあ。」

「……なるほど。うちは餅と三つ葉、それに薄く切ったかまぼこくらいでした。」

「へえ、シンプルだね!それもおいしそう!」

「……そうですね。あっさりした味が好きなので。」

「やっぱり晴人くんって大人だよね。私なんて、お餅を3個とか入れて欲張っちゃってたよ!」

「……それも甘坂さんらしいです。」


 二人は煙草をくゆらせながら、それぞれの正月の思い出について話し合った。


「おせちとか作るのも良いかもね!来年は晴人くんと一緒にお正月料理を作ってみたいなー。」

「……それは良いかもしれません。」

「でしょ?じゃあ、それも来年の目標ってことで!」

 るるが楽しそうに微笑むと、霧島もわずかに笑みを浮かべた。


 ——冬の冷たい風の中、二人のたわいない話は、正月の穏やかな空気に溶け込むように静かに続いていった。

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