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第25話:これってデートですか?

 ――休日の朝、霧島晴人はスマホの通知音で目を覚ました。

 窓から差し込む柔らかな日差しがカーテンの隙間から部屋を照らし、休日特有のゆったりとした空気が漂っている。

「LINE通知:甘坂るる」

『晴人くん、明日か明後日、暇してない?』

 メッセージを確認した霧島は少し驚きながらも返信した。

 霧島晴人:『急ですね。でもちょうど休みなので大丈夫です。』

 甘坂るる:『やった!じゃあこの前話してたどこかにお出かけしない?』

 霧島晴人:『大丈夫ですけど、どこに行くんですか?』

 甘坂るる:『映画とかどうかな?』

 霧島晴人:『いいですよ。』

 約束が決まると、霧島は少し緊張したように深呼吸をした。


 *


 ――駅前の映画館前で待ち合わせた休日の昼下がり。

 霧島晴人は黒のジャケットを羽織り、スリムなパンツと白いスニーカーというシンプルながら落ち着いた装いで現れた。

 少し早めに着いた霧島が周囲を眺めていると、ツイードのワンピースを着た甘坂るるが、微笑みながら手を振っていた。

「晴人くん、やっほー!待たせちゃった?」

「いえ、大丈夫です。甘坂さん、今日は映画を見るんですよね。」

「そうそう!何見るか、歩きながら決めよう!」

 二人は映画館の入口へ向かって歩き始めた。途中、喫煙所の文字が目に留まる。

「晴人くん、あそこに喫煙所あるよ。とりあえず一服しない?」

「そうですね。行きましょう。」

 喫煙所は映画館の片隅にあり、周囲を透明なアクリル板で囲われていた。霧島は煙草に火をつけ、るるも隣で同じように煙草を吸い始める。

「……なんかさ、映画館に来てもこうやって一服できる場所があると安心するよね。」

「そうですね。リラックスして映画を楽しめそうです。」

 軽く会話を交わした後、二人は喫煙所を後にし、映画のチケット売り場に向かった。

「じゃあ、これにしよう!」

 るるが指差した映画は話題のアクション映画だった。チケットを購入し、館内へ入る。上映が始まると、スクリーンには迫力満点の映像が映し出され、二人は映画の世界に引き込まれていった。

 上映後、館内を出るとるるが明るい声で感想を口にした。

「楽しかったねー!」

「はい、迫力がすごかったですね。」

 るるがふと足を止めて霧島を見上げる。

「ねえ、まだ時間大丈夫?おなかすいたし、ご飯食べない?」

「大丈夫ですよ。何か食べたいものありますか?」

「焼き肉とかどう?お肉食べたい気分なんだよね。」

「いいですね。行きましょう。」

 二人は近くの焼き肉屋に入り、テーブル席に案内された。煙が立ち昇る七輪を囲みながら、るるがトングで肉を焼き始める。

「やっぱり焼き肉って最高だよねー!晴人くん、どれから食べる?」

「じゃあ、カルビからいただきます。」

 ジュージューと焼ける音が食欲をそそり、二人は次々と焼けた肉を口に運ぶ。

「晴人くん、おいしい?」

「ええ、すごく美味しいです。」

 るるは満面の笑みを浮かべながら、肉を口に運び、軽く目を閉じて味わった後、目を輝かせて言った。

「お肉最高においしい!晴人くんと一緒だと余計に!」

 霧島は少し照れたように箸を動かしながら、小さく頷いた。そんな彼を見て、るるはくすっと笑う。

 食事を楽しんだ後、るるは指先で喫煙所の方向を示した。目を少し見開きながら霧島の方をじっと見て、無言の合図を送る。

 霧島はその仕草に気づき、軽く笑いながら言った。

「……行きましょうか。」

 喫煙所は店内の奥にあり、いつもの喫煙所よりももっと静かな空間だった。二人は並んで煙草に火をつけ、しばらく無言で煙を吐き出す。

「……なんで食後の一服ってこんなに美味しいんだろうね。」

「確かに。不思議ですよね。」

 るるがふと霧島の顔を見て、軽く笑いながら言った。

「ねえ、晴人くん。これってさ、デート?」

 霧島は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに冷静に答えた。

「……どうなんでしょうね。でも、楽しい時間を過ごせたのは確かです。」

「ふふ、そうだね。じゃあ、またどこか行こうね!」

「……ええ、ぜひ。」

 二人の声が静かな喫煙所に響き、柔らかな笑い声が空間を包み込んだ。

 ――穏やかな休日に繰り広げられたたわいないやりとりが、二人の心をまた少しだけ結びつけた。

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