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第14話:そういえば何歳なんですか?

 ――新年最初の喫煙所。年が明けても変わらない風景と時間が、静かに二人を迎え入れる。

 街の遠くからは除夜の鐘が響いた名残のような静けさが漂い、いつもの日常がそこにあった。

 霧島晴人は煙草の箱をポケットからゆっくりと取り出し、蓋を開けるとその中身を確かめるように一瞥し、扉を押し開けた。喫煙所にはいつもの姿があった。

「晴人くん、遅いよー。」

 甘坂るるが煙草を片手に、軽く伸びをしながら振り返る。今日は厚手のニットにロングコートを羽織り、マフラーでしっかりと首元を覆っていた。

「……甘坂さん、こんにちは。」

「ラインでも言ったけど、……今年もよろしくね!晴人くん!」

「……今年もよろしくお願いします。」

 るるは笑いながら煙草に火をつけ、一服した後、ふと思い出したように言った。

「ねえ、晴人くん。」

「……なんですか?」

「そういえばさ、私たちって名前は知ってるけど、歳とか知らなくない?」

 霧島は煙草をくわえたまま少し考え込み、静かに答えた。

「……確かに、そうですね。」

「ね、気にならない?」

「気にしたことはありませんが……。」

「じゃあ、私から! 私、27。」

「……27歳。」

 霧島は意外そうな顔もせず、淡々と呟いた。るるは少しだけ驚いた表情を浮かべた。

「え、なにその反応。意外とか言わないんだ。」

「見た目通りというか、なんとなくそのくらいな気がしていました。」

「ふーん。じゃあ、晴人くんは?」

「僕は23です。」

「23かー。私の方が年上だとは思ってたけど、やっぱりね!」

 るるは満足げに頷きながら笑う。

「まあ、見た目通りって感じだよね。」

「……そうですか。」

「うん。晴人くんって、なんか若いけど落ち着いてるよね。もっと大学生っぽい感じかと思ってた。」

「……そういう時期もありましたが。」

「ふーん、晴人くんの学生時代とか気になるなー。」

「特に話すことはないですよ。」

「そんなこと言わないでさ、今度聞かせてよ!」

 るるは煙を吐きながら、霧島の顔を覗き込む。

「でも、なんかすっきりした! 年齢知ると、ちょっと親近感湧くね。」

「……そうでしょうか。」

「だって、名前だけよりちょっと仲良くなった気がするじゃん。」

 霧島は淡々と頷きながらも、どこか満足げな表情を見せた。

「まあ、これからもよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく!」

 るるは嬉しそうに笑いながら、最後の一服を吸い終え、煙草の先を灰皿の縁で静かにひねるようにして火を消した。

 ――新年最初の喫煙所には、二人のたわいない会話が冬の澄んだ空気に溶け込んでいた。

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