――時刻は深夜0時過ぎ。
霧島晴人は自室の小さなベッドに横になり、静かに目を閉じていた。
街の喧騒も遠く、部屋にはわずかな機械音と静寂だけが漂っている。
しかし、その静けさを破るかのように、スマホが小さく震えた。
――ピロン♪
「……ん?」
霧島はうっすらと目を開け、手元のスマホを手に取る。
「こんな時間に……なんですか?」
画面には「LINE通知:甘坂るる」と表示されている。そして、その下には妙な文言が――。
『○○パズル!招待が届きました!一緒に遊びませんか?』
「……パズルゲーム?」
霧島は少し眉をひそめ、画面を見つめる。
「深夜にゲームの招待って、どういうことですか……。」
呆れたように独り言を言いながら、少しだけため息をつく。しかし通知が気になってしまい、ついLINEを開く。
――すると、すぐにメッセージが飛んできた。
甘坂るる:『晴人くん、起きてる?』
霧島晴人:『……起きてますけど、何ですかこれ。』
甘坂るる:『今ハマってるゲーム! 一緒にやろうよ♪』
「……ハマってるゲーム?」
霧島は少しだけスマホを見つめ、画面に映るポップなパズルゲームのアイコンをタップする。
――ダウンロード画面が表示される。
「……本当にこれを今やるんですか……。」
半ば呆れながらも、ダウンロードを始める霧島。再びLINEの通知が飛んできた。
甘坂るる:『ねね、ちゃんとインストールしてる?』
霧島晴人:『……しています。』
甘坂るる:『やったー! じゃあ始めたら教えて♪』
「はあ……。」
霧島は少しだけ苦笑しながら、ベッドから起き上がる。そして煙草の箱を手に取ると、窓を開けてベランダへ向かった。
――冬の夜ふけの冷たい空気が自然と身体を震わせる。
「……なんでこんな時間に……。」
そう呟きながらスマホを片手に操作し、画面を見つめる。そこでLINEが再び通知を送る。
甘坂るる:『今、煙草吸いながらパズルやってるよー! 晴人くんもでしょ?』
霧島は少し笑って、淡々と返事を打つ。
霧島晴人:『……まあ、今、そうですね。』
甘坂るる:『いいでしょ? 深夜の一服しながらパズル、最高だから!』
「……なるほど。」
霧島は一口煙を吸い込み、吐き出しながらパズルゲームを始めた。
――ピロン♪
甘坂るる:『ね、今どこまで進んだ?』
霧島晴人:『チュートリアルが終わったところです。』
甘坂るる:『じゃあさ、次のステージ一緒にやろうよ! スコア競争ね!』
「……競争ですか。」
霧島は少し苦笑しながらも、そのままゲームを進めていく。
――数分後。
甘坂るる:『待って待って! なんでそんなに早いの!?』
霧島晴人:『別に普通にやっているだけですが。』
甘坂るる:『絶対それ普通じゃない! 絶対うまい!』
「……どうなんでしょう。」
霧島は画面に集中しながら、淡々とパズルを揃え続ける。静かな夜の中、スマホの通知音だけがやたらと賑やかに響く。
――30分後。
甘坂るる:『くやしい……なんで勝てないの!?』
霧島晴人:『運が良かっただけでは?』
甘坂るる:『絶対違う! 晴人くん、パズルの天才かも! 私が保証する!』
「……そんな保証いりませんよ。」
霧島は苦笑しながら煙草を灰皿に押し付ける。
霧島晴人:『もう遅いので寝たほうがいいですよ。』
甘坂るる:『うん、楽しかったー! ありがとうね、晴人くん♪』
「……どういたしまして。」
霧島は静かにスマホを閉じ、窓を閉めながら部屋の中に戻った。
――深夜に誘われたパズルゲーム。
夜半の冬、二人のたわいない時間はLINEの通知音と共にゆっくりと過ぎていった。