雨上がり
土間の外から
泣き声が
声をかけると
さらに大きく
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土間で嫁が湯を沸かしていると、雨上がりの土間の外から「しくしく。」と泣声が聞こえてくる。
誰が泣いているのかと出て行くと隣の(と、いってもだいぶ遠い)娘さんだった。
声をかけると安心したようで、さらに大きな声になってますます泣くのでした。
落ちつくのを待って事情を聞いてみると「そそっかしいから土間から出て行け。」と親に追い出されたと言う。
「そうかそうか。」言って聞いていくうちに、この娘は歌がうまいことを思い出した。
「大きな声で歌うとスッキリするんじゃあないか?」と提案すると、眼を輝かせ「どこで歌えばいいの?」と聞いてくる。
「それなら、とっておきの場所に連れていこう。お山の一枚岩だよ。」と言いながら梟に[ 泣いている娘さんが家に来ました。一枚岩に連れていきます ]と文を届けるように頼む。
「え?」ポカンとしている娘さんをおんぶすると、嫁は「ちょっと一枚岩までいってくるよーう。」と牛小屋に声をかけて出かけた。
しばらくして、お山の一枚岩から娘さんの歌声が村全体にやさしく広がったのでした。