龍の太い首に向かって、真っ直ぐに落ちていく。
「蒼剣流剣術――
――剣が煌めく。
まるで、炎が祝福しているかのように。
――剣が肉を断ち切る。
まるで、絶望の鎖を斬り伏せるかのように。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
持てる力の全てを使い、ドラゴンの首を落とす。
「
気づけば、俺は空中にいた。そりゃそうだ、首は地面から生えちゃいいない。
俺はドラゴンを倒したんだ。シルフィアに、また一歩近づけたんだ。
「なんだか……力が抜けて――」
やばい、意識がふわふわしてきた。気を抜いたら意識が飛びかねん。そしたら絶対死ぬ。
クソ、アドレナリンの役立たずめ……! と叱咤するも、どうしようもない眠さは常に俺をいざない続ける。
「これ……まずいっ――!」
「よっと」
おぉ、どうやら俺は幻聴まで聞こえるほどになってしまったらしい。
このタイミングでシルフィアの声がするなんて、都合のいい耳と脳だこと。あーやだやだ、現実はいつだって非情なんだから――
「シ、シルフィアぁっ!?」
「おはよっ。ふふっ、ちゃんと起きてくれてよかった」
ニコッと笑って嬉しそうな声色で話しかけてきた。
なんだか距離がやけに近いおかげでシルフィアの顔を良く見る事ができる。
はて、どんな体勢ならこうなるのかね――そんな事を考え、視線を顔から外して見る。
……男なのに女の子にお姫様抱っこされてる高校生はここです。幸福感と恥ずかしさが同時にせめぎあっててなんとも複雑な気分だ。
「そ、そういえばなんでシルフィアはここに……?」
「ここはどうやら合流地点なんだって。同時に攻略するパーティーが最終的に到達するボスの部屋。やっと会えたね」
「あぁ。ずっと会いたかった……」
気づけば、そんな言葉が口から出ていた。
それと同時に、ゆっくりと浮遊していたシルフィアが地面に着地する。
シルフィアがいない状況で戦うなんてほとんど経験がない。
それに相棒みたいな人がいないなんて、とんでもなく寂しいものだ。できることなら一生そばにいてほしい。
「……私もっ」
「えっと、なんて……?」
「いーのいーの。ほら、ドロップアイテムだよ」
小さい声だったから聞き返しただけなのに……!
何か大切な事を言われたような気がするが、過去に戻るスキルも聴力を強化するスキルもあいにくと持っていない。本当に残念でならない……マジで。
「あんなにデカかった龍の死体、もう消えてるのか……早いな」
その代わりといった感じで宝箱がだいたい人数分あった。
皆が一人ずつ取ることになったので、俺も自分のところに立つ。
「せーので開けるわよ!」
「「「せーの!」」」
目を輝かせたルナイルが合図をかけ、一斉に開ける。
俺の前に現れたのは――
「
そろそろ魔導具とか出てきてもいいと思うんですけどね。なんでスキルばっかり……いやいいんだけどさ!?
「早速使うとするか……」
ゲーミング種を胸にぶち込み、消滅するのを確認する。
「おぉぉ……! アダマンタイト! 盾に使えばもっと強く……いや売って金にしても……!」
「指輪……? 一応獣のワタシにはこんなものいらないと思うんだけど」
二人はこんな感じか。となると、皆はどうだろう——そう思った刹那のことだった。