かつて、永遠の都と謳われた
しかしこの王国は、常に古龍との争いが続いていた歴史でもあった。それを解き明かすには、バッハシュタイン王国の最初の王であるツェーザル・エクムント・ラルフ・ケーニヒスペルガーが、古龍と交渉したとの文献が必要だった。
『百年に一度美しい人間の女を一人捧げれば、王国に攻め入らない』
古龍と王はそう約束をして、百年に一度美しい女性を古龍に届けていたらしい。捧げられた乙女たちは
そんな中、最後の生贄となったのはなんと王家の姫だった。第三王女のヴェンデルガルト・クリスタ・ブリュンヒルト・ケーニヒスペルガーだ。姫は「王家を護る為だけに、民の命を差し出すのはおかしい」と王に進言して、自ら丁度百年目に当たる一六〇〇年に自分が古龍の元に行くと宣言した。王女が十四歳の春だ。
王や臣下たちは反対したが、王女は侍女一人を連れて古龍の元に向かった。
姫は柔らかな長い金の髪に薄い青い瞳。瞳が大きく笑顔は華のように美しい人だったらしい。迎えに来た古龍は、満足したように姫と侍女を連れて消えた。
王家は嘆き悲しんだが、王女は帰って来ない。喰われたのだろうと、半ば諦めていた二年後の秋だ。領土の東の端で、古龍が死んでいるのが発見された。それを見つけたのは、ゲープハルト・ハイノ・フンベルト・アインホルン辺境伯だった。彼は野心家で、爵位を受け継いだ時より王位を狙い協力者を集めていた。古龍がいなくなれば、怖いものは無い。すぐに挙兵をして攻め込まれると微塵も思っていなかった王家を、一年も経たぬ内に滅ぼした。
それから、二百年後。古龍の住処であった場所を探索していた騎士たちが、崩れ落ちた崖の中より人より少し大きな形の光輝く卵の様な石の塊を見つけた。どんなに叩いても壊れぬその卵を、騎士たちはどうしたものかと皇国に連絡した。
『ならば、皇都に運ぶべし』
と連絡を受け、その輝く卵を馬に
帝都にいた様々な人物が、色々なものでその卵を叩き割ろうとしたがそれは叶わなかった。薄く浮かび上がる文字は読めず、長い事念のための見張りを置きその石は埃をかぶる事になった。