やっと見つけた。
あ~良かった……今回はすんなりと見つける事が出来たわ。
心の隅では見つからないかもという気持ちもあったからな~。
最近は本当に運がないし……。
「……っと、いけないいけない」
今は感傷にひたっている場合じゃない。
見失う前に声を掛けないと。
「――すみません。ちょっと待ってください」
アタシは占い師に近づいて声を掛けた。
その声に占い師は足を止め、アタシの方へと振り向いた。
「ん、なんじゃ? ……ああ、マレスで会ったお嬢さんじゃないか」
お、アタシの事を覚えてくれてたんだ。
それは助かった、1から説明しなくても要点だけを言えば良いんだしね。
「そうです! ずっと占い師さんを探していたんですよ」
「わたしを? それはどうしてかのぉ……」
顔はよく見えないけど、困惑した顔をしていそうね。
それもそうか、急にあなたを探していたなんて言われたら、アタシでも困惑しちゃうし。
アタシったら駄目よね……冷静に……落ち付いて……。
「そんなに警戒しないでください。アタシ個人が、もう一度あなたに占ってほしいと思っているだけなんですよ」
「え……占いを……?」
「そうなんです」
「あ~……占いをねぇ……」
あれ? なんだろう、この反応は。
マレスの時は普通に占ってくれたのに。
もしかして、気が向いたら占うタイプなのかしら。
だとすればすごく困るんですけど。
「……すまんが、今は占いが出来んのじゃ」
ええええええええ!
やっぱりそうなの!?
「――っ! あの、どうしても駄目なんですか!?」
とはいえ、こっちも「はい、そうですか」と引き下がれないわ。
何とかして占いをしてもらわないと。
いい方法を考えなければ。
「えと、えと…………おっお金なら前の倍払いますので!」
とっさに思いついたのがお金。
我ながらなんというか、頭が回らないというか知恵ないというか……結局そこなのかってなっちゃうかと、ちょっと情けない。
「いや、お金の問題ではなく占いをしたくても出来ないのじゃ」
占い師が項垂れる。
気分で占いをするかどうかっていう感じでもない……どういう事だろう。
「……それはどういう訳か、教えて貰ってもいいですか?」
「実は、この町へ戻る途中で水晶を落としてしまって……割ってしまったんじゃよ」
そう言って、占い師は懐から割れた水晶の破片らしき物を取り出した。
……落として割ってしまった? 商売道具の水晶を!?
いやいやいやいや、何してるのよ。
そんな大事な物はきちんと取り扱わないといけないでしょうに。
待てよ、占いの方法なんて数多くある。
デュラハンの居場所くらいなら水晶無しでも行けるのではないだろうか。
「え~と……占ってほしいのはシンプルな事なんです、水晶無しでは無理なんでしょうか?」
「ん? ああ、宿屋ならそこの角を……」
「違いますよ!! 今回は物……いや、人物? の居場所を知りたいんです!」
まぁどの道、宿屋の場所も知りたいから後で聞かないといけないけどね。
またお金を取られる気もするけど。
「やはり人探しをしておったか。それじゃと、ますます水晶が無ければ無理じゃな」
くっあの時の自分に言いたい。
素直にデュラハンがいるのはどこですかと聞くようにと。
そうは思っても時間は戻らないからどうしようも……ん? 水晶が無ければ?
「水晶って、あそこの店に置いてあるじゃないですか」
アタシは目についた水晶を売っている店に指をさした。
ここは炭鉱の町だ。
当然、あちらこちらで鉱石を取り扱っている。
だとすれば水晶が無いというのはおかしい。
アタシに対して、占いをしたくない為に嘘をついているのかしら。
「今、手持ちが無いというのであればアタシが立て替えますけど」
立て替えの部分は強く言って強調。
これは買ってあげるのではなく、あくまでも立て替え。
お金は後できっちりと返してもらうんだから。
「失礼な、こう見えても持ち金は十分にある。じゃが……」
占い師が破片を見ている。
なにしているんだろう、この人は。
「……違うな」
何が違うのだろう。
水晶は水晶じゃない。
「この水晶は地脈の力が宿る特殊な物でな、なかなか出回ってないんじゃよ」
まさかのレア水晶。
水晶なら何でもいいわけじゃないのか。
てか、それだと余計に割らないように気を付けなさいよ!
「商売道具じゃから、わたしも探して回っているのじゃが……」
見つかっていないと。
う~ん……これはもう諦めるしかないかな。
ここまで来たのに悔しいな。
「もう歳じゃから、炭鉱の中に入って探すのも辛いしのぉ」
「……えっ?」
今、炭鉱の中に入って探すって言っていたわよね。
という事は、ここで採れるって事?
「その水晶って、ここで採れるんですか!」
「一応はな。じゃが、それも簡単に見つか……」
「わかりました! アタシが炭鉱の中に入って採ってきます!」
ここまで来たら、もうとことんやってやろうじゃない。
「じゃが、今の炭鉱内にロックワームも……」
「大丈夫です! アタシに任せて下さい!」
ロックワームくらいならアタシの敵じゃないわ。
10匹でも20匹でも相手をしてあげる。
「……そこまで言うのなら……この先にある、6番と書かれた入り口から炭鉱内に入りなさい。あるとすればその奥じゃ」
「6番ですね」
「あと、炭鉱内は暗いからタイマツかランプを持って行くようにな。それと、この破片も持って行きなさい」
占い師は手に持っていた水晶の破片をアタシに手渡して来た。
なんで、この破片を持って行かないといけないんだろう。
「あの、どうしてこの破片を?」
「同じ性質の物が近くにあるとお互い光るのじゃよ。原理はわからんがの」
あ~それでさっき破片を見ていたのか。
で、光らなかったから違うと言っていたわけね。
「なるほど、わかりました。ありがとうございます! じゃあ行ってきますね!」
アタシは炭鉱へとすぐさま向かった。
「……あのお嬢さん、本当に大丈夫なんかのぉ……何か心配じゃ」