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アースの書~遭遇・3~

 ラティアはついて来てくれる事になったがエイラはどうするんだろう。


『エイラはどうするんだ?』


「ん? もちろんあ~しもついて行くよ~」


 エイラも一緒に来てくれるのか。

 だと3人旅になるな。

 にしても、また旅に出る事になるとは思いもしなかった。


「えッ! エイラもくるノ!?」


 あれ、何故かラティアが驚いている。

 そんなにエイラがついてくるのが意外だったのかな。


「そりゃ~そうよ。あ~しが傍に居ないとラティの魔力が尽きちゃうじゃない」


「あウ……そうだっタ……」


 ああ、そういえばエイラの魔力をラティアに流していたんだっけ。

 という事はエイラが来てくれないと、俺は動けなくなってしまうところだったのか。

 あー良かった……来てくれる事になって。


(うウ……せっかくアース様とラブラブな2人旅が出来ると思ったのニ……)


 何やらラティアがブツブツと小声で言っているがよく聞こえない。

 さっきの驚きといい、エイラが一緒なのは嫌なのかな。

 でも、エイラには一緒に来てもらわないと困るし……。


『えと……ラティアには申し訳ないんだけど……エイラが一緒に行くのを許してくれないか? 旅をするうえでどうしてもラティアとエイラの力が必要なんだ! 俺一人じゃ無理なんだ、頼む!』


 とは言っても、俺に出来る事は頭を下げて頼むしかない。

 術で生き返ったとはいえ、俺一人では何もできないのが悔しい。


「え? あっ! アース様、頭をあげて下さイ! エイラと一緒なのは全然問題無いでス!」


『それならいいんだが……』


 本当に問題が無いのだろうか。

 旅の途中でいざこざとかはやめてほしい。


「たダ……ちょっと心を落ち着かせる時間を下さイ」


『あ、ああ、わかった……』


 そう言ってラティアは俯いてしまった。

 この姿を見ると不安でしかないぞ。


「気にしないで、嬉しい時に悲しい事が起きるとショックが大きすぎて気分が沈んぢゃうでしょ? だから今はそっとしてあげて。大丈夫、ラティとあ~しはちょ~仲良しだから!」


 エイラが笑顔で俺の肩を叩いた。

 このラティアを見てちょー仲良しだからと言われましても……。

 んー不安は拭いきれないが、だからといって立ち止まっているわけにもいかない。

 よし、問題が起きた時は起きた時にまた考えよう、そうしよう。


『その言葉を信じるよ……。じゃあ、神殿の周辺にレインや人が居ないかを確認して移動を……あっ』


 いや、それは出来ない。

 なんでこの事に今まで気が付かなかったかな。

 ラティアとエイラ問題よりこっちの方が深刻じゃないか。


「どったの? 出発しないの?」


『したいのは山々なんだが、ラティアとエイラは目立ちすぎる。これだとすぐにレインに見つかってしまうぞ』


 俺は何か武器を持てば傭兵か騎士に見られるだろうが、この二人はそうもいかない。

 ラティアは前髪が目の所までかかって薄紫色という髪型が特徴的すぎる。

 そしてエイラに至っては全身が特徴の塊だ。

 まぁラティアはフード付きマントを羽織って、人前でフードを取らない様に気を付ければいいとは思うが……エイラは羽と尻尾が邪魔でどう考えてもはみ出るよな。

 これは困った。


「あ~そっか。なら、あ~しは人から見えない様に不可視魔法を自分にかけるよ」


『そんな魔法が使えるのか?』


 それなら実にありがたい。

 見えなくなる方が一番安心できるからな。


「あ~しをなめないでほしいな~。ほいっと……どう?」


 エイラの体が一瞬光ると俺の目の前から姿が消えた。

 声はするが確かに見えない。


『おお! すごいな』


 ラティアにもその魔法をかければこの問題は解決だな。

 なんだ、悩んで損をした。


「ただ、これは自分自身にしか使えないのと、不可視を維持の為に魔力を使うから他に魔法を使うなら解かないといけないけどね」


 エイラが魔法を解いて姿を現した。

 なんだ……自分自身にしかかけられないのか。

 まぁ大問題のエイラが解決しただけでも良しとするか。


『となると、ラティアをどうするかだな』


 やはりフード付きマントを羽織ってもらうしかないか。

 どこかで調達しないといけないな。


「それならあ~しに任せて。ラティちょっとこっちを向いて」


「へッ? 何々?」


 エイラがラティアの顔を自分の方に向けて何やらいじり出した。


「ここをこうして……後は~髪を三つ編みにすれば可愛いかな」


 そう言って今度はラティアの髪を集めて編みだした。

 三つ編みにすれば印象が変わるかもしれないが、普通にラティアとバレてしまうと思うんだが……。


「……よしっと。はい、出来上がり~」


 エイラがラティアの顔をこっちに向けた。


『……え?』


 ラティアは薄紫色の髪は三つ編みで左横にまとめていて、前髪はセンター分けがされている。

 それにより、今まで見えていなかった目元部分がよく見える様になっていた。

 ラティアの目はぱっちりとしていて、右が緑色、左が金色のオッドアイだった。


「ラティって普段は前髪で顔が見えないからね。こうやって前髪を左右にわけるだけで別人でしょ?」


『確かに……』


 前髪で隠れていた部分が見えるだけで、こんなにも印象が変わるとは。

 エイラもよくこんな事を思いついたな。


「え? え? 前髪が……はわ……はわわわ……イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


『っ!? ど、どうしたんだ?』


 ラティアがいきなり大声を上げ両手で顔を覆った。

 何が起こったんだ。


「無理でス! 自分の顔を人前に出すのは無理なんでス!! うわああああああああん!」


 今度は泣き出した。

 うーん、理由はわからないが自分の顔を見られたくないから前髪を長くして隠していたみたいだな。

 ここまで嫌がるなんてよっぽどの事があったんだろうな。



「ぐズ……ずズ……」


 少し時間をおいて様子を見ていたが、そろそろ落ち着いたかな。


『えーと……ちょっとは落ち着いたか?』


「……はい、すみませン……」


「ラティが謝る事じゃないよ。あ~しがラティの嫌がる事をしちゃったんだし、ごめんね」


「ううン……」


 うーん、前髪を変えるだけで別人みたいになるのは良かったんだがな。

 だが本人が嫌がっている以上このやり方は駄目だな。

 無理強いはさせられない。


『別の方法を考えるしかないな』


「そうだね……ん~見せるのが嫌なのなら逆に隠しちゃえば…………あっそうだ!」


 エイラが俺を見て何か閃いた様子。

 頼むからまともな思いつきであってくれよ……。

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