「グォーラの植物は増殖型だ。いくら処理しても埒が明かない。このまま
「植物なのに核があるの?」
「悪魔の姿は多種多様だ。あれは使い魔みたいなものだからな。どこかに核を隠してるはずだ」
使い魔も悪魔の一種に当たる。
早いところ見つけて、対処する必要がありそうだ。
「ここら一帯は僕とビベレで何とかする。お前はプーパを連れて核を探しにいけ」
「逆の方がいいと思うけど」
悪魔の生態については、私よりレインの方がずっと詳しいはずだ。
そんな重要な役目を、私に任せていいのだろうか。
「悪魔に
「分かった。やってみる」
どうやら、悪魔同士で核を破壊するのは不可能らしい。
「いこうプーパ」
「きやすくよぶなむすめ! ぷーぱさまとよべ!」
「いくよ、プーパ」
「ぐぬぬ……!」
不服そうな顔でプーパが寄ってきた。
歩幅が小さいため、プーパの速度に合わせて移動するのは危険だろう。
腕を差し出すと、プーパは当然だと言わんばかりの態度で肩までよじ登ってくる。
「
結構な無茶振りだが、レインに心配する様子は見られない。
「もし、何とかならなかったら?」
私の返事に眉を顰めたレインは、不可解な表情で口を開いた。
「お前ならできるだろ」
変な悪魔だ。
私のことが気に入らないと言いながら、ここぞという時には信用してくるのだから。
「どうしても無理なら、退路くらいは開いてやる。尻尾を巻いて逃げてくるといい」
「やっぱり、たとえ方が可愛いね」
「……お前は全く可愛くないけどな」
苛ついた雰囲気でレインが睨んでくる。
迫ってくる蔦を、ビベレが一気に呑み込んだ。
私たちを囲うようにとぐろを巻いたビベレは、要塞の如く硬い鱗を光らせている。
「退路は必要ないよ。何とかしてくるから」
「はっ。最初からそう言え」
レインの視線が外れていく。
それぞれが、対処すべき方向を見ていた。
「今から深部までの道を開く。閉じる前に行けよ」
プーパを肩に乗せたまま、
『停止しろ』
レインの声で、蔦が一斉に動きを止めた。
その隙を見逃さず、ビベレが奥に向かって一気に蔦を呑み込んでいく。
ビベレの体に合わせて、大きく道が開けた。
道が閉じる前に、真っ直ぐ中を駆けていく。
レインの元に引き返すビベレとすれ違いながら、私は蔦の奥地へと足を踏み入れていった。
◆ ◆ ◆ ◇
本来なら遭遇した時点で詰みだ。
位の高い悪魔であれば無理矢理切り開くことも可能だが、グォーラの不興を買うことになる。
いくら好戦的な悪魔でも、あえて暗黒将を怒らせることはしないだろう。
──まさか、グォーラにまで喧嘩を売るはめになるとはな。
つくづく損な役回りだ。
再び動き始めた蔦を見て、レインの唇が
「なあビベレ。憂さ晴らしをするには、ちょうど良い玩具だと思わないか?」
「レイン様のおっしゃる通りです!」
ビベレの返事に、レインの笑みが深まった。
可愛いものには二種類ある。
有益なものか、無益なものかだ。
有益な可愛さは、レインを癒し満足させてくれる。
しかし、無益な可愛さは──いつだってレインを加虐衝動に走らせた。
自分よりも劣っている、可哀想で可愛らしい存在。
初めて会った時の睦月も、まさにそんな存在だった。
「どうせ恨まれるなら、楽しまないと損だろ」
うごめく蔦を見ながら、レインは