「俺……今日が命日になんのかな」
「あはは、何言ってんの。もうとっくに死んでるでしょ」
「威吹くん、大丈夫?」
「むつきさぁん……」
暗い顔の威吹に声をかけると、まるで子犬のような目で見つめられた。
縋るような視線と、少し潤んだ瞳。
頭の中で何かのメロディーが流れていく。
うーん、どうしたものか。
なぜ威吹がここまで落ち込んでいるのか、そもそも理由が分からないのだ。
原因が分からなければ、どうしようもない。
「死局内の情報は、死局に勤める死神か、そこに出入りする本職の死神しか知り得ないんだ。もしそれ以外の死神が知れば、場合によっては相応の刑に処されることもある」
私の様子を見て、霜月が理由を教えてくれる。
淡々と語られる言葉とは裏腹に、内容はけっこう重めだ。
「今の話しで、何か聞いちゃいけない事でもあったの?」
「特別警備課は極秘事項も多く、他の課より規律が厳しいんです。外部の死神にも所属を明かす事はできますが、自分がどこの部隊で、どんな立場にいるかは伏せておく必要があります」
霜月と美火の話を統合してみると、
しかし、隊長という立場を明かしたことで、規律に反した情報を威吹に与えてしまった──という事だろうか。
話を聞くごとに、威吹の表情が絶望感を帯びていく。
「ここに威吹くんを呼んだのは上司だし、偶然居合わせたってことでどうにかならないのかな」
「むつきさぁん」
「馴れ馴れしいです」
感激した様子で私を見た威吹だったが、美火の言葉によってしょぼしょぼと
「そんな心配しなくても大丈夫だって。ちゃんと対策も考えてあるんだからさ」
「対策……?」
訳が分からず明鷹の方を見る威吹に、明鷹は含みのある笑顔を向けた。
「まさか、君がいることに僕が気づいてなかったとでも? そんな訳ないでしょ〜。分かった上で話してんの」
一瞬で張り詰めた空気。
明鷹の顔は笑っているが、目はちっとも笑っていない。
「聞いちゃったからには、君は罰を受けることになるよ。もちろん、それを聞かせてしまった僕も同罪だ。あ、もしこのまま
明るい声とは裏腹に、とんでもなく重い話をされている。
要約すると、このままでは二人とも何かしらの刑に処されてしまう。
そして、今のままでは死局を出ることも叶わない……と。
すごい、ほとんど
「ただし、これを解決方法が一つだけある。それは──君が
類は友を呼ぶとはこのことか。
明鷹がここに来たのは、偶然などではなかった。
上司が威吹を拾ってこいと言ったわけも、部屋にやって来て早々、明鷹が一方的に話し始めた訳も。
全てはこのためだったのだ。
「それってつまり……どう言うことですかね?」
この場合、鳩じゃなくて鷹だけど。
「えーっと……だからね、君をスカウトしてるんだけど」
「え!? 俺をですか!?」
「いや、この状況で他に誰がいるのさ!?」
食い気味で返した明鷹の様子に、威吹も段々と実感が湧いてきたらしい。
美火の顔には、こいつ馬鹿なのか?という文字がデカデカと浮かんでいる。
「いや俺、店やってて。本職になるつもりもなかったし、いきなり死局に入るなんて……」
「お店はそのままでいいよ。本職と違って、死局勤めは死界から出ることもほとんどないからね。そこら辺の融通は利くようになってる」
「えっ、いやでも……」
戸惑う威吹に対し、明鷹は余裕の表情で返事を待っている。
まあそうだろう。
だって結末は、もう決まりきっているのだから。
「威吹くん、諦めた方がいいよ」
この話に、最初から拒否権なんてものは存在していなかったのだ。
「睦月さん!?」
「お、察しがいいね。助かるよ睦月ちゃん〜」
そんな!と言わんばかりの
大方、時間が短縮できそうでラッキーとか思っているのだろう。
「頭の回転もだけど、ポーカーフェイスなところとか、
「あげませんよ」