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ep.18 特別警備課


「特別警備課?」


「そ。警備課の中でも、精鋭が集まった課のことだよ」


 それはつまり、精鋭部隊専用の課、みたいな認識で良いのだろうか。


「他の課と違って、警備課は現場に行く人員を、明確に分けないといけないからね。特別警備課は、その中でも難易度の高い任務を受け持ってるんだ」


「へえ」


「あれ。あんまし興味持ってもらえてない?」


 おかしいなぁと言わんばかりの顔でこちらを見る明鷹あきたかに、そうは言われてもなぁの気持ちを込めて見返す。

 私の顔をじっと見ていた明鷹だが、突然「いや、分かんな!」と叫ぶと、呆気に取られた様子でこちらを見てくる。


「君、ほんとに表情変わらないね!? 僕がここまで読めないなんて相当だよ」


「睦月、気にしなくていい。こいつの見る目がないだけだ」


「それについては宇宙レベルで同意します」


 宇宙レベルの同意ってなんだろう。

 あれかな。

 無限レベル、的な。


「酷いよ二人とも〜。これでも僕、特別警備課の隊長だよ? 新人の表情くらい、簡単に読み取れると思ってたんだけどなぁ」


「隊長なんですね」


「あ、少しは興味持ってくれた?」


 私を見て微笑む明鷹の顔には、「面白いことが大好き」と書いてある。

 助けてくれた恩もあるし、性格自体は悪くなさそうなのだが、何だろうこの……あまり関わりたくない感じ。


 隊長と言うだけあって優秀なのだろうが、私は今までの経験から、「優秀な死神はくせが強い」というジンクスを持っているのだ。


「そういえば名前、睦月ちゃんって言うんだね。良い名前でうらやましいよ。死界だと、月がつく名前は限られてるからさぁ」


 一瞬でぴりりとした空気が部屋に漂う。


死界ここでその発言は、リスクをともないます。をわきまえてください」


 美火の話し方が、いつもより硬度を増している。

 それほど、今の発言は良くないものだったらしい。


「そう怒らないでよ美火ちゃん。僕だって、何も考えず言ったわけじゃないよ。確かにここは死界だけど、この場所は常闇の空間エリアでもある。そうだろ?」


「……」


 明鷹の方をにらんでいた美火だったが、徐々に落ち着きを取り戻していく。


「いくら上司の空間エリアとは言え、言葉には気をつけてください」


「分かったよ。次から気をつけます」


 だから今回は許して〜!と手を合わせた明鷹は、私の方を向くと、同じように手を合わせてきた。




 ◆ ◆ ◇ ◇




 死局の最深部には、王や幹部が話し合うための部屋が存在している。

 中では、円卓を囲うように幹部たちが腰掛けていた。


「また遅刻か、常闇」


「王に対する無礼の数々、そろそろ堪忍袋かんにんぶくろの緒も切れそうじゃ」


 騎士に似た格好の女性は、ローブをマントのように羽織っている。

 寄せられた眉と組まれた腕が、女性の不機嫌さを露骨に表していた。


 隣に座る少女もまた、しかめっ面を隠そうともしていない。

 扇子で隠された口元と、着物にしては派手すぎる装いは、少女の趣味を大いにさらけ出していた。


「前にも言いましたが、私は仮の幹部ですよ。必ずしも従う必要はないはずです」


 全く表情を変えず、飄々ひょうひょうとした態度を崩さない常闇に、二人の顔が険しくなっていく。


「静粛に。もうすぐ王が来られます」


 秘書のような死神の一声に、二人は渋々といった態度で黙り込んでいる。

 冷ややかな眼差しで常闇の方を一瞥いちべつした死神は、先ほど常闇の空間エリアを訪れた女性だった。


 常闇が席に着くと、空いた椅子がよく目立つ。

 他と比べて立派な作りをした椅子は、上座と呼ばれる場所に置かれている。


 もはや、この場所に誰が座るかは一目瞭然だった。




 ◆ ◇ ◆ ◇




 明鷹の発音


 あ→き→た→か



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