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ep.17 二度目まして


 部屋に戻ると、美火びびが出迎えてくれた。

 中に上司の姿はなく、まだ戻って来ていないようだ。


「お茶を用意するので、先に座っててください」


「ありがとう」


 美火のお茶はとても美味しい。

 わくわくした気持ちで席に着くと、すかさず隣に霜月が腰掛けてくる。


 お茶菓子をつまみながら、警備課でのことや、それぞれの近況を話し合う。

 警備課については当時の出来事を話しただけだが、美火は何を話したのか気になるようだった。


 それならと口を開きかけるも、威吹が必死の形相で見てくるので、内容はさっくりとにごしておいてあげた。

 気になる子の好感度を下げたくないのだろう。

 死神にも、青春ってやつはあるみたいだ。


「そういえば、ナツメグはどこに行ったの?」


「情報収集のため、死局を渡り歩いてます」


 情報管理課には、直接おもむかずとも、情報を手に入れる手段が多くあると聞いていた。

 ミントもあまり管理課から出ないと言っていたが、ナツメグの場合、動くことで利になる理由があるのかもしれない。


「ナツメグは相手の考えを読み取れるので、死局内での情報収集に向いてるんです」


「それって、心の内が読めるってこと?」


「そうです。ただし、誰にでも無差別にというわけではありません。ナツメグが睦月さんの心を勝手に読むことはないので、そこは安心してください」


 見た目に反して、中身が騒がしい自覚があるだけに、ナツメグを驚かせるような事態にならなくて良かった。

 まあとにかく、ナツメグには心を読み取れる能力があるらしい。


 情報管理課に所属している死神は、能力も適した者が多いと聞いていたが、ナツメグの能力を知ればそれも納得だ。

 精神系統の能力は、情報収集にかなり向いていると思う。


「あのー……。それって、俺が聞いたらまずい情報なんじゃ……?」


 恐る恐る手を挙げた威吹に、周りの視線が集まっていく。


「漏らさなければいいことです」


「念のため言っておくけど、俺は本職でもなければ、死局勤めでもないからね……!? 内部の情報って、そんな簡単に聞いていいもんじゃ──」


「おっ邪魔〜!」


 軽快な挨拶と共に、男が部屋に入ってきた。

 高い身長と、響きのいい声。

 身に纏う服は、現世でいう軍服のような作りに似ている。


「あれ、常闇はまだ戻って来てないの?」


 キョロキョロと辺りを見渡していた男は、私に目を留めると、驚いた様子で話しかけてきた。


「君、あの時のお嬢ちゃんだよね?」


「はい。その節はお世話になりました」


「いやいや、大したことはしてないよ。それにしても災難だったねぇ」


 男は私に手を伸ばすと、ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜるように撫でてくる。

 乱れていく髪を見て、不機嫌そうな美火が口を開こうとしたが、それよりも早く頭上の手が払われた。


「気安く触るな」


「へえ〜。もしかして霜月、嫉妬してるの?」


 にやにやと笑みを浮かべる死神に、霜月の目が冷たさを増していく。

 それさえも楽しそうに受け止めた死神は、再び視線を私の方へと向けた。


「気安く見ないでください」


「えっ、美火ちゃんまで?」


 距離を離すため、間に立ち塞がった美火を見て、男は驚いた声を上げている。


「この二人がここまでねぇ。もしかして君──」


 男の身長が高すぎて、視線をさえぎることまではできないようだ。

 背の高さで言えば上司も同じくらいあるのだが、何故かこの男に見下ろされるのはあまりいい気がしなかった。


「席は空いてるので、座ったらどうですか?」


「え? ああ、うん。そうさせてもらおうかな」


 私の言葉に拍子抜けしたのか、男は大人しく椅子に腰掛けている。


「あ、そう言えば自己紹介がまだだったよね」


 警戒体制の霜月と美火が私を挟み座る中、男は気さくな態度で話しかけてきた。


「二度目まして。僕は明鷹あきたか。所属は特別警備課だよ」



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