部屋に戻ると、
中に上司の姿はなく、まだ戻って来ていないようだ。
「お茶を用意するので、先に座っててください」
「ありがとう」
美火のお茶はとても美味しい。
わくわくした気持ちで席に着くと、すかさず隣に霜月が腰掛けてくる。
お茶菓子を
警備課については当時の出来事を話しただけだが、美火は何を話したのか気になるようだった。
それならと口を開きかけるも、威吹が必死の形相で見てくるので、内容はさっくりと
気になる子の好感度を下げたくないのだろう。
死神にも、青春ってやつはあるみたいだ。
「そういえば、ナツメグはどこに行ったの?」
「情報収集のため、死局を渡り歩いてます」
情報管理課には、直接
ミントもあまり管理課から出ないと言っていたが、ナツメグの場合、動くことで利になる理由があるのかもしれない。
「ナツメグは相手の考えを読み取れるので、死局内での情報収集に向いてるんです」
「それって、心の内が読めるってこと?」
「そうです。ただし、誰にでも無差別にというわけではありません。ナツメグが睦月さんの心を勝手に読むことはないので、そこは安心してください」
見た目に反して、中身が騒がしい自覚があるだけに、ナツメグを驚かせるような事態にならなくて良かった。
まあとにかく、ナツメグには心を読み取れる能力があるらしい。
情報管理課に所属している死神は、能力も適した者が多いと聞いていたが、ナツメグの能力を知ればそれも納得だ。
精神系統の能力は、情報収集にかなり向いていると思う。
「あのー……。それって、俺が聞いたらまずい情報なんじゃ……?」
恐る恐る手を挙げた威吹に、周りの視線が集まっていく。
「漏らさなければいいことです」
「念のため言っておくけど、俺は本職でもなければ、死局勤めでもないからね……!? 内部の情報って、そんな簡単に聞いていいもんじゃ──」
「おっ邪魔〜!」
軽快な挨拶と共に、男が部屋に入ってきた。
高い身長と、響きのいい声。
身に纏う服は、現世でいう軍服のような作りに似ている。
「あれ、常闇はまだ戻って来てないの?」
キョロキョロと辺りを見渡していた男は、私に目を留めると、驚いた様子で話しかけてきた。
「君、あの時のお嬢ちゃんだよね?」
「はい。その節はお世話になりました」
「いやいや、大したことはしてないよ。それにしても災難だったねぇ」
男は私に手を伸ばすと、ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜるように撫でてくる。
乱れていく髪を見て、不機嫌そうな美火が口を開こうとしたが、それよりも早く頭上の手が払われた。
「気安く触るな」
「へえ〜。もしかして霜月、嫉妬してるの?」
にやにやと笑みを浮かべる死神に、霜月の目が冷たさを増していく。
それさえも楽しそうに受け止めた死神は、再び視線を私の方へと向けた。
「気安く見ないでください」
「えっ、美火ちゃんまで?」
距離を離すため、間に立ち塞がった美火を見て、男は驚いた声を上げている。
「この二人がここまでねぇ。もしかして君──」
男の身長が高すぎて、視線を
背の高さで言えば上司も同じくらいあるのだが、何故かこの男に見下ろされるのはあまりいい気がしなかった。
「席は空いてるので、座ったらどうですか?」
「え? ああ、うん。そうさせてもらおうかな」
私の言葉に拍子抜けしたのか、男は大人しく椅子に腰掛けている。
「あ、そう言えば自己紹介がまだだったよね」
警戒体制の霜月と美火が私を挟み座る中、男は気さくな態度で話しかけてきた。
「二度目まして。僕は