「今回のこと、本当にごめんなさい」
テーブルを挟んだ向かい。
申し訳なさそうに
あの後、連絡を受け帰宅した律が、やっとのことで勝利し息も絶え絶えな時雨の首根っこを引っ掴み、そのまま私たちの元まで訪ねてきた。
時雨はまるで
とにかく中で話そうと部屋にあげ、私と霜月も席に着いたところで今に至るのだが──。
「時雨くんも反省してるみたいですし、私ももう気にしてないですから」
何なら仕返しもきっちりしておいた。
今にも砂になって消えそうな時雨を見る限り、効果は
「気持ちはありがたいけど、そうもいかないわ」
「他にも問題があるんですか?」
残念そうに首を振る律に、理由を問いかける。
当人同士の
「あたしたちの上司はともかく、睦月ちゃんたちの上司が納得するとは思えないのよ」
「私たちの上司、ですか?」
美火が威吹をまる
今回は霜月もいたし、そこまで問題視しているとも思えないのだが。
それに、何故ここでお互いの上司が出てくるのかも分からない。
「本職の死神にはそれぞれ上司がついてるんだ。部下同士で争いが起こった場合、正式に
混乱する私の様子を見て、霜月が助け舟を出してくれた。
相変わらず頼りになるパートナーだ。
「このまま事を収めるには、お互いの上司の許可が必須なの。けれど、今回のことは完全にこちらの
上司の許可か。
確かに、部下同士で問題が起きれば、後から責任を問われるのは上司になる。
「律さんたちの上司は許可してくれたんですか?」
「そうねぇ。向こうの判断に任せると言ってたわ」
「あいつと連絡がついたのか!?」
急に声を上げた時雨は、さっきまでの様子から一変、律の方に身を乗り出している。
「ちょっと時雨。あんたいい加減しなさいよ」
「……悪い」
律に
そんな時雨の様子に、律が小さくため息をついた。
「ごめんなさいね。あたしたちの上司、
放浪癖のある死神。
色んな意味でパワーワードすぎる。
律たちの様子を見る限り、これまでも色々と苦労があったのだろう。
「とりあえず、律さんたちの上司は任せるって言ったんですよね。それなら後は──」
霜月の方に視線を向ける。
「睦月はどうしたい?」
「私?」
予想外の言葉に、目を
今必要なのは上司の意思だ。
私の意思を問うことと、何か関係があるのだろうか。
真剣な様子で見守っていた律も、少し
「うん。睦月がどうしたいかを教えてほしい」
「私は……許してあげてほしいかな。時雨くんも充分反省してると思うし」
驚いた顔で目を見開く時雨に、「そうだよね?」と圧をかけておく。
時雨は一瞬硬直したあと、壊れた人形のようにぶんぶんと頭を何度も振った。