目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報
第12話 最終決戦!!

 階段を下りていくと、そこには巨大な地下室が広がっていた。


 コンクリートで囲まれた大きな空間に、たくさんの機会が羅列している。

 その機会たちから放たれる、様々な色の光がチカチカと点滅し、どこか異様な光景のように思えた。

 機械音とカタカタという音だけが響いており、どこか不気味な感じが漂っている。


 ここが工場の中だということを忘れてしまう。


 一階の様子とは異なり、ちゃんと整備された最新の機械が所狭しと並んでいる。

 機械といっても、工場で使うものではなく、研究所で使うもののように見えた。


 アニメでよく見る研究所って感じだな、と俺は感心し、それらに目を奪われていた。

 先ほどから、桐生の目がキラキラと輝いているのが、何よりの証拠だ。


「すごいよ、これ。大きな研究施設みたい」


 様々な機械が、いつくもの列を造り整列している。

 いったいこれだけの施設を作るのに、どれだけの金額をかけたのだろうか。


 実験道具もあちこちに放置され、すべてが高価そうな代物しろものだった。



 俺達は機械の影に隠れながら、ゆっくりと進んでいく。


 視線の先に川野を捉えた。

 川野は誰かと話している。その人物を見た俺は、衝撃で目が大きく開いた。


「あいつ……」

「確か、カフェのマスター、だよね?」


 川野と話しているのは、沙羅の勤め先のカフェのマスターだった。


 あの時の違和感はこれだったのか。


 沙羅のことを話すとき、何かひっかかるものを感じていた。

 今さらながら、俺の鈍感ぶりに嫌気がさす。


 どうもあのカフェのマスターは、この組織のリーダーのようだ。

 先ほどから周りの者たちに支持を出している。


 川野をそそのかしたのも、多分あいつだろう。


 俺達は、二人の会話に耳を澄ませた。




「もうすぐ、完成だ」


 マスターが嬉しそうに微笑むと、川野が興奮した様子で語りかける。


「やりましたね、山本さん。これでやっと新時代が始まります」


 マスターは、山本というらしい。


「ああ、まずは手始めに地下鉄を狙ってみるか」

「いいですね、ははっ、今から皆がパニックになって逃げ惑う姿が浮かびますよ」


 恐ろしい言葉が飛び交っている。

 川野たちはこれから、大規模なテロを起こそうと計画しているようだった。

 人探しから、とんでもないことに巻き込まれてしまった。


 いったい、しがない探偵にどうしろというんだ。

 とにかく今は、一刻も早く沙羅を見つけ出すことが先決だ。


「はじめちゃんが何かに反応したよ!」


 桐生は突然声を上げた。

 どうやら、何かを感じ取ったはじめが、動き出したようだ。


 はじめのあとを桐生が追いかけていく。


「お、おい。気を付けろよ。気づかれないように慎重にな」


 俺達は、はじめと桐生の後ろに続いた。


「あっち」


 はじめの指差す方を見ると、そこには女性がいた。

 沙羅だ!

 手足を縄で拘束され、口をガムテープで塞がれている。


 川野たちからは遠く、機械などが邪魔をしていて目に入らない位置だ。


 俺は物音を立てないように、慎重に沙羅へと近づいていく。


 俺の存在に気づいた沙羅は驚き、逃げようと藻掻もがいた。

 しかし、俺が人差し指を口に当てウインクすると、彼女はいぶかしげに俺を見つめ、その動きが止まった。


「あなたを助けにきました。黒猫に宝石をつけて助けを求めたのも、メモにメッセージを残してこの場所を知らせたのも、あなたですよね?」


 彼女ははっとして俺を見つめる。そして涙目になった。

 俺は彼女の口のガムテープをがして、手足の縄を解いた。


「あなたは……」


 彼女が不思議そうな顔で見つめる。


「ただのしがない探偵ですよ」


 俺が微笑んだそのとき、


「おい! 何してる!」


 振り向くと、男がこちらを険しい顔で見つめている。


 しまった、見つかった! どうする。


 そのとき、何かが爆発する音が響き渡る。

 煙が辺り一面にモクモクと立ち込めていった。


 なんだ、何が起きた?


 煙の中をかき分け、すぐ近くにやってきた桐生がそっと俺に声をかけてきた。


「輪島くん、こうなったらやるしかないよ! 俺が煙幕えんまくで加勢するから。

 リリーは只今戦闘中! 佐々木くんもやる気だよっ。

 僕とはじめちゃんは、ここで沙羅さんを守るよ」


 こんなときに、ニコッと笑いかけてくる桐生。


 な、なんだか、こいつが頼りになる奴に見えるのは気のせいか。

 俺は目を擦りながら桐生を見つめる。


 いつもより凛々しい表情の桐生が、そこにはいた。


 何で、こんなにこいつらはやる気なんだ?

 俺は混乱しながらも、冷静さを保とうと努力した。


 まあ、こうなったらこいつらの作戦にのるしかない。


 俺は覚悟を決めた。


「わかった、沙羅さんを頼むぞ!」


 俺が立ち上がると、桐生がゴーグルを差し出した。


「これ、煙幕の中でも人を感知できるんだ。つけてって」

「サンキュ」


 俺はもう桐生のことを信頼していた。なんの疑いもなく、それを受け取る。


 ゴーグルを装着した俺は、勢いよく煙の中へと突入していった。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?