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[魔法のセンターアイドル★ミラクルエイミ アラサー干物女の元伝説アイドルが若返って再びアイドルユニットのトップへ!
[魔法のセンターアイドル★ミラクルエイミ アラサー干物女の元伝説アイドルが若返って再びアイドルユニットのトップへ!
ゆーたん(たけのこ派)
現実世界仕事・職場
2024年12月22日
公開日
4.2万字
連載中
ブラック企業に勤めるアラサー干物女栗間詠美(くりまえいみ)、実は彼女は20年前に活躍した伝説の魔法アイドルミラクルエイミの成れの果てである。

そんな彼女の前に現れた二匹のマスコット、マスコット達は今の子供に魔法の力を与えると言っても、誰一人として候補にならないので、元経験者の元にやって来た。

彼女は、魔法の力で再び、夢と希望を失った人達に幸せと元気を与える為、二代目魔法アイドルミラクルエイミとして再スタートした!

Stage1 伝説の引退コンサート★

「みんなぁー、ありがとうー! さようならあぁぁー」

「「「「「エイミィィー!!!!」」」」」


 そして巨大飛行船で降りしきる豪雨の中、光の中に消えていくミラクルエイミ、この引退コンサートの後……彼女は人々の前から完全に姿を消した。


 伝説のミラクルエイミ引退コンサート、再生数……2億7000万。

 著作者、オリンポスプロダクション公式チャンネル。


 これは今でも語り継がれている伝説のアイドル、ミラクルエイミの引退コンサート動画。


 アタシはその動画をパソコンの動画サイトで見ながら、コンビニで買った少し冷めたエビグラタンを食べ、ストロングチューハイを口に流し込んだ。


「あーあ、この時にアタシがもっと色々と知っていればなぁー、大金持ちになれたのにぃ」


 勿体ない事をしたと思ってる。

 何故なら、この動画に映っているのはアタシの事だから。


 アタシの名前は栗間くりま詠美えいみ、今は亀山運送ってブラック企業で働くOL。

 でも本当は伝説のアイドルミラクルエイミなのよね。


 アイドル引退後、一度は教師に憧れて勉強し、教員免許を取ったものの、赴任先の学校で問題児生徒A子B子C子の三バカ娘達のせいで責任を取って辞めさせられてしまった。

 あーあ、あのまま公務員続けれてたら金の事なんて考える必要なんてなかったのに……。


 あーあ、魔法の力かぁ、もうアタシには魔法なんてないもんな、夢も希望も持ってかれちゃったアタシにはなーんにも残ってない。


 実はアタシは昔、ヒカリとヤミという人の言葉を話す猫の姿をした魔法界の住人から魔法の力を与えられ、人々の夢と希望の力を集める為に魔法のアイドル★ミラクルエイミとして活躍していた。

 そして最後は消滅寸前の魔法界を助ける為に、今まで集めた夢と希望の力を全て注ぎ込み、奇跡を起こして魔法界を助けた。


 アタシが魔法のアイドルとして活躍していたのは20年前、実はアタシは魔法の力で当時8歳だったのを18歳の姿に変身して(でも事務所は17歳って事にしていた)クレープの買い食いをしていた時に町でスカウトされ、アイドルデビューをしたのよね。

 ミラクルエイミの姿で人助けをするはずが、なぜかアイドルになってしまったので、それならこの姿で人々の夢と希望の力を集めればいいとヒカリとヤミに言われてアイドル活動を始めたんだっけ。


 そういえば、今考えるとあの時の若社長さん、イケメンだったよなー、あのまま付き合えてたらもっと人生楽できてたかもしれないのに、勿体ない、あー勿体ない。


 そうそう、ミラクルエイミの考察は色々と今でもサイトで検証されているけど、一番の説は表に出てこられないはずの大金持ちのお嬢様で、飛行船や魔法に見える演出は、当時の日本企業が最新のサイバーキネティックをアピールする為に試作的に様々な演出を行ったという説が重要視されている。


 そりゃあ誰もアレが本当の魔法だったなんて信じられないわよね。

 もしアタシが本人じゃなかったら、やはりアレは大金をかけて作られた壮大な仕掛けの数々だと思うもの。

 誰もいない遊園地でいきなり観覧車のゴンドラやメリーゴーランドの機械が動き出す演出とか、今考えたら大金持ちの娘が父親に言って遊園地の機械を無人の間に動かしたと考えるのが一番一般的な考えだなぁー。


「あーあ、アタシってどうしてこんなに夢も希望も信じられないリアリストになっちゃたんだろ……」


 アタシは動画サイトを閉じ、ブラウザで自分の働く会社名を検索してみた。


「えっと……亀山運送……っと」


 すると出て来たのは、亀山運送 パワハラ、亀山運送 ブラック、亀山運送 労災隠し、亀山運送 社長、亀山運送 DQN、亀山運送 ヤバい、といった会社の悪い面のワードばかりだった。

 でも今の時代、仕事があるだけマシだから辞めるわけにもいかない。


 あのクソ社長、人の言う事まるで聞こうとしない。

 でもあの顔、確かどこかで見おぼえあるんだよね……どこだろう?


 明日も仕事だ、あーあ、嫌だなぁ……。

早く寝て次の日に備えないと、また二日酔いで頭痛いまま仕事する事になってしまう。

 アタシは明日の出社に備えてそのまま寝る事にした。


『見つけた、でもこれが本当にエイミっ? ガッツのかけらもないぞっ!!』

『ウチの言う事しんじられんのかいな? この子がエイミや、ほら、かすかに虹色の魔法力のオーラ見えるやろ』

『でもこんなにガッツも気合も無い女の子じゃなかったよなっ』

『アンタは成長とか退行とか知らんのかいな? そりゃあれから20年も経つねんで。ウチらとは時間の流れがちゃうねん……』


 何? 誰の声??

 あーあ、今日は飲みすぎたかな、幻聴が聞こえる。

 やっぱり仕事でストレス溜まりすぎたかな、そろそろ病院行ってこよう……。


 次の日、アタシは会社に行く途中で子供達がネコをいじめているのを見てしまった。


「コラーッ!! 小さな子をいじめるなー!」

「げっ、何だよオバサン」

「だーれーがーオバサンじゃぁあー!! アタシはまだ28だぁぁー!!」


 アタシが鬼の形相をすると、ネコをいじめていた子供達は一目散に逃げだした。

 まったく、こんな小さいネコをいじめるなんて、どれだけ今の子供は荒んでるんだか……。

 今の世の中、夢も希望もありゃしない。


 アタシがいじめられていた二匹のネコを助けてあげると、一匹がアタシを見つめていきなり言葉を話してきた。


「やっぱり、アンタはエイミちゃんやな。基本変わってないみたいで安心したで」

「ええっ!? しゃべるネコ!!」

「なんや、ウチのこと忘れたんかいな、ウチはヤミ。魔法界の住人や。こっちにおるんは相方のヒカリや」


 ヒカリと……ヤミ? そういえば、昔家で飼ってたネコの名前と同じだ……。


「ヤミ、やっぱり人違いだろっ、エイミがこんなに元気のない顔をしてるワケがないっ、あの子はもっと太陽のように明るいガッツにあふれた子だったんだっ」


 えっ、やたらとガッツガッツという白ネコと、少し皮肉屋な黒ネコ、そして人の言葉を話す……。


――!! 思い出した、この二匹のネコは魔法界からやってきてアタシに魔法の力を貸してくれた魔法界の住人だ。

 アタシはヒカリとヤミに貸してもらった魔法の力でアイドルになって活躍してたんだ。


「うわぁー! あなた達、本当にヒカリとヤミなの?」

「そうや、ようやく思い出したみたいやな。ほな、話は早い、もう一度アンタに魔法少女なってほしいねん」

「魔法少女!?」


 冗談はやめてほしい、今のアタシが魔法少女なんてイタい存在になれるワケがない。

 こんな姿で魔法少女になんてなったら、SNSで晒されて笑いもの確定だ。

 それに、仕事に行かないと、遅刻したら何て言われる事やら。


「無理よ、今のアタシにそんな力無いから、他の子を当たってくれないかな」

「それが無理やったねん、そりゃウチかて努力したねんで、今の子、ウチが人間の言葉話すだけで怖がって話聞こうともせえへんねん。それにごく一部に話聞いてくれる子はおっても、素質が無かったり、素質ある子は金寄こせって言ったりして、夢も希望も持ってへんねん……」


 何とも世知辛い話だ。

 でも、だからってなんでアタシにまた魔法少女をやれっていうんだか、もうアタシにはそんな力無いってのに……誰のおかげで夢と希望を失ったと思ってるんだか、魔法界の危機を救うためにアタシの夢と希望の力も全部フルパワーで使い果たしたからでしょうが!


「こんな事してる間にバス行っちゃったじゃない、あーあ、これで仕事の遅刻確定よ、どうしてくれんのよ!!」

「エイミちゃん、これ使ってみい、使い方は覚えとるやろ。これで移動の魔法を使ったらあっという間や」


 そうか、そういえば……アタシ瞬間移動魔法でよく授業中に学校を抜け出してテレビ局に行ったりしてたんだ。

 アタシはヒカリが渡してくれた魔法のステッキを使い、昔やったように魔法を唱えてみた。


「瞬間移動、マジカルッ!!」


 すると、アタシの身体が光り、アタシはヒカリとヤミと一緒に一瞬で亀山運送の近くの茂みに移動していた。


「うわぁー、アタシ、魔法の力……また使えたんだ……」


 アタシは茂みの中でヒカリとヤミを頭に乗せ、公園の高い木の枝の所に引っかかっていた。


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