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第16話:始まりの冒険(2)

「おーーーい。エクレア、敵はこっちだぞぉ!」


 バーレが大盾を手槍でガンガン殴って、エクレアのヘイトをバーレ自身へと向けてくれた。エクレアが苦々しい表情になりながら、バーレへとホーリー・ブレスを噴射していた。


 肉壁戦士バーレは構えた大盾でやすやすとエクレアの攻撃を霧散させてしまっている。ついにはエクレアのほうが先に根負けして、その場でへたりこんでしまった。


「ふぅ……エクレアはどうにか抑え込んどいたぞ。レオン、そろそろ、お前の力を見せてもらうぞ?」

「え? 俺は俺で精気を吸い取られてるんだけどぉ!?」

「20代のおれっちとは違って、レオンは10代だろ? 3連射くらい、余裕だろうが」

「あーーー、確かに? 言われてみれば、もう回復してたわ、えへへっ」


 ドレインタッチで精気を抜かれたというのに、レオンはぴんぴんしていた。むしろ、あまり余っていたものを抜いてもらえたおかげで、逆に体調がすこぶる良かった。


 オダーニの村からリゼルの街までの3日間、乗合馬車を乗り継いできた。踊りも封印してきた。そのため、いろんなものが溜まりまくっていた。


「なんだか、身体が軽くなった気がするぜっ。リッチのお姉さん、ありがとうなっ。肩慣らしにちょうどよかったぜ!」

「なに……!? ワタシのドレインタッチを喰らったというのに!?」

「うん。パンツの中がベットベトなのは間違いないぜ? でも、まだまだ出せるぞ! 若いって最高だわーーー!」


 レオンは左手をリッチへと向ける。リッチはエクレアが放ったホーリー・ブレスによって、着ている服がボロボロになっていた。


 哀れな女性をそのままにしておくわけにはいかないレオンである。このまま、一気に天に昇ってもらうのが正解だと考えた。


 レオンは突き出した左手の先に真っ黒な雷球を生み出す。狙いをじっくりと定める。リッチは驚きの表情をこちらに見せている。


「その黒くてすごいもので、ワタシを貫くの!?」

「天にも昇る気持ちを味わせてやるぜ?」

「いやぁぁぁ! お嫁に行けなくなっちゃうーーー!」

「リッチ、お前がイクのはお嫁じゃなくて、天国だっ! ライトニング・メガ・キャノン!」

「キャァァ!」


 レオンの手から放たれた真っ黒な雷球がリッチの正面から当たる。雷球はそこに留まらず、リッチを空高く舞い上がらせた。


 キラーンという音とともにリッチは雷球に運ばれてこの世界から消えてしまう。レオンは腰に手を当てつつ、ニッコリと気持ちのいい笑顔を作る。


「ひゅぅ~~~。すげえ雷魔法だな。とても見習い勇者(むっつりすけべ)だとは思えないわ」

「ん? バーレ、それってどういうこと? 俺がすごすぎる勇者様ってこと?」

「褒めるのは癪にさわるが……んま、見習いにしとくにはもったいないレベルだな。見事だったぜ」

「へっへっへ。勝利のVってやつだ!」


 バーレに向かって右手でVサインをしてみせる。そうだというのに、バーレが少しづつ、こちらから距離を取っている。さらには女性陣の前に陣取った。


「ん? 俺が怖い?」

「そうじゃない。こっちに近づくのはパンツを履き替えてからにしてくれよ? イカの匂いがプンプン匂ってくる」

「あっ……バーレ! 頼む! 替えのパンツをくれっ!」

「なんでだよ!」

「リゼルの街に来る間、洗濯をしてる時間が取れなかったんだよっ、言わせんなっ!」


 レオンとしてはこんなに事態が早く進んでいくとは思ってもいなかった。冒険者ギルドでの用事を済ませた後、新しい下着を買うか、もしくは宿屋で洗濯をする時間を取るつもりだった。


 だが、その前にパンツがドレインタッチのせいでダメにされてしまった。替えのパンツは無い。そして、バーレも自分にパンツを貸してくれる様子も見られない。


(俺もバーレにパンツを貸してくれって言われても、絶対に断るよな……女神様、何とかなりませんか?)


・女神からのコメント:そうねー。リッチを倒した分の善行ポイントをパンツに交換する?


(ありがとうございまーーーす!)


 レオンは女神に感謝した。それと同時に善行スクリーンが目の前に展開された。


・今回、貴方が獲得した善行を洗い立てのパンツ3枚、蒸しタオル1枚と交換します。

・これまでの蓄積は76ポイントです。

・女神からのコメント:収納魔法先に入れておいたわよ。サイズはぴったりのはずだから。


(えっ? 何で俺のパンツのサイズを知ってるんですか!?)


・女神からのコメント:レオンくんのことは何でも知ってるの~。わたくし、何と言っても女神様だから~~~♪


 女神に対して、どうしようもないほどの疑念が生じてしまった。だが、今はそれよりも、さっさとパンツを履き替えてしまいたい。


 共同墓地には物置小屋があり、そこへと逃げるようにレオンは飛んで入った。そこで、ズボンとパンツを脱ぎ、汚れてしまった股間を虚空から取り出した蒸しタオルでキレイにする。


(ん~~~。蒸しタオルが心地よい。女神様、ごめんなさい! こんなに俺のことを思ってくれているっていうのに、つい、疑念に捉われてしまいます!)


・女神からのコメント:いいから、いいから~。蒸しタオルは捨てておきなさい? 雑巾にもしたくないからっ!


 女神の言う通りだった。使い終わった蒸しタオルとべとべとのパンツを別の虚空の先へと仕舞う。あとでしっかりゴミ箱に捨てておこうと心から誓う。


 レオンはパンツを履き替え、物置小屋の外へと出る。仲間たちの表情があからさまに怪訝な表情になっている。


 レオンは皆の疑念を晴らすためにも、パンツに替えがあったのを思い出したと言ってみせた。


 すると、仲間たちはホッと胸を撫でおろした。こちらのせいだとしても、もう少し、気を回してほしいとさえ思ってしまう。


「お待たせ。ちょっとばっかし匂いは残ってるかもだけど、そこはツッコまないでね?」

「しねーよ。思い出したくもない。それよりもだ……リッチを一撃で倒したのはすげーよ」

「俺も出来るとは思わなかった」

「思わなかったのかよっ!」


 バーレがにこやかな笑顔でグータッチを求めてきた。それに合わせて、こちらも手を前へと出す。拳と拳をコツンと当てる。


 次は女性陣とのグータッチだ。ミルキーは鼻息をフンスフンスさせながら、勢いよくゴンッ! と拳を当ててきた。


「痛いよ!?」

「ごめんなさーい! ちょっと興奮気味なのかも!」


 最後にエクレアが目を逸らしながら、グータッチしてくれた。彼女はもじもじと恥ずかしそうにしている。


「ゆ、勇者さ……ん。お見事な戦いぶり……でした」

「おう、惚れんなよ?」

「惚れません! 絶対に! 勇者には金輪際、惚れる気はありませんっ!」


 エクレアに断言された。これはこれで悲しい……。瓶底メガネでぶかぶかの僧侶服を着ている女らしさを完全に隠しているエクレアにここまではっきりと言われると、反論したくなってしまう。


 だが、ここでいたずらな風が吹いた。リッチとゴーストがいなくなった清浄化された共同墓地を洗い流すような突風が吹いてきた。


 ミルキーがフードを手で押さえる。そんな彼女をバーレが役得とばかりに身体を支えている。


 ちくしょぉっ! と叫びなりそうになったが、目は違うところにくぎ付けとなった。エクレアが必死にぶかぶかの神官服を抑えている。


 正直に言えば、何をそんなに必死に抑える必要があるのか? と最初は怪訝な表情を浮かべてしまった。


 だが、エクレアが必死になればなるほど、風のおかげで、彼女の身体のラインが少しだけ判明することになった。


(待てっ! これは相当デカいぞ!? ぶかぶかな服を着ているのはデカいのを隠すためなのか!?)


 レオンの疑問に答えてくれる存在は、今はまだいない……。

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