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第12話:冒険者ギルド(1)

「はーい、まずは適職検査をさせてもらいますねー」


 受付の少し離れた場所にあるテーブル席で、レオンは適性検査を受けることになった。レオンは上半身に身につけていた防具を全て外し、半袖1枚の恰好になっていた。


 不思議な機械を受付のお姉さんが慣れた手つきで操作している。機械から伸びているコードの先端には柔らかな吸盤がついていた。


 その吸盤のいくつかを素肌にくっつけられた。ピリッとした不思議な感覚がしたため、眉根をひそめてしまった。


 受付のお姉さんは「大丈夫ですよー」と言うので、緊張を解くためにも指で眉間の皺を伸ばす。


「いくつか質問させてもらいますので、自分の心に正直になって答えてくださいー」

「はい」

「では……貴方の目の前におっぱいがたわわな女性が誘ってきています、あなたはどうしますか?」

「どうしますかって……お姉さんに気づかれないようにしつつ、おっぱーいやほーいと、おっぱいを服の上から透けるレベルで凝視します」

「なるほど……では次の質問ですー」


 全ての質問が終わると同時に機械からカタカタという音が鳴り、機械にある小さな口から長細い白い紙が1マートルほど吐き出された。


 その紙には何か書かれているらしい。それを受付のお姉さんが手に取り、ふんふんと興味深く読んでいる。


(何が書かれてるんだろう……。俺にも見せてくれないのかな?)


 受付のお姉さんはやがて、うっとりとした表情に変わっていた。色っぽいという言葉が似合う。


(いかんいかん。何に見とれているんだ。これは立派な検査だぞ……)


 レオンは首を左右に振って、邪念を払った。しかし、そうしたのも束の間、お姉さんがこちらに身を乗り出してきた。


 さらには上目遣いで下から覗き込んできた。「うっ」と唸りながら、上半身をのけぞらせてしまった。


「結果が出たわよ。へぇ~、貴方、『見習い勇者(むっつりすけべ)』よ。これはウルトラレアね……。お姉さんのものにならない?」

「へ? お姉さんのものって、どういうことですか!?」

「あたしのカレシにならない? って言ってるの」

「いや……お姉さんはすごく魅力的ですけど」

「嬉しい! じゃあ、カップル成立ね!」

「ち、ちがいます! 田舎者だからって、からわかないでください!」

「あら、残念。結構、本気だったんだけどなぁ?。まあ、いいか。あたしも安定してる職業のひとのほうがいいしー」


 キレイな受付のお姉さんに終始、ペースを握られっぱなしであった……。


◆ ◆ ◆


 それからはあっという間であった。荷物をしまうのに便利な収納魔法を覚えるために5000ゴリアテ分となる銀貨5枚をお姉さんに手渡した。


 お姉さんが自分の後ろに回り、さらには大きな胸を後頭部に押し当ててくる。


 さらには両手で頭を力強く揉んでくれる。お姉さんの手から魔力がじんわりと伝わってくる。ついでにおっぱいのやわらかな感触も後頭部に伝わってきた。


「気分はどうー? 酔ったような感覚になってたりしないー?」

「ほえええ~~~! ここは天国です~~~!」


 正直に答えた。俺は間違っていない、これはあくまでも施術だ! と力強く女神に訴えかけた。その功もあってか、善行ポイントが減ることはなかった。


 自分でも不思議なことに、あっさりと収納魔法を覚えてしまった。お姉さんがパチパチと拍手してくれている。


 次に冒険者ギルドに登録するための書類にサインした。3枚に名前を書き、さらに拇印をした。お姉さんは必要な書類をもう一度、しっかり確認してくれている。


「んじゃ、これで冒険者ギルドの説明と登録は終わりよー。仲間はもう決まってたりするのー?」

「いえ、まだです。これから集めようかと」

「そっかー。じゃあ、お姉さんがそれも手伝っていいー?」

「もちろんです! こちらからお願いしたいくらいです!」

「んじゃ、ちょっと待っててねー。冒険者台帳を持ってくるからー」


 お姉さんは5分ほど待ってほしいと言って、席から立ち上がった。


 適正検査で使った不思議な機械を両手で重そうに持って、この場から離れていく。静かにお姉さんが戻ってくるのを待った。


◆ ◆ ◆


 お姉さんはきっかり5分後に戻ってきた。その手に分厚い台帳を持っていた。それをどすんとテーブルの上へと置いた。


「レオンくんは年齢とか性別とか、そういうところにこだわりとかあるタイプー?」


 言われてみて気づいた。そう言えば、何も考えていなかったことに。女神に言われるままにリゼルの街にやってきた。あの時の自分はずいぶん浮かれていた。


「えっと……なるべく女性が多くなるパーティで」


 なんとなくだが、ふわっとしたイメージそのままのことを取り急ぎ、口にしてみた。お姉さんは「ふ~ん」と意味ありげな声を出しながら、冒険者台帳をぺらぺらとめくっている。


「やっぱり、むっつりすけべだね~。健康的でよろしい!」


 この時ばかりは、これ以外、答えようがなかった。何も考えていませんでしたとはさすがに言えない。


(しまったな……俺は魔王の力をどうにかしたいと思って、女神様に言われるがまま、勢いで冒険者ギルドにやってきた。改めて考えると、とんでもないことをしてしまった気がするぞ?)


 三種の神器を集めるためには仲間が必要なことは、バカな自分でも理解できた。それで、仲間を集めるためにリゼルの街の冒険者ギルドを訪ね、登録まで済ませた。


 ここまできて、ようやく現実に戻った。どういうヒトを仲間にするかという一番に考えなければならないことをすっかり忘れていた。


 そして、聞かれてすぐさま答えたのが「女の子多めで」だ。今更になって、とんでもない発言だったことに気付く。


 鈍い汗がだらだらと流れてくる。一度、頭を冷やして、じっくり考えなければならない気がしてきた。


 だが、お姉さんに手伝ってもらっている以上、ここで引くことはできない。


 お姉さんはいまだにぺらぺらと台帳をめくっている。こちらの要望を待っているかのように見えた。


 言葉がなかなか口から出てこない。お姉さんと自分の間に沈黙が生まれた……。


「お姉さんとしての見解を言わせてもらうねー。レオンくんは見習い勇者(むっつりすけべ)だから……専門の回復職1名は必須として、その他のヒトは直感でもいいと思うよー」

「そうなんですか」

「うん、むっつりすけべの勇者だからねー」

「そこまで、むっつりすけべって重要なんですか?」

「うん。なんでもござれの勇者職にぴったりな称号だよ」


 ありがたいことにお姉さんが助言してくれた。有益な情報をもたらされたことで、一気に視界が広がった気がした。お姉さんに代わって、自分が台帳をめくった。


 めくったページの左側には左側には男魔法使いの名前とプロフィールが載っていた。右側のページには女魔法使いが同じように載っていた。


 するとだ、善行スクリーンが開いた。ページに覆いかぶさるようにお勧めが表示された。


A:男魔法使い:

B:女魔法使い:☆☆☆


(男魔法使いは60歳。論外だ! 女神様も女魔法使いを推してくれているっ!)


 レオンは早々に女魔法使いに目を付けた。台帳には16歳。種族はエルフとある。プロフィールだけで美少女であることは間違いないと思える。


「すいません、男魔法使いは60歳なので、却下として、こちらの女魔法使いを紹介してほしいです!」

「さっすがむっつりすけべくんね、えらい! 女の子多めのパーティにしたいもんね~♪」

「あの。この娘って、今、ここにいます?」

「うん、いるよー。あの娘だよー」


 お姉さんが指差す女魔法使いを見た。伸長は自分よりも頭ひとつ分くらい低い。控え目に言っても美少女に分類される。金色の髪をツインテールにしている。


(大当たり来ましたー!)


 お尻あたりまでのチェニック、膝までのキュロットパンツ、その上から魔法使いのフード付きミドルコート姿だ。なぜ、誰も彼女をパーティに誘っていないかが不思議でたまらない。


「あの……こんなこと聞いたらダメだと思うんですが。事情持ちなんですか?」

「うん、そうだねー。でも、そういう個人情報をあたしからは言っちゃダメなんだー」

「なるほど……俺、あの娘をパーティに入れたいです!」


 そう言った瞬間、お姉さんがにんまりとした笑顔になった。お姉さんは席から立ちあがり、ゆっくりと女魔法使いの方へと歩いていく。


 そして彼女は女魔法使いに声を掛けてくれた。女魔法使いはひまわりが咲いたかのように笑顔になっている。2人揃って、こちらに向かってきた。


「よろしくお願いします! 私、ミルキー・ウェイと言います! 精一杯、頑張ります!」


 なんとも気持ちの良い挨拶をしてくれる女の子であった。勢いに飲まれて、こちらが挨拶し忘れてしまうほどだ。遅れて席から立ち、彼女に一礼した。


「こ、こちらこそ、よろしく。俺はレオン」

「レオンさんですね!」

「あー、さん付けはしなくていいよ。俺もミルキーって呼び捨てにするから」

「はい! れ、レオン。うーーー、照れる」


 かわいいと素直に思えた。次の瞬間、頭の中で『テッテレー♪』と気持ちいい音が鳴った。さらには善行スクリーンが開く。


・今回、貴方が獲得した善行は10ポイントです。

・これまでの蓄積は73ポイントです。

・女神からのコメント:事情持ちだけど、いい子なので大事にしてあげてね。


(えっ? 女神様からも事情持ちだって言われたんだけど……これ、大丈夫か?)


 額からタラリと嫌な汗がひとすじ流れた。それと同時に、何故、この娘が他のパーティに誘われていないのかが非常に気になった……。


(うん。事情持ちって言えば、俺もだしなっ! 可愛いはすべてを凌駕するっ!)


 思うことはあるが、ミルキーとにこやかに握手を交わす。彼女は憂いが晴れたかのように爽やかな笑顔であった。だが、レオンの目には彼女が無理をしているようにも見えた……。

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