今は昔、
幕府が整備した街道には、幕府の命令を地方にまで速やかに届けるために
そんな街道、そして宿場という制度ができれば、金を払ってでも使いたいと思う一般市民が出てくることは想像がつくだろう。次第に街道沿いに人が集まり、宿場は街となり、そこに文化ができるほどに栄えていった。そしてこの街道ができたことで参勤交代という制度も現実的となり、地方から反乱をするための資金を奪うこともできるようになったのだ。
つまり街道は江戸の号令が全国にあっという間に届け、地方から反乱の意志を奪う、永遠に続く江戸幕府の平穏の要であった。
さて……しかし……とどのつまり……この物語の舞台は街道だ。
いっても、
先に上げた通り、表の街道はあくまでも江戸幕府に取って都合の良い平穏の要である。そのため、江戸幕府にとって都合の悪い情報や、都合の悪い人間は通り抜けることができない。だったら、そういう
この『抜け道』、道と呼ぶには少々きびしい。今にも崩れそうな地下道を通り抜け、獣が作った道を抜け、山をかけ、森に惑い、川を下る、江戸から京都まで地獄巡りのような一本道――けれど花道を歩けぬ悪童たちにとっては、唯一無二の街道……その名も、誰がいったか、『
表の街道ほど至れり尽くせりではないけれど、表の街道ほど窮屈でもなく、もちろん、
そんな、裏切りと陰謀が渦巻く宿場が落街道には
三の宿場と伍の宿場の間に、四の宿場がないのだ。
これは、
まず、四の宿場があるべき場所には古い森を持つ大きな山がある。斜面はそれほど急ではないため、すぐに登れそうに見えるだろう。しかし、この山には踏み入ってはならない。なぜならここには江戸幕府ができるずっと前、平安の世から一匹の
……笑い話だと思われるだろう。
実際、多くの悪童が笑い話だと思った。しかし山に踏み入った者は、軒並み死んだ。山を崩してしまおうとしたこともあったが、火を放つ前に火を持っていた人間が丸焼けになり、その家の実家も親戚も皆、焼けた。恐ろしい数の人間が、この山に関わったことで死んだのだ。
もはやこうなれば、呪いだろうがなんだろうが原因はどうでもいい。とにかくこの山には入らない方がいい。悪童たちもそう理解し、無知な悪童がこの山に立ち入らないようにと伝えるために四の宿場はなくなったのだ。
だが、――しかし、――その、多くの悪童が死んだその山の麓に、一軒の宿がある。
三の宿場でも伍の宿場でも揉め事を起こし、どちらにも足をつけられなかった連中が渋々泊まるための、いわば悪童の駆け込み
さあ、さあ、お立会い、物語を始めよう。
これ