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第33話 夏より熱いボクのハート!?

 海デートの前日、ボクは1人ファッションショーを開催していた。

 水色のブラウスか、白のブラウスか、それともワンピースで清楚アピールで攻めるか。「センパイをメロメロにしてやる!」って宣言しちゃったから、ボクの魅力を120%引き出せるコーデじゃないと!


 ボクの暴走は止まらず、いつの間にか2時間が過ぎていた。


「マジ……あぁ! 決まらないよ~」


 まぁ、ファッションはギリギリまで考えるとして、メイクはナチュラルに可愛く。ボクの白くてスベスベのお肌をアピールしたいけど、肌が弱くてすぐに日焼けしちゃう。日焼け対策もバッチリしないと。美肌のましろちゃんが焦げましろになったら、大変! デート前にも日焼け止めは塗るけど、カバンにも入れておかないと。


 ボクがデートの準備をしていると、「明日、何時に行く?」とセンパイからメッセージが届く。


「そうだな……」


 いや、一緒に行くのも面白くない。お花見の時と同じように駅で待ち合わせにしよう。少しでもデートっぽいドキドキ感を味わいたいし。


ーーー


明日は、駅に11時に待ち合わせにしょう!


ーーー


 ボクがメッセージを送ると、「一緒に行けば良くね?」と返事が来る。

「もう、センパイってば鈍感……!」


ーーー


それじゃいやなの! 駅で待ち合わせだからね!


ーーー


 ボクは強引に駅待ち合わせにすると、センパイから「了解」とさっぱりした返信が届く。


「よし、明日のデート……楽しみ」


***


 センパイと海デートだ。ボクはウキウキ気分MAXで駅へと向かう。

 ボクのバッチリ決まったマリンデートコーデを見たら、センパイもメロメロだ。

 迷ったけど、結局水色のブラウスに白のショートパンツ。茶色の可愛いサンダルに麦わら帽子をアクセントに被ってみた。

 早起きもしてメイクもバッチリの可愛いましろちゃんに仕上げた。ファッションも可愛いボクを最大限にアピールするためにバッチリ!

 センパイがどんな反応リアクションするか楽しみだ!


 あれ? そういえば、センパイのコーデは大丈夫かな?

 お花見の時は、なぜか奇跡的に良いコーデをしてきてくれたけど、今回は泳ぐわけじゃないし、ただ海を見に行くというコンセプトだ。


 鈍感なセンパイのことだから、「海を見に行くのはデートじゃねぇし、動きやすい格好でいいや」って、まさかジャージ上下で来る可能性も……!?

 いやいや、落ち着け。いくら、センパイがファッションに無頓着だからってジャージの上下では来ないよね……なんか不安になってきた。


 ボクは神様にお願いしながら、駅へ向かうと改札口に立っているイケメンにキュンとしてしまった。


 センパイがめっちゃオシャレコーデだ!

 黒のVネックのシャツに白のシャツジャケット。ネイビーのショートパンツに黒のサンダル。アクセントに黒のキャップを被っている。


「おぅ、ましろ!」


「センパイ……」


「前にお前が買ってくれた服にしたんだ……似合わないか?」


「……似合っている」


 凄いカッコいい。センパイに絶対に似合うと思って買ったけど、ここまで着こなすとは予想外だ。どうしよう。めっちゃドキドキしてきた。

 センパイをメロメロするはずだったのに、ボクがメロメロにさせらちゃった。


「じゃあ、行こうか」


「うん」


「ましろ、今日も可愛いぞ」


 センパイはボクのトドメの一言を耳元でささやいて、電車へと乗り込む。もう、計画がめちゃくちゃだよ!


***


 夏休みシーズンだから平日だけど、たくさんの人が海に遊びに来ている。

 ビーチを見回しても、ボクより可愛い子なんて1人もいない。

 代わりに派手なビキニを着たお姉さんたちがたくさんいる。

 そんな彼女たちを見て、鼻の下を伸ばしているバカな男たちもいる。 お姉さんたちをどうナンパしようか打ち合わせをしているひそひそ声がすぐに想像できた。


 ボクは水着のお姉さんたちに見向きもしないで、センパイだけを見ている。センパイがボクのデートのために選んだマリンコーデが良すぎて、水着のお姉さんたちは眼中にない。こんなカッコいいセンパイとデートできているボクって勝ち組だよね。


「なぁ、ましろ?」


「なに、センパイ?」


「なんか、めっちゃ視線を感じる……アタシの服が似合ってないのかな?」


 いや、何を言っているの! 逆に似合いすぎているの! 

 センパイが海に遊びに来ている女の子たちをメロメロにしているの! ボクも……その1人だけどね。


「に、似合ってるに決まってるじゃん! ボクが選んだコーデなんだよ!」


「そっか……そうだよな!」


 センパイはアイドル顔負けの爽やかスマイルを向けてきた。

 やめてよ! かっこ可愛いでしょ! 

 ちょっと、センパイ! 自分の魅力をそんな簡単に安売りしないでよ! 周りの女の子たちが「あの、イケメンの笑顔いいね!」、「ちょっと声かけようよ!」とセンパイをロックオンし始めている。これじゃあ、2人きりになれない。


 それに「あの子、めっちゃ可愛くない!?」、「声かけようぜ!」というボク狙いの身の程知らずの声まで聞こえる。

 あぁ、ウザい! キミたち、ブサイクの相手をしている場合じゃないの! ボクとセンパイを2人きりにさせてよ!


「ましろ」


「え?」


 センパイはボクの手を強引に掴んで海の家に向かって歩き出す。

 え、センパイ? 今日は、いつもと違って大胆だね。

 もしかして、ボクのことを……。


「こうすれば、変な男除けになるだろ」とセンパイはイケメンスマイル全開で余計な解説をしてくれた。あぁ、そうですか。だよね、にぶいセンパイがロマンチックな演出を出来るわけないか。

 ボクは思わずタメ息を漏らしちゃった。


「ましろ、どうした?」


「別に……」とボクは薄い演技リアクションをするも本当は凄く嬉しい。理由はどうであれ、センパイからボクと手を繋いでくれた。

 ただ、それだけでボクにとって大収穫だ!


 この海に遊びに来ている人達の目には、ボクたちはどう映っているのかな? 絶対、お似合いのカップルだよね!


「なぁ、ましろ」


「なに?」


「この感じのアタシたちって……」


 センパイ! センパイも同じことを!


「仲の良い兄弟って感じなのかもな!」


 センパイ……あなたがモテない理由が、やっと分かったよ。

 原因が男を寄せ付けないイケメン力だと思っていた。

 でも、違う。その類を見ない天然っぷりのせいだ。

 ボクみたいにセンパイの魅力に気付いた男がいても、あなたは気付いていない。そのせいで、たくさんの出会いをスルーし続けちゃったんだね。

 まぁ、そんなことで諦めるなら、そこまでの気持ちしかなかったこと。ボクみたいに10年以上も片思いし続けた強者は誰もいない。


 センパイ、ボクはあなたを諦めないからね。

 必ず、センパイにボクが好きだってことに気付かせてやるぞ!


「うん? ましろ、どうした?」


「な、なんでもない!」


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