金属がぶつかり合う音が空気を震わせる中、アレックスとエラゴンの激しい戦いは続いていた。
一撃を繰り出せば、同じ強さで応戦され、足元の地面が衝撃で砕けていく。
アレックスは次第に戦いの重さを感じていた。筋肉は痛み、呼吸は乱れ、額には汗が滲んでいた。
しかし、ここで倒れるわけにはいかない。
目の前のエラゴンは、疲れの色すら見せず、依然として傲慢な笑みを浮かべていた。
「さあ、アレックス。お前の限界を見せてもらおうか。なぜケツァルコアトルがお前を選んだのか、その理由を証明してみせろ。」
アレックスは歯を食いしばり、槍を握りしめた。その周囲の風が強さを増していく。
「集中しろ、アレックス。」
ケツァルコアトルの声が頭の中に響く。
「槍はただの武器ではない。お前の力を導く道具だ。その力を己の意思の延長として使え。」
アレックスは深く息を吸い、風を盾のようにまとった。
エラゴンの瞳を真正面から見据え、初めて彼の動きについていける気がした。
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アレックスは地を蹴り、風を纏って一気に加速する。
槍は空を切り裂くように鋭く振るわれ、連続した素早い攻撃がエラゴンを後退させる。
これまでの戦いで初めて、エラゴンが押される形となった。
「そうだ…その調子だ。」
エラゴンは大半の攻撃を防いだが、アレックスの槍は数回、彼の鎧をかすめた。
小さな傷ではあったが、エラゴンにとっては予想外だった。
「戦い方を学んだか?だが、それだけでは俺を倒すには程遠い。」
そう言うと、エラゴンは黒い剣を振りかざし、その刃に暗黒のエネルギーを集めた。
次の瞬間、巨大な破壊の波動がアレックスに向かって放たれる。
アレックスは反射的に槍を前に構え、その攻撃を受け流そうとするが、衝撃波の威力は凄まじく、吹き飛ばされて地面を転がった。
「アレックス!」
遠くからフレイヤの声が響いたが、アレックスは片手を挙げて制した。
「大丈夫だ。近づくな。こいつは俺と決着をつける戦いだ。」
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アレックスは槍を支えにしながら、ゆっくりと立ち上がった。
再びケツァルコアトルの声が心の中に響く。
「風はお前の味方であるだけでなく、無限に変化し、適応する力を持っている。
それをただの防御ではなく、自分の一部として使うのだ。」
アレックスは目を閉じ、風の流れを感じた。
それが自分の体の一部のように馴染んでいくのを実感する。
目を開けると、その瞳には新たな決意が宿っていた。
「何度倒されようと、俺は立ち上がる。どれだけ強くても、お前を超える方法を見つけ出す。」
アレックスは槍を投げた。
槍は回転しながら空を駆け、螺旋状の風をまといながら勢いを増していく。
エラゴンは剣を構えて迎え撃ったが、その威力は想像以上で、彼を数メートル後退させ、地面に深い跡を刻んだ。
「ほう…なかなか面白い技じゃないか。だが、まだ力不足だな。」
エラゴンは再び突進し、黒い炎を纏う剣を振るった。
その攻撃は先ほどよりも激しく、速さを増していた。
だが、アレックスもまた、風の力を使いこなし始めていた。
一撃一撃を見切り、滑らかに避けながら反撃を加えていく。
戦場はすでに荒廃し、倒れた木々と砕けた大地が戦いの激しさを物語っていた。
アレックスの動きは無駄がなくなり、エラゴンの速度にもついていけるようになっていた。
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一瞬の間、二人は互いに距離を取り、鋭く視線を交わした。
「思ったよりやるじゃないか。」
エラゴンはわずかに息を切らしながらも、余裕の笑みを崩さない。
「だが、勘違いするなよ。まだ始まったばかりだ。」
「分かってるさ。でも、最初の俺とは違う。」
エラゴンは笑い声をあげた。
「その自信、後悔することになるぞ。さあ、本番はこれからだ。」
二人のオーラがさらに高まり、
空は彼らの戦いを映すかのように、荒れ狂い始めた。