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第18章: 戦士の決意


金属がぶつかり合う音が空気を震わせる中、アレックスとエラゴンの激しい戦いは続いていた。

一撃を繰り出せば、同じ強さで応戦され、足元の地面が衝撃で砕けていく。


アレックスは次第に戦いの重さを感じていた。筋肉は痛み、呼吸は乱れ、額には汗が滲んでいた。

しかし、ここで倒れるわけにはいかない。

目の前のエラゴンは、疲れの色すら見せず、依然として傲慢な笑みを浮かべていた。


「さあ、アレックス。お前の限界を見せてもらおうか。なぜケツァルコアトルがお前を選んだのか、その理由を証明してみせろ。」


アレックスは歯を食いしばり、槍を握りしめた。その周囲の風が強さを増していく。


「集中しろ、アレックス。」

ケツァルコアトルの声が頭の中に響く。

「槍はただの武器ではない。お前の力を導く道具だ。その力を己の意思の延長として使え。」


アレックスは深く息を吸い、風を盾のようにまとった。

エラゴンの瞳を真正面から見据え、初めて彼の動きについていける気がした。



---



アレックスは地を蹴り、風を纏って一気に加速する。

槍は空を切り裂くように鋭く振るわれ、連続した素早い攻撃がエラゴンを後退させる。

これまでの戦いで初めて、エラゴンが押される形となった。


「そうだ…その調子だ。」


エラゴンは大半の攻撃を防いだが、アレックスの槍は数回、彼の鎧をかすめた。

小さな傷ではあったが、エラゴンにとっては予想外だった。


「戦い方を学んだか?だが、それだけでは俺を倒すには程遠い。」


そう言うと、エラゴンは黒い剣を振りかざし、その刃に暗黒のエネルギーを集めた。

次の瞬間、巨大な破壊の波動がアレックスに向かって放たれる。


アレックスは反射的に槍を前に構え、その攻撃を受け流そうとするが、衝撃波の威力は凄まじく、吹き飛ばされて地面を転がった。


「アレックス!」

遠くからフレイヤの声が響いたが、アレックスは片手を挙げて制した。


「大丈夫だ。近づくな。こいつは俺と決着をつける戦いだ。」



---



アレックスは槍を支えにしながら、ゆっくりと立ち上がった。

再びケツァルコアトルの声が心の中に響く。


「風はお前の味方であるだけでなく、無限に変化し、適応する力を持っている。

それをただの防御ではなく、自分の一部として使うのだ。」


アレックスは目を閉じ、風の流れを感じた。

それが自分の体の一部のように馴染んでいくのを実感する。

目を開けると、その瞳には新たな決意が宿っていた。


「何度倒されようと、俺は立ち上がる。どれだけ強くても、お前を超える方法を見つけ出す。」


アレックスは槍を投げた。

槍は回転しながら空を駆け、螺旋状の風をまといながら勢いを増していく。

エラゴンは剣を構えて迎え撃ったが、その威力は想像以上で、彼を数メートル後退させ、地面に深い跡を刻んだ。


「ほう…なかなか面白い技じゃないか。だが、まだ力不足だな。」


エラゴンは再び突進し、黒い炎を纏う剣を振るった。

その攻撃は先ほどよりも激しく、速さを増していた。

だが、アレックスもまた、風の力を使いこなし始めていた。

一撃一撃を見切り、滑らかに避けながら反撃を加えていく。


戦場はすでに荒廃し、倒れた木々と砕けた大地が戦いの激しさを物語っていた。

アレックスの動きは無駄がなくなり、エラゴンの速度にもついていけるようになっていた。



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一瞬の間、二人は互いに距離を取り、鋭く視線を交わした。


「思ったよりやるじゃないか。」

エラゴンはわずかに息を切らしながらも、余裕の笑みを崩さない。


「だが、勘違いするなよ。まだ始まったばかりだ。」


「分かってるさ。でも、最初の俺とは違う。」



エラゴンは笑い声をあげた。


「その自信、後悔することになるぞ。さあ、本番はこれからだ。」


二人のオーラがさらに高まり、

空は彼らの戦いを映すかのように、荒れ狂い始めた。


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