嵐のような空気の中、アレックスはルナの前に立ち、体で彼女を守りながら槍と鎧を召喚した。その姿は決意に満ち、彼の武器の輝きが、ケツァルコアトルがこの戦いを見守るかのように呼び寄せた雷光を反射していた。
「エラゴン……なぜここにいるの?」
フレイアは厳しい口調で問い詰めながら、一歩前に出た。その声には確固たるものがあったが、その瞳には心配の色が見え隠れしていた。
エラゴンは腕を組み、傲慢な笑い声を上げた。
「聞くまでもないだろう、フレイア。俺はここにいる、ただそれだけだ。神々の規則だのくだらない争いには興味はない。ただ、このガキを叩き潰すことだけが目的だ」
そう言ってアレックスを指差し、軽蔑の表情を浮かべた。
フレイアは眉をひそめ、神々しい光とともに自身の神鎧を身に纏った。しかし、何かを言おうとした矢先、彼女の頭の中に女神の声が響いた。
「フレイア、これはあなたの問題ではありません。エラゴンの言う通り、この戦いは彼とアレックスのものです。規則に従いなさい。」
フレイアは拳を握りしめ、悔しさに耐えながらも、女神の命令には逆らえなかった。そして、アレックスとルナを振り返り、言葉を投げかけた。
「アレックス、しっかりして。ルナをここから連れ出すわ。」
アレックスはエラゴンから視線を外さず、頷いた。
「信じてるよ、フレイア。彼女を安全に頼む。」
フレイアはルナの腕を掴み、しっかりとした声で促した。
「こっちに来なさい。ここはあなたがいる場所じゃない。」
「待って!そんなこと、できないわ、フレイア!」
ルナは叫びながら抵抗した。
「ここにいても、アレックスに集中させてあげられないだけ。私の役目は、あなたを守ることなの。」
フレイアの声は厳しさの中に理解を含んでいた。
ルナはその言葉に強い決意の目で睨み返した。
「それで彼を一人にして助けるつもりなの?アレックスには、彼を大切に思っている人を遠ざける保護なんて必要ないわ!」
フレイアは小さくため息をついたが、その手を離すことはなかった。
「これはアレックスの感情の問題じゃないわ。これは生き残るための問題よ。あの男——」
エラゴンを指差しながら続けた。
「あの男は、自分の邪魔をする者を容赦なく殺す。ここに残れば、あなたはただの足手まといになるだけ。」
ルナは震えたが、視線をそらさなかった。
「戦えないのは分かってるけど、それでも、彼が命をかける間、ただ見ていることなんてできない。」
フレイアは一瞬立ち止まり、ルナの瞳をじっと見つめた。
「本当に彼を助けたいなら、彼を信じなさい。アレックスは、あなたが思っている以上に強いわ。その力を証明する場を与えなさい。」
ルナは悔しそうに歯を食いしばりながらも、渋々頷いた。
「……分かった。でも、安心しないで。もし彼に何かあったら、あなたと私で問題になるわ、フレイア。」
フレイアは薄く笑みを浮かべた。それは尊敬と疲労が混じったものだった。
「あなたのその強い意志が、アレックスがあなたに惹かれる理由かもしれないわ。でも今、彼が一番必要としているのは、私たちが安全でいることよ。」
その言葉を最後に、フレイアはルナを戦場から連れ出した。だが、ルナは何度も振り返りながら、心配そうにアレックスを見つめ続けていた。
一方その頃、ア
レックスとエラゴンの間で風と神聖なエネルギーがぶつかり合い、これから始まる戦いの序章を告げていた。