アレックスの穏やかな修行から遠く離れた世界の反対側の山岳地帯で、大地を震わせるほどの激しい戦いが繰り広げられていた。空は深紅に染まり、まるで太陽さえもその下で繰り広げられる光景を見ることを恐れているかのようだった。戦場では、二人の強大なアバターが立ち向かい、その神々しい力は自然の法則さえも歪めるように見えた。
一方は、破壊の神カーリーのアバター、イシャン。黒い鎧をまとい、その鎧には生きているかのように変化する神秘的な紋章が刻まれていた。彼の瞳は決意と楽しみの入り混じった光を放ち、戦いを単なる娯楽と見なしているかのようだった。対するは、ギリシャの月と狩猟の女神アルテミスのアバター、エラーラ。彼女の銀色の鎧は血のように赤い空を反射し、手には黄金の弓を持ち、神々しい光を宿した矢を番えていた。
「これが全力か、エラーラ?」とイシャンは嘲笑しながら、光の矢の雨を軽々とかわした。その声には余裕が満ちていた。「あの高名な女神のアバターとしては期待外れだな。」
「アルテミスを侮辱しないで。」とエラーラは冷徹な声で答えた。彼女はさらに矢を放ち、それがイシャンの足元に着弾して閃光を放ち、彼を後退させた。「この戦いで生き残るのはあなたではない。」
イシャンはただ笑った。「生き残る?そんなものに興味はない。ただ、この戦いを楽しむことだけが重要だ!さあ、アバターとしての力を見せてみろ!」
咆哮を上げながら、イシャンは神具を召喚した。カーリーの暗黒の力を宿した二本の湾曲した剣だ。彼は人間離れした速度でエラーラに突進し、その動きは空間に破壊的な痕跡を残した。エラーラは辛うじて避けながら、さらなる矢を放ち、敵の弱点を狙い続けた。戦いは狂乱の様相を呈し、神々しい力の爆発が花火のように戦場を照らし、近隣の山々を粉砕して地形を破壊していった。
戦闘が進むにつれ、イシャンが優位に立っていることが明らかになった。その動きは予測不可能で、攻撃の一撃一撃が圧倒的な力を伴っていた。エラーラは巧妙で戦略的だったが、徐々に追い詰められていった。そして、決定的な瞬間、イシャンは剣の一振りでエラーラの弓を弾き飛ばし、もう一振りで彼女の腹部を貫いた。暗黒の光が彼女の体を覆い尽くした。
エラーラは地面に崩れ落ち、手から弓が滑り落ちた。その瞬間、アルテミスとの繋がりが断ち切られた。かつて決意に満ちていた彼女の目は、虚空を見つめるだけになった。イシャンは一歩下がり、満足げにその光景を眺めた。
「楽しい戦いだったな。」とイシャンは剣についた血を拭いながら、彼女の亡骸を見下ろした。彼女を包んでいた神々しい力はゆっくりと消え去り、ただの人間の体が残った。イシャンは独り笑いながら、その声を荒廃した戦場に響かせた。「これでまた一つ邪魔が消えた。これからもっと面白くなるだろう。」
突然、カーリーの声が彼の心に響いた。それは圧倒的な力と傲慢さを帯びた声だった。「よくやった、イシャン。しかし、これが本当の戦いではない。神々とそのアバターたちの集いが間近に迫っている。そこで本当の駒の動きが始まる。」
イシャンは興味深そうに視線を上げ、微笑みを深めた。「集いだって?今度は何の話だ?面白いことがあるといいが。」
「残念ながら、その集いでは戦いは禁止されている。」とカーリーはほのかな皮肉を込めて言った。「だが、もしあの羽毛に包まれた老いぼれの竜、ケツァルコアトルが新たなアバターを見つけたなら、その状況は興味深いものになるかもしれない。」
イシャンは一瞬立ち止まり、関心を示した。「ケツァルコアトルにアバターが現れたのか?これはますます面白くなってきた。そいつと戦う機会はあるのか?」
「すべては時が来れば明らかになる。」とカーリーは声を低めた。「その時まで準備を怠るな。お前の傲慢さでさえ試される時が来る。そして、混沌を楽しむほどに、我が意志に近づくことを忘れるな。」
イシャンは笑みを浮かべ、剣を納めて地平線を見つめた。「わかったよ、女神。でもケツァルコアトルのアバターがもっと興味深い相手であることを願っている。退屈するのは嫌だからな。」
そう言って、彼は振り返り、エラーラの亡骸と荒廃した戦場を後にした。赤く染まった空は次第に元の色を取り戻し始めたが、彼の笑い声は戦場に響き続け、こ
れから訪れる暗黒の時代の前触れのように響いた。
第12章終了